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料理王子の謎解きレシピ  作者: 地野千塩


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ギルティな謎(5)

 翌朝、目覚めるといつもと違う状況に、白目を剥きそうになった。


 ふかふかのベッドに、触り心地のよい掛け布団。窓は大きく、燦々と朝の光が降り注いでいた。


 明らかに自己物件のあの家ではない。美月は上半身を起こしながら昨日の事を思い出した。


 秋人のファンと思われるストーカー(というか嫌がらせ?)にあい、彼に逆ギレした上で、この秋人の家に運ばれたのだった。


「あぁ、なんかひどい事言った気がする」


 頭を抱えそうになった。よく覚えていないが、秋人や抹茶にも暴言を吐いてしまった気がする。あとで謝らなければ。


 枕元には、メモが二つ置いてあった。一つは桜からのもので「着替えや洗面用具を、洗面所に置いとくね。午後まで日曜礼拝行ってくるから、お留守番よろしく!」とあった。


 もう一つのメモは、秋人からのものだった。「ぐっすり寝たかい?美月ちー。朝ご飯は、リビングにあるから適当に食べてくれ。俺と抹茶さんも日曜礼拝行ってくるからお留守番よろ!」とあった。


 そういえば家の中は物音がしない。秋人や抹茶がいる時は、ガヤガヤとうるさいが、本当に彼らは礼拝に行ってしまったようだ。枕下にあるデジタル時計を見ると、朝の9時半だった。それまでグースカ寝込んでいたことも恥ずかしくなってきた。


 とりあえず洗面所に向い身支度を整えた。桜が用意してくれた服は、お嬢様っぽいワンピースで戸惑う。きっと桜が着たらよく似合うだろう。着ていると恥ずかしくなってきたが、桜にも迷惑もかけた事が居た堪れない気分だ。


 確かに自分は秋人のファンらしき人物に被害を受けたが、被害者面をしすぎた気がした。元はといえばタダ飯を食べに入り浸っていた自分の行動にも大いに落ち度がある。冷静になればなりほど、自分の行為が子供じみていたと感じて、頬が熱くなってきた。


「わぁ。美味しそう」


 しかもリビングのテーブルに用意されていた朝食も、そんな自分には勿体無いぐらい美味しそうなもので、ますます居た堪れない。


 食卓用のカバーを外すと、和食の朝食があった。具沢山の味噌汁や焼きしゃけ、海苔に白いご飯。冷めていたが、見ていると日本人なら誰でも心がホッとするような朝ごはんだった。


 そばに抹茶からのメモも置いてあった。「美月さん。うちの秋人さんが迷惑かけました。私は礼拝に行ってきますが、ご飯食べて元気出してください」とある。筆ペンで達筆で書かれていたので、ちょっと読みにくかったが、それでも気持ちは伝わってくる。


「あぁ、私悪いことしたな……」


 そんな朝ご飯を食べながら、しみじみと罪悪感みたいなものを感じてしまった。


 あんた夜中に秋人や抹茶を呼び出した、さぞ迷惑だっただろう。その上、着替えや食事まで用意してくれたなんて。自分はこの嫌がらせの犯人を責める資格があるのか、わからなくなってきた。


 白いご飯も、鮭も味噌汁もとても美味しかった。だからこそ、チクチクと自分も悪かったと思ってしまった。美味しいのに、ちょっと苦く感じてしまう朝ご飯だった。


 食べ終わったら、厨房に持っていき、食べ終わった朝食の食器を洗った。これで罪悪感が消えるわけではないが、それぐらいやっても良いだろう。厨房の長しは、秋人がレシピ開発中なのか、洗い物が大量に溜まっていた。


 美月はエプロンをつけ、洗い物を全部片付けた。


 厨房の作業台の上には、ノートが開きっぱなしで置いてあった。秋人の開発中のレシピみたいだった。どうやらレシピ本を出すためのハイカロリーなギルティなメニューを作っているようだった。


 イラストや出来上がった調理の感想や調理時間などのデータも詳しく書いてあって、みてるだけでも面白い。勝手に見るのはまずいと思いつつ、レシピ作りの秋人の情熱が垣間見れた。「ハイカロリーな食べ物がギルティじゃない! 節度を保って食べられない人の心の弱さが悪い!」などという秋人のコメントにちょっと笑ってしまった。


 確かにそんな所は自分もあるかもしれない。美月だってドケチでお金に目がないし、節操の無いところがある。


 いつか秋人は、罪とは犯罪ではなく神様から離れているのが問題と言っていた。クリスチャンでもある秋人の言う事はちょっと難しいが、どうも人間は性善説ではなさそうだ。


 自分は嘘もつくし、お金も大好きだ。そんな自分は、とても神様に近いとはいえなかった。


 ちょうどそんな事を考えていると、秋人が帰ってきたので、リビングに戻った。

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