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プロローグ

 美月の住むアパートは、事故物件だった。夜な夜な幽霊らしき何かが見えるが、近所に住む教会の牧師に祓ってもらってから快適だった。


 駅前の商店街近くにあり、築五年でまだ新しい。


 しかし、問題はそんな事ではなかった。


「これは、ヤバいかも」


 薄暗い部屋で、一人で家計簿を睨めっこしていた。


 今月は赤字だった。主に食費が赤字だ。


「困ったなぁ」


 美月を悩ませているのは、主にお金の問題だった。父は早くに死に、現在母親は海外で仕事をしている。


 美月の母は作家だった。ただ、活動の場は日本ではなく、アメリカだった。いわゆるコージーミステリと言われているジャンルを英語で執筆し、向こうの出版エージェントと契約していた。作品の舞台も全部アメリカだ。取材の為にしょっちゅうアメリカに行っていた為、現地に居着いてしまったという事情がある。という事で美月は女子高生ながら、事故物件アパートで一人暮らしをしていた。


 母の仕事が順調の時は、財布も潤い、美月も楽なのだが、今は企画も通らず、電子書籍も売れず苦戦中らしい。自ずと美月への仕送りの金額も減っていた。


 まあ、向こうで通訳や翻訳の仕事もしているので、食いっぱぐれる事は無いのだが、今は新型インフルエンザの影響で、なかなか難しいところもあるという。


 ちなみに母はアメリカの暮らしが板につきすぎて、日本に帰るつもりは無いらしい。授業参観や面談の時は帰ってくるが、日本の悪口しか出てこないものだから困ったものだ。


 それに美月は貯金が趣味だった。お年玉や夏休みのバイト代は全額貯金していた。


 その宝物のような貯金通帳から、生活費を下ろすのは忍びない。この格安事故物件を探したのは、美月自身だった。美月は一言で言えばケチだった。いや、ドケチで貯金が趣味だった。ポイントカードはきっちり貯め、緑茶は二番煎じを余裕で飲む。緑茶の出涸らしはチーズにあえて惣菜にしたり、掃除にまで活用していた。この部屋の電気が薄暗いのも節約の為だった。


 新型インフルエンザの影響か物価は日々上昇している。母の不安定な仕事も、全面的に支持はできない。ただ、そんな母にも少なからずファンがいるようだった。子供を放っておいて海外で仕事をしている状況は、世間的には正しくないのかもしれないが、母の仕事を全部否定する気にもなれない。


「はぁ、困ったね」


 お腹も減った。最近は節約レシピばっかり作っている。


 星野美月、17歳の女子高生。貯金とお金大好き。ドケチだが、事情があって金欠中。


「今日の夕飯どうしよう?」


 美月の情け無い声が響いた。

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