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料理王子の謎解きレシピ  作者: 地野千塩


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お茶会とマリッジブルーの謎(1)

 市立公園の木々の葉は、ほとんど地面に落ちて舞っていた。


「浩くん! 待ちなさい!」

「やだよー! 美月おばちゃん!」

「おばちゃんですって!」


 美月は、笑いながら浩を追いかけていた。


 倉橋の一件で知り合った少年・浩と美月はすっかり中良くなってしまった。


 日曜日には、こうして公園で浩と遊ぶようになっていた。遊ぶといってもこうして公園に広場で追いかけっこしているだけだが。


 子供と遊ぶのは意外と体力を消耗する。秋人の家でハイカロリーな食事に慣れた美月だが、最近はこうして浩と遊んでいるので、体重計も優しい数字を見せていた。


「もう疲れたよー!」

「じゃあ、そろそろベンチに行って飲みものでも飲もう!」


 浩が疲れたのか、ちょっと文句を言いはじめたので公園のベンチに座った。


 秋の空は高く、気持ちい。美月は空を見上げながら、持参した水筒の中見を飲んだ。ちなみに水筒はスーパーで買った激安パック緑茶を煮出したものである。もちろん二番煎じし、茶殻は掃除や料理に活用する。


「美月ねぇちゃん、水筒の中見ちょっとちょうだいよ」

「いいけどさぁ」


 美月は水筒の中身を浩に少しあげた。色々事情がある浩は、食事や服装が手が抜かれているところが多かった。そんな浩にとっては水筒を準備そて後片付けするのは、ハードルが高いだろう。コスパを考えれば水筒を持ち歩くのが一番いいが、それが出来ない人がいるのも理解ができる。


 秋人にもアンチがいて、特にナチュラル志向の自然派ママから叩かれているという。中には、添加物を使うのは悪魔だとかコメントを送ってくる人もいるらしいが、料理に時間やお金をたっぷりかけられる人ばかりじゃないと返しているようだ。浩を見ていると、なんとなくそんな事を思い出した。


「ところで浩、マスクはしないの?」

「しないよ!」


 このご時世でも浩は、頑なにマスクをしていなかった。きっと家庭の事情でマスクができないと思っていたが。


「マスクは、脳に酸素がいかずに頭が悪くなるんだって」

「えー? そうなの」

「美月おばちゃんは知らないと思うけど、コロナは茶番さ!」


 なんと浩は陰謀論好きの少年らしい。一丁前にワクチンやマスクの闇をエビデンスつきで語っている。美月は思わず引いてしまった。


「浩くん、あんまり変な陰謀論にハマらない方がいいよ……」


 浩はスマートフォンを持っているから、様々な情報にアクセスできるのだろう。子供だとしても変な陰謀論に通じていても不自然では無い。


「でも美月ねぇちゃん、消毒して人と距離を取れって社会はおかしくない?」

「ちょっと、あんた。子供のくせに生意気ねー」

「だって家族が風邪ひいているのに、避けて接触しないなんておかしくない? 普通だったら、風邪がうつっても良いと思って看病するものじゃない?」


 浩は生意気だったが、言っている事は間違ってはいない。確かに今は風邪をひいて弱っている人を避ける傾向にある。それは正しい事なのか美月には分からなかった。


「まあ、そろそろ秋人さんの家行こう〜。ちょっと風が冷たくなってない?」


 美月はそう言って、少し体を震わせた。


「そうだね! 今日のお昼ごはんはなんだろう?」

「じゃあ、浩くん、行こうか」


 こうして美月は、浩と一緒に秋人の家の向かった。いつのまにか浩も秋人の家でタダ飯食べるようになっていた。浩も事情があるし、秋人も抹茶も大歓迎だった。


 秋人は、そんな美月達を見て子供食堂運営にも興味が出てきたらしい。たまに地域のNPO団体や子供の支援をそている教会にボランティアに行くようになっていた。タダ飯を食べるのは、少なからず悪いと思っていた美月だったが、こうして新しい事をやりはじめた秋人が充実していた。


 倉橋の一件でも感じたが、やっぱり人間は完全に悪い事もできないらしい。やっぱり人や地域に役立てる事をすると、元気になれるんじゃないかと美月は感じていた。


「それにしても何か寒くなってきたね」

「そうだねぇ、浩くん。もう冬だね。クリスマスはどうするの?」

「わかんなーい。秋人おじちゃんにケーキ作って貰いたい!」

「けっこうあんたも図々しいわね」


 美月は思わず苦笑する。少し寒くなってきたとはいえ、穏やかな秋の日だった。


 倉橋の件では、聞き込もが楽しく感じてしまった美月だったが、何も事件も謎も起きて欲しく無いと祈らずにはいられなかった。

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