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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

動画投稿アプリ

作者: みんみ


 凄い瞬間を撮ってしまった。


 辺りが騒然とする中、私はずっと手に持っていたスマホでその現場を撮影していた。

 

 初めて聞く大勢の人の悲鳴、地面に広がる大量の血、大破した車に折れた信号機。 


 非日常的なその光景に私は興奮が抑えられなかった。

 

 クラスのみんなだってこんな映像は持っていないだろう。 その事が尚更、私の撮影意欲を掻き立てた。

 

 こ、こんなのテレビでもネットでも見た事がない!! 

 この映像があれば……数万回再生も夢じゃないかも!!

 


 編集で使えそうな場面は他に無いか、破損した箇所や巻き込まれた人は他にはいないのかを必死に探していると、遠くからサイレンの音が聞こえた。

 

 その音は私を驚くほど冷静にさせた。


「ま、まずいかも……」

 

 もしこの動画が警察に見つかったら証拠として押収されてしまうかも知れない……それだけは絶対に避けなきゃ!! 

 


 私は直ぐに足元に投げ捨てていた鞄を拾うと騒然とする現場から走って逃げる事にした。

 


 途中、誰かが私の名前を呼んでいたけど、そんな事に構っている余裕が今の私にあるわけもなく無視してひたすら学校へと走った。

 

 



 

「はぁはぁ……ここまで来たらもう大丈夫かな」

 

 休憩を取りながら20分程走り、私はいつもと違うバス停で乗車した。

 

 バスの中はいつも通り空いていて、私は普段と同じ二人用の席に腰掛け、さっきの映像がきちんと撮れているかを確認する。

 


「……す、凄い。 完璧に撮れてる」

 

 大型のトラックが私の真横を通り過ぎ、隣の人を巻き込みながら信号機に激突する。 

 

 スロー再生にすれば、人とトラックがぶつかる瞬間さえも目視出来た。

 

 動画を何度も再生し、その完成度の高さに惚れ惚れする。

 

 肝心の場面をスローで再生すればちょうど1分弱、何も編集する必要はない。

 

 最後の知らない人の悲鳴とトラックの下から流れる真っ赤な血が、まるでゲームオーバーの演出の様にさえ感じる。

 

「こ、こんなの神動画じゃん」

 

 私は直ぐにアプリを開きその動画をアップした。

 

 普段から友達4人と色々な動画をあげているが、おそらくこの動画は私達の最高再生回数を更新する、その自信がある。 


 これは文字通り神が私にくれた運命の動画だ!!

 これならあゆみやゆきにも自慢出来そう!!

 

 なんとも言えない幸福感に包まれながら私は学校に着くまで、見慣れた景色を楽しんでいた。

 

 

 


 

 

 

「おはよー!! ねぇ、あゆみ!! ゆき!! 私の動画見てくれた??」

 

 学校に着いた私は直ぐに二人の元へ駆けつけた。

 

 実を言うと私はまだ結果を見ていなかった。 二人と一緒に確認したくてずっと我慢してたのだ。


 まぁ、まだ1時間くらいしか経ってないから流石に数万再生は行ってないと思うけど。

 

「って何その顔?? もしかしてまだ見てないの?? あんな神動画なのに??」

 

 目を合わせた二人は私が見た事もない顔をしていた。

 

「……あずさ、あんたっ!!」

 

「や、やめてゆき!! ……うぅ……やめて……お願いだから」

 

「えっ? あゆみなんで泣いてるの?? 何かあったの??」

 

 その瞬間、私の耳に乾いた打撃音が響く。

 直後にやってくる頬の痛みが私に叩かれた事を教える。

 

「なっ、何するのよ!!」

 

 信じられない!! 急に殴るなんて!! 

 

「うるさいっ!! 早く私達の前から消えて!! 今すぐに!!」

 

 私の目の前でゆきが顔を真っ赤にして怒鳴った。

 


 

 な、なんでこんなに怒ってるの?? 

 それに他のみんなもどうして私をそんな目で見てるの?? 私何か悪い事したっけ??


 心当たりは一切なかったが、その異常な空気に耐えられなくなった私は直ぐに教室から出て行った。

 


 なんなのよ!! ゆきもあゆみも、みんなも意味わかんない!! 昨日まであんなに仲良かったのに!!

 


 どんなに考えても私がたった1日で嫌われる理由が判らなかった。 

 昨日と違う事と言えば、動画をアップした事くらいしかないからだ。

 



 ……あれ? も、もしかして嫉妬されたの??


 

 そうだ、そうに違いない!! あゆみは私に自分の最高再生回数が抜かれたから泣いてて、ゆきもみんなもあゆみの涙に騙されてるんだ!! 


 信じられない!! 嘘までついて私を悪者にしようとするなんて!! 本当に最低!! 友達だと思ってたのに!!

 

 

 私は急いでアプリを開き、さっきの動画の再生回数を確認した。

 


「……な、何これ!! 凄いじゃん!! たった1時間なのに25万再生もされてる!! あゆみの動画の5倍じゃん!! ははっ!! ざまーみろ!!」

 

 やっぱりただの嫉妬じゃん。 本当に醜いわ、いつも偉そうな事言ってて再生数負けたらあれだもん、顔だけは良いけど正真正銘のクズね!!


 

「ってこんなにコメントもあるじゃん!! 100件以上も!! やばい!! バズったかも!!」

 

 見た事もない数字に、私のテンションは一気に上がった。


 

「えっーと、なになに……って何これ」

 


『神経疑います』 

『きもすぎ』 

『通報しました』 

『最低』 

『クズ中のクズ』 

『こいつの本名は真島あずさな、高二のブスだよww なお、中身もブスだった模様』 

『吐きそう』 

『こいつ人間じゃねぇーだろ』

 


 初めて貰った大勢の人からのコメントは全て私と私の動画を否定するものだった。

 


「はぁ?? 何これ?? こいつらも私に嫉妬してんの?? みんな私が神動画撮ったからって妬まないでよ!!」

 

 コメントをスクロールする度にうんざりする。

 

 まさかこんなにキモい人間ばっかりだったとは。

 

 しかも何このコメント? まるで動画を撮った私が悪いみたいな書き方してるし!!

 

 『人殺し!!』

 

「馬鹿じゃん!! 人を殺したのはトラックの運転手で私じゃねぇーから!!

 そもそも後少しで私も死ぬ所だったんだぞ!! ちゃんと動画見ろ!!」

 

 『動画より先に救急車では??』

 

「はぁ?? あの場に何人いたと思ってんだよ!! 救急車くらい誰かが呼んでるだろ!! 現に直ぐにパトカー来たから!!」 

 

 『こいつが轢かれたら良かったのに』

 

「なんで私が轢かれなきゃいけなんだよ!! 

 本当に話の出来ない奴多すぎ!! はぁー、もうイライラする!!」

 

 その後も書き込まれるコメントは全て私の人格を否定する物ばかりだった。

 




 

 ……もう良いや。 こんなクズ達を相手にしてても意味ないもん。 

 誰も見た事ない動画を撮ったからってこんな妬まれるなんて思ってもみなかった。

 

 


「あーあ、テレビで見る衝撃映像なんかより遥かに凄い映像なのになぁ。 

 何でみんなこの凄さがわからないんだろ。 

 ねぇ、みすずはどう思う?? こいつら本当に馬鹿ばっかりじゃない??」

 

「……ねぇ!! ちょっと聞いてるの??」

 


 何度尋ねてもみすずからの返答は無かった。

 

 



 

 程なくして私の神動画とアカウントは消去された。

 

 

 



 まさか運営も馬鹿だったとは……本当に狂った奴ばっかりでがっかりする。

 

 



 仕方がないから、次はもっと刺激的な神動画を撮影しようと私は強く思った。

 

 

 

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