誰かのために誰かを失う
[あらすじ]
思い出のない高校時代。意味深な“彼”の言葉。「誰かのために誰かを失う。」佳奈の過去に寄り添う一人の人物。それは……?
「うっわ、佳奈、ダッサ。」
高校1年生のある日。私は美波に足をかけられた。いつものことだから、「あんたが足をかけたんでしょ!」と言いながら、立ち上がろうとした。が、
「うわあっっ……!いったあ……。」
転んだ時に足をひねったのか、足首が痛くて立ち上がれなかった。
「あははっ!ぶはぁ!」
帰りの会の直後で人がまばらだったからまだよかったが、その時はいつも強気な私でも泣きそうなくらい悔しかった。もうすぐ、地面に涙の粒が落ちる……。
「大丈夫?」
顔をあげると、男の子が立っていた。
「えぇ~、……くん、いいんだよぉ。その子に構わないでぇ♥」
美波の伸ばし口調を無視し、彼は私をひょいとお姫様抱っこした。
「…………黙れ。」
彼のその一言で、さすがの美波も口の端をひくひくさせていた。
「足、大丈夫か?」
「っ……。」
「とりあえず、保健室行くぞ。」
彼はそう言って、私を保健室に連れて行ってくれた。
ベッドに優しく私を置き、保健室の先生に湿布を頼みつつ、彼は私に聞いた。
「さっきは大丈夫だったか?」
彼のその質問が足首のことなのか、いじめられたことなのか分からなかった私は、
「もうダメかもっ…………!」
さっきの悔しさと彼の優しさに涙が溢れて、ベッドの上に落ちた。彼はそんな私の背中をさすり、こう言った。
「ごめんな……。ずっと気づかなくて。でも、“もう、大丈夫だから。”」
「……え?」
その時、保健室の先生が湿布を持ってきた。
「ありがとうございます。では俺はこれで。」
「え!あっ、ちょっと待ってっ…………!」
私は彼を止めようとするが、その時には、保健室を出ていた。
その後、私は彼に会うことはなかった。なぜなら、その後、私は1年間不登校、保健室通いだったからだ。1年後には私はその人の名前や顔をはっきり覚えていなかったし、卒業式まで私はハブられていたので、他の人に聞ける機会もなかった。
りりりりりりりりりり!りりりりりりりりりり!
目覚まし時計が鳴り、朝が来る。
「ううっ……」
朝の目覚めが悪い私だが、何故か、夢の中に出てきた彼の顔がはっきりと浮かぶ。
それが、これから始まる事件の、真相だった。
二話目も頑張りました!イェイ!
ぜひ、読んでくださった方は感想を頂けると幸いです。
私は佳奈ちゃんが羨ましいです。自分の意見に自信を持つのはなかなか出来ないですから。
あなたは、どうですか?
いつか私の小説が誰かのためになってくれたら、うれしいです。
今日も、あなたと物語のつながりを。
✳今巻から不定期掲載になりました。ご了承ください。