彼女に芽生えた子葉の先は
[あらすじ]
高校の同窓会に出た綾瀬佳奈はクラスメイトだった小原圭と出会う。趣味の会う彼と別れた後のLINEに抱いた初めての、気持ち。これは……?
5年ぶりの再会を喜ぶ同級生の顔が……全く分からなかった。私の頭の中で検索をかけても出てこない。ああ、それぐらい私にとって高校生活は印象のないものだったんだと改めて感じた。
「あらぁ、久しぶりぃ♥佳奈ちゃん、変わんないねぇ。」
「23才にもなって語尾を伸ばすあんたの方が変わんないわ。」
私のことを嫌っているくせに馴れ馴れしく名前を呼ぶ元クラスメイト、西浦美波は昔より体積が2倍大きくなっていた。
「佳奈ちゃん、性格も変わんないわぁ。その強気なとこぉ。」
私はそろそろぶちギレそうだ。だが、高校の時のようにうるさい場所ではなく、ここはホテルの宴会場なので「そうでしょ。」と聞き流し、自分の席を探した。
ホテルの宴会場では席がグループ制になっており、私のグループは6人いた。全員覚えてない。
「あの。」
不意に右から声が聞こえた。ゆっくり顔をそちらに向けると、横に座っていた人が口を開いた。
「綾瀬佳奈さん、ですよね?」
「え?」
「俺、高3の時に同じクラスだった小原圭です。……覚えてませんか?」
その小原圭という人は眉を曲げた。
「……すみません。覚えてません。」
「……そうですか。」
彼は残念そうに俯いた。私はもう一回、ごめんなさいと謝る。いいんですよ、と彼は言ってくれたが、私は気が気でなかった。
「あのっ、何か飲みませんか?少しお話をしたら、思い出すかも……!」
彼を元気づけるために、誘う。私はスパークリング、彼はワインを頼んだ。
「……そう。IT系の仕事に就いてるのね。」
話し始めてすぐに二人ともため口で話せるようになった。いまだに思い出せないけど、人間関係を築くのが苦手な私が短時間でここまで仲良くなったのは、始めてだ。
「佳奈さんの職業は?」
「私?私は一応警察官をやっているのよ。」
「一応ってなんすか。」
「だって警察官としてまだまだだもの。まだ雑用ぐらいしか頼まれないわ。」
「そうなんだ……」
同窓会が始まってから二時間が経過。もう帰る人や、二次会の募集をしているグループがちらほら出てきた。
「圭くんはどうする?二次会、行くの?」
彼は少し首を傾け、うーんと唸る。
「二人で一軒飲みに行かない?俺、穴場知ってるんだよね。趣味が合うし、もう少し話したいかも。」
今度は私が少し首を傾け、うーんと唸る。
「終電に間に合うぐらいまでなら、いいわよ。」
「よっしゃ、早速行こう!」
彼の連れて行ってくれた場所はすごくおしゃれな場所だった。少し暗めなカウンターなので、話が進んだ。共通の趣味の映画鑑賞や読書など自分の世界観についても語り合った。
「連絡先、交換しない?」
そう誘ったのは、彼からだった。もちろん賛成。
別れた後にきたLINEの、「今日はどうもありがとう」のメッセージにもとても高揚した。……この気持ちはなんだろう。
優しい彼の素性をこの時は知る由もなかった。……この初めての心をもてあそぶことで精一杯だったのだ。
初めての投稿で緊張しました!
まだまだ下手ですが、頑張って書いたのでぜひ次回も読んでください!
あなたと物語のつながりを。