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料理王子の謎解きレシピ  作者: 地野千塩


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悪魔のレシピと良心の謎(10)

 人間はつくづくタダに弱いと思わされた。


 秋人が倉橋のケーキ屋でセールがあると拡散すると、あっという間に拡散され、電話で問い合わせもあるようだった。


 誰が言ったかは不明だが、SNS上で商店街の嫌がらせも噂に出てしまい、ピタリと倉橋へに嫌がらせも止まってしまった。やっぱりSNS上の拡散力はバカにできない。


 当日、美月も秋人も店に手伝いに行ったが、タダ目的で押し寄せ客達にてんてこ舞いだった。


 ろくに接客経験にない美月で、無礼な面もあっただろうが、タダを目の前にした客達からは文句をつけられる事もなかった。それよりも大量の客をさばく方が先という感じだった。


 桜や直恵も客として来てくれた。他にも学園のクラスメイト達が来てくれたが、腐ってもお嬢様学校の生徒らしい。タダで貰うのは抵抗があるといい、お嬢様達は募金箱に小銭を入れてくれた。


 藤部や丸山も来てくれたが、この二人も秋人や美月に迷惑をかけた負い目もあるらしい。


 募金箱に一万円札を入れていた。意外と募金箱の中は集まっていた。ただ、生活に苦しんでいる人も何人か現れて、泣いて感謝していた…三年ぶりにケーキを食べると喜び人もいて、コロナで与えた経済的打撃の深刻さを肌で感じてしまった。


 あっという間にタダのケーキは売れていき、結局セール中は午前中しか店を開けない感じだったが、久々に商店街も活気づいたらしい。


「ごめんなさいねぇ」


 意外な事に嫌がらせをしてきた希代も謝ってきた。高原は結局誤りにはこなかったが、怪我で参っているらしい。もう嫌がらせをする可能性は低いという事で、倉橋もホッとしていた。


 という事で、大盛況でセールは終わった。

 意外な事に募金箱の中見は、想像以上に集まったと後で倉橋が報告してくれた。


 確かに赤字にはなってしまったが、新たにファンになってくれた客もいるといい、完全に赤字とは言い難いようだった。


 こうしてまた普段通りに営業を再開する事になったという。


 一時期は閉店の危機もあった所からの復活で、美月も秋人も自分の事のように喜んだ。


 一円の特にならんい事をしてしまったが、それでも意外と美月の心は満たされていた。


 人は悪い面の方が強いが、完全には悪に染まらってはいないようだ。実際、藤部も丸山、希代も反省していた。


 美月だって一円に特にならない事に協力していた。


 もしかしたら悪い人間であっても、良心みたいなものが元々埋め込まれているのかもしれない。


 わからないが、この一件を通してそんな事を考えた。いくら人間が悪くても、完全には悪に染まらないようなリミッターみたいなものが、人間にはあるのかもしれない。


 きっと今なら、もし道端に100万円が落ちていても、すぐに警察に届けるだろう。なぜかそんな事を考えたかは、さっぱりわからないが、最近頭の中によく浮かぶ事だった。

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