料理王子vs自然派ママ(6)
美月と抹茶は、秋人が運ばれた病院に向かっていた。浩は子供であるし、病院に行っても仕方ないという事になり帰ったが、美月はかなり動転していた。
抹茶が運転する車の後部部席で、青い顔を見せていた。
「何にがあったんですかー、秋人さん」
美月は涙目で情け無い声をあげる。
「わかりません。ただ、ちょっと当然苦しみ始めて」
「まさか、毒?」
確か母の書いたコージーミステリで似たようなシーンがあった事を思い出した。今回のような料理コンテストで毒が仕込まれ、殺人事件が起きる。コージーミステリでは、こういったシチュエーションがよくあると母が語っていた事を思い出す。
とにかく現場は人だからと混乱で、何があったのかは判断できないが、秋人が試食した食べ物に何かあるか気になった。
「まさか毒なんて……」
「でもあの自然派ママの白子さんは、秋人さんうぃ嫌っていたみたいですよ。動機ならあるじゃないですかっ!」
美月の頭は混乱状態ではあったが、もし毒だとしたら、どうしよう。
「まあ、そんな毒なんてないですよ。大方、秋人さんの不摂生です」
抹茶は呑気に言っていたが、毒としか思えなかった。
「 美月さん、お母さんがミステリ書いているから、そう思うんでしょうけど、そんな毒事件なんて滅多に無いですよ。冷静に考えてください。あの状況でどうやって毒を入れるんですか?」
「そう、そう言われると……」
美月は下を向き、口籠もってしまった。確かにあんな人混みで毒を入れるのは、不可能だ。しれに目立つ所で犯行をするメリットもない。秋人にはアンチも多いが、殺すほど恨まれている感じもしない。
「たぶん、過労とかでしょう。大丈夫ですよ」
抹茶んl穏やかな声を聞いていたら、少しホッとしてきた。美月の周りにいる大人は妙に頼りないが、抹茶は大人だと思えた。
それにしても秋人が倒れただけでこんな動揺しているなんて。
たぶん、親鳥が与えてくれる餌に惹かれる雛鳥のように、彼の事が好きだったんだ。別にそれは恋愛感情とは言えないが、秋人の事はいつの間にか好きだったと自覚させられた。
「コンテストは中止かなぁ」
美月は、少し残念そうに呟く。
「そうですねー。でも、田舎臭くて段取りも悪かったし、今後はもう少し計画的にやった方が良いですね。今度私がプロデュースしても良いかも」
抹茶は、そう言ってニヤリと笑っていた。頼れる大人ではあるが、ちょっと意地悪そうだ。
こんな抹茶が、秋人は大丈夫だと断言しているのだ。きっと大丈夫だろう。毒でも無いはずだ。
そう思うと、さっきまで感じていた動揺や焦りの子持ちは、消えていった。
そんな事を話しているうちに秋人が運ばれた病院につき、美月と抹茶は病室へ直行した。




