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料理王子の謎解きレシピ  作者: 地野千塩


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ギルティな謎(7)

「美月ちー、似合ってるじゃん!」


 美月は、分厚いサングラスをしていた。秋人のコレクションのサングラスらしい。黒縁のサングラスで、どうもダサい。


 そして黒いパーカーも貸してもらって着込む。さすがにサイズがブカブカだが、とってもダサく、これだけでもニート風のファッションになってしまった。桜からお嬢様風ワンピースを借りて着ていたはずなのに、とってもダサくなってしまった。


 これからストーカーに犯人を追うための変装だった。秋人によると母の書いたコージーミステリでは、変装して尾行するシーンがあるらしい。


「でも、二人でやるより一人で行った方が良くないですか?」

「美月ちーのママが書いたコージーミステリの中では、カップルや家族のフリをすると尾行がバレる確率が減るらしいよ」

「ふーん。で、私達はどういう設定?家族?」

「そうだね。兄と妹という設定でいこう」


 そんな事を話しながら、秋人の家を出て、美月の家の方に向かった。


 ちなみに秋人はいつものニートバージョンの格好のままだ。普段の秋人しか知らない人からすれば、ニートバージョンでも立派な変装という事だろう。


「ところで、そのニートバージョンの格好は好きでやってるの? 秋人さん」

「うん! 俺はオシャレとか苦手なんだよ」

「いや、そんな事を自慢する必要ありますかね……」

「まあ、この辺りの主婦には俺のこんな格好はバレてるんだよなぁ」


 秋人によると、この辺りの主婦にはニートバージョンがすっかりバレていて、ファンも減ったらしい。そんな事を笑いながら話していたので、美月もちょっとクスクスと笑ってしまう。これから犯人を尾行しにに行く緊張感は全くない。空が高くよく晴れている。穏やかな秋の一日という天気だった。


「という事は、近所の主婦が犯人という可能性はない?」

「まあ、ないだろうね。もうちょっと普段もイケメンで過ごしてよぉーって呆れられてる!」

「うん、この格好はファンが減るね……」


 美月は隣を歩くニートバージョンの秋人を、しみじみと眺めた。メガネ、髪ボサ、黒いダサいパーカーにサイズがあっていないような微妙な形のジーンズ。ガッカリする主婦ファンの姿が目に浮かんだ。


「という事は、最近ファンになった人もあり得るかな? 例えば、あのうちの学校の文化講演会がきっかけでファンになった人とか……」

「美月ちー、いい点ついてるじゃん。学園の人が犯人の可能性も大いにあるぜ? 美月ちーの個人情報も探せるじゃん」


 それを聞いて美月の顔が青くなる。身近にストーキングするようなファンがいるなんて怖すぎる。いくら能天気な美月だが、身の危険を感じ始めていた。


「あの講演会のサイン会で怪しい人はいた?あんまり学園の中に犯人がいるとは思いたくないけど」

「うーん」


 しばらく秋人は考え込んでいたが、ぶつぶつと名前を上げていた。驚いた事にサインをした人の名前と顔を一人一人覚えていたらしい。


「神対応じゃない! 名前と顔覚えてもらったら、ファンは嬉しいよねぇ」

「おいおい、クリスチャンの前で神対応とか言うなって。神様の名前をみだりに唱えたりしたらダメなんだ」


 そういえば母はアメリカに住んでいるが、「オーマイゴッド」は以外と言わない語っていたのを思いだす。聖書では神様の名前を口に出すのは不敬と書いてあるそうで、クリスチャンの多いアメリカと日本の文化はだいぶ違うようだ。ちなみにオーマゴッドの代わりにグッネス、ゴッシュなどと言うらしい。


「そういえば藤崎真澄先生がキャーキャー言いながらサインもらってたなぁ」

「マジで? 意外とあの先生はミーハーだ」

「あと藤部先生の件で疑われた丸山先生もサインもらってた。花織っていう名前で可愛いねって言ったら、めちゃくちゃ恥ずかしがってたよ」


 真澄も丸山もイケメン料理研究家にキャーキャー言っていたなんて。美月は大人達の子供っぽい一面を知り、なんだが微妙な気分になった。


「まあ、イケメンは癒しだからね。大人女子が騒ぐのも大目にみようぜ」

「自分でイケメンって言います? っていうか藤部先生の件でも、私は大人にガッカリなんですけどー」

「美月ちーも大人になればわかると思うが、案外大人って子供っぽいよ。むしろ一人暮らしして家計のやりくりやってる美月ちーはだいぶ自立してると言える。えらい!」


 素直に褒められてしまって美月は下を向いてしまった。別に秋人を異性として意識するような事はないが、ファンの気持ちは何となくわかってしまった。色んな意味で裏表ありそうイケメンだと思ったが、中身は空っぽではないらしい。


 そんな事を考えつつ、美月の住むアパートのエントランス周辺についた。自己物件だがマンションのように門構えは立派だった。


「誰かいる?」


 思わず美月は、秋人の影に隠れながら聞く。


「あれ? ゴミ捨て場の方見てみろ。美月ちーの部屋の方見てね?」


 秋人が指差した先には確かに怪しい人物がいた。

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