圭くんの想い 2
“彼の優しさ”の圭くんside。
俺の住むマンションの部屋の前まで着き、鍵をさして中に入る。電気を付けて、佳奈さんをゆっくりベッドにおろして……………。ああ、布団、昨日干しといて良かった。彼女に布団をかけているとき、目に入ったのは、19:30をさした壁掛け時計。
「夕飯、作るか。」
今日は少し手抜きをして、“油そば風うどん”を作ろうと思っていた。買い物袋から、半解凍になってしまった冷凍うどんとネギを取り出す。
「良かった。うどん多めに買っておいて。」
たくさん買っておけば、帰り遅い日もしっかり食べられるかと思い、買っておいたのが役に立った。これからもそういう直感は大事にしていこう。
うどんを2袋、沸騰したお湯に入れる。ボウルには、砂糖、醤油、酢、すりおろしにんにく、ごま油、鶏がらスープの素、オイスターソースを入れ、混ぜ合わせる。次に、うどんとボウルに作ったタレを絡めあわせ、最後、ネギや卵黄を乗せて、出来上がり。なんと簡単。
リビングと自分の部屋が分かれているうちの間取りでは、料理している間、彼女の様子を見に行けない。作り終わると同時に、2つのお皿を持って自分の部屋へ向かっていく。
彼女はまだ寝ていた。うどんは起きたら食べてもらおう。温め直して。……………待って、卵黄入れちゃったけど、温め直せる?
そんなことを思いながら、小さい折り畳みテーブルで食べ進める。布団から覗く佳奈さんのあどけない顔が目から離せない。こんなにまじまじと見てはいけないことは分かっているのだが。もう、少し。
リビングに戻り、食器を洗ったり、シャワーを浴びたりと、そんなこんなで23:00。今度は違う意味で、彼女の顔をまじまじと見てしまう。
「…………スゴいな、まだ寝てるし。」
やっぱり小さい体では、警察官は厳しいんかな。彼女の顔にかかった前髪を優しく払う。
俺もそろそろ寝たいが、夜中、彼女がおきたらびっくりするだろう。
起きるまで、仕事しとくか。ノートパソコンを開き、ベッドを背もたれにして作業を始めた。
「…………んんー。」
0:30。彼女が、起きたみたい。
「佳奈さん?」
顔を覗き込むと、うっすらと目を開け、「圭くん?ここどこ?」と彼女は問う。
「ここ、俺んち。…………もう0:30だけど、ご飯、食べる?」
聞いた瞬間に彼女のおなかが鳴る。かあっと赤くなった顔を布団で隠しながら、「食べる。」と言ってくれたので、早速用意する。
卵黄を別の皿にどかして、かるーくレンジで温める。
「はい、油そば風うどん。俺の大好きなレシピ。」
もそもそと布団から出てくる彼女を見つめつつ、もう一度、ノートパソコンを開く。
「い、いただきます。」
「召し上がれ~。」
パクっ。その後、彼女の口角が上がったが、すぐにバツの悪そうな顔になる。
「………どうしたの?」
「こんなに時間に炭水化物とったら太るなあって思ったの。」
「そんなに細いのに?」
「うるさいわねっ。」
彼女が大きく口を開け、頬張っているのを、小動物だと思ってしまう。
「圭くん。」
「ん?」
「私、何でここにいるの?」
「………覚えてないの?」
「うん………ごめんね?」
「いや。どこまで覚えてる?」
「えと…………圭くんが私の腕を心配してくれたとこまでかな…………………。」
抱きついたとこは覚えてないのか……………。
「その後は、俺ん家で腕のケガ、対処するよ、って言って、家来ただけだけど。」
「そう。」
2人の間に沈黙が降りた。
「ごめん。」
沈黙を破ったのは、佳奈さんからだった。
「え?」
「ごめん、こんな時間まで、お世話してもらちゃって。もう、帰るね。」
カバンを持って立ち上がり、帰ろうとしたので、絆創膏が貼ってある手首を掴んで止めた。
「圭くん?」
「泊まっていきなよ。こんな時間に外出歩くの、危ないし。」
「でも、」
「俺はリビングのソファーで寝るから。ベッド、自由に使って。」
「………あ、ありがと……。」
俺が必死に止めると、彼女は観念したように、座り込んだ。
「ねえ、明日ひま?」
今、スマホで偶然見つけた広告を見ながら問う。
「え?…………明日は仕事休みだから、ひまだけど?」
「これ。」
俺が見つけたのは、土日限定の、遊園地カップル割だった。遊園地なら、誰でも好きだろう。
「遊園地?ていうか、これ、カップル割だよ?」
その言葉に、俺の口端がニヤリと上がる。
「そう、だから……………」
ヤバい、心臓飛び出そう。でも、ここで、言わなきゃ。
「1日だけ、俺の、彼女になってください。」
今回も読んでくださり、ありがとうございます!
圭くん、かわいいですね~!それに、料理ができるのがスゴい!
今作に出てきた、“油そば風うどん”。私のお気に入りレシピです!ちょちょっと作れて便利です!
活動報告にレシピをのせてあるので、ぜひ皆さんも作って見てください!
あと、3分の2!楽しみにしててくださーい!!
あなたと物語のつながりを!