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料理王子の謎解きレシピ  作者: 地野千塩


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料理王子vs自然派ママ(1)

 明日香と勇人の件が解決すると、すっかり町はクリスマスムードになっていた。


 美月の通う聖・ヒソプ学園は元々ミッションスクールだったため、エントランスホールには大きなクリスマスツリーが飾られ、クリスマスイブと当日は礼拝や聖歌隊の演奏、チャリティーイベントが開かられる。


 美月は一般の生徒なので、学校のクリマスイベントに参加はしないが、この時期はわけもなく浮かれる。


 なぜか桜や直恵は、クリスマスは異教のイベントだと否定的だった。そういう考えも否定はしないが、理由もなく浮かれ気分だ。クリスチャンである秋人も礼拝に行くだけで、特に何もしないというが、美月の心は少し浮ついていた。


 あの鈴蘭商店街もクリスマスムードになっていた。


「やった! 福引の補助券ゲットした!」


 美月は、ニコニコ顔で鈴蘭商店街にあるドラッグストアから出てきた。鈴蘭商店街では、クリスマスの特別イベントとして、福引が行われる。


 五百円ごとに買い物をすると、一枚補助券がもらえる。それを五回ためると一回福引が引けた。


 鈴蘭商店街は、別にクリスマスツリーやリース、イルミネーションなどでデコレーションされているわけでは無いが、毎年福引などのイベントくをするので、この時期だけは華やかな雰囲気だった。


 商店街のあちこちには福引のイベントのポスターが貼られている。


 ドラックストアのそばにある掲示板にあるポスターを、美月はまじまひと見つめた。


 一等は、豪華温泉旅行に泊まれる旅行券、二等は圧力鍋、三等はお米5キロとある。意外と運の良い美月は、去年はお米5キロをあてた。今年は一等か二等を狙いに行きたい。


 といっても鈴蘭商店街で無駄に買い物するわけにはいかない。結局、日用品をこの商店街のドラッグストアで買い貯めるという戦略でいくことにした。


「うー、もう寒いなぁ」


 もう十一月も終わりなので、冷たい風が美月の頬をくすぐった。頭の中は福引やクリスマスなど楽しい事でいっぱいになったが、自然の寒さには勝てない。早く帰ろうとしたが、掲示板にある一枚のチラシに目がついた。


 そこのは、鈴蘭商店街のクリスマスイベントとして料理コンテストが開かれるという事だった。


 テーマが、理想のクリスマスケーキとしてレシピを募集している。上位三名で十二月二十三日の夜に決勝戦が鈴蘭商店街の特設ステージでするらしい。


 福引で頭がいっぱいだった美月は、全く気づかないお知らせだった。


 だいぶ前から告知されていたようだが、もうすぐ締め切りだ。審査員には秋人もいた。イケメンキラキラ王子風の秋人の顔写真ものっていた。


 賞金はしょぼい。秋人のサイン入り色紙とサイン本、鈴蘭商店街で使える商品券三千円分。商品券はともかく、秋人のサイン入り色紙とサイン本は本当にいらない。


「美月ねぇちゃん!」


 そこへ浩から声をかけられた。まだ子供のくせに陰謀論好きで、今日もマスクをしていなかった。美月と同じように料理コンテストのチラシをじっと見ていた。


「浩、このコンテストに興味がある?」

「うん!」

「へぇ。秋人さんのサイン色紙やサイン本は要らなくない? それに材料費なんかを考えるとコスパ悪くない?」


 浩は、ちょっと小馬鹿にしたように美月の顔を見つめた。


「そうは言っても商品券三千円だよ?」

「それはちょっと惹かれるわねぇ。でも、私が期末試験もあるし、パスかな」


 何より秋人のサイン入り色紙やサイン本をもらっても仕方がない。家にあってもあのニートバージョンの顔しか思い浮かばなそうだ。


「いや、僕はやるよ! そこに戦いがある限り!」

「へぇ」


 何やら浩はこのコンテストに熱意があるようだったが、美月が全く興味がない。それに料理のスキルも自信がない。予選も通過できないだろう。


「あ、もう夕方じゃん。浩、料理コンテスト頑張ってね!」

「おぉ! 僕はやる時はやるよ!」


 こうして美月は、浩を応援して別れた。


 今年のクリスマスは何しよう。福引は当然参加するとして、倉橋のところでケーキを予約しても良いかもしれない。


 秋人のおかげで、今月も大幅に食費が削減できている。また、秋人にケーキを奢っても良いかもしれない。


 そんな事を考えていたら、美月の口元は緩んでいた。

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