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はじまりの朝

今から二百年と少し前の話。

日本だけれど日本ではないどこかの国の物語。

ここに波乱万丈の人生をおくることになる女子おなごがいる。

いつしか乱世を生き抜き、国を導くこととなるだろう。

しかし、その女子はまだ自分の身におこることを

なにも知らないで眠っていた。

その瞼の奥には、何が見えているのか――。




その日はすがすがしい朝だった。

昨日雨が降った痕跡は消え去り、朝日がまぶしく輝いている。

その光は、木をつき抜け、木漏れ日となって大地に降り注ぐ。

ふと、優しい風が百合の花をくすぐって逃げて行った。

二月にしては珍しい、温かみのある日だ。


そんな命あふれる今日このごろ、一つの屋敷の中で、

「百合様、朝です!」

と、言った威勢のいいさけび声が障子をつらぬく。

すがすがしい朝は、あっけなくやぶられた。

廊下を、女が駆けている。

「トタトタトタ・・・」

はじめ、小さかった足音はしだいに、

「ドタドタドタ・・・」

と、だく点がつくまでになった。

その音にあわてて雀が二、三わ飛び立ち、

直後に、

『バン!』

と、障子が荒々しく開けられた。

カエルがあわてて池に飛び込む。


そこには髪をゆった体格のいい女が仁王立ちをして立っていた。

筋肉がもりあがったうでをまくしあげ、

横幅の広い胴回りを、帯がきっちりとしめている。

女はするどい目で、視線の先にあるもり上がったふとんをキッと睨みつけると、

「百合様、朝です!」

と、最初に言ったことをもう一度繰り返した。

百合と呼ばれた女は、もり上がった布団からもっそりと顔を出す。

クリっとした目に長いまつげ、色白のはだとツンととがった鼻。

百合はなかなかの女子だ。


「かんべんしてよ、お千〜私、八ツ半にねて、七ツ半におきたばっかりなのよ!?

一時しかねてないじゃない!」

しかし百合の訴えは聞きいられなかったようだ。

「くだらない計算をするひまがあったらはやくおきてください!」

お千はそう言うと、

「バタン!」

と、またしても荒々しく障子をしめた。

「フン・・・おせっかいババア・・・」

ぼそっと百合は布団の中で呟いた――つもりだった。

「何かいいましたか!?」

二秒後、鬼のような形相でお千が飛んで来る。

「げっ・・・地獄耳・・・」

「いいかげんにおっしゃい!」

バボーン!と、障子がしまった。と、思うと天井から、

『ピシッ』

というにぶい音がする。

百合はこのままいくと、家が崩壊してしまう気がして、ため息をつく。

だが、百合の家はここらではみかけないほどの豪邸だ。壊れることはまずないだろう。


なにしろ百合は、将軍様につかえる老中、

『佐門』の孫だった。

『老中』といえばこの時代、そこらの人々はほぼ全員膝をつくほど身分は高い。


「ふあぁ・・・」

百合は一アクビした。

「さてと、もう少しねるか・・・」

その時、

「百合、何をしておる、早く起きてこんかぁ!」

いくつもの部屋を突き抜けて、聞きなれた声が飛んできた。

百合はしぶしぶ立ち上がる。

(日常茶飯事・・・)



初めまして、浅葱と申します。

『姫君は波乱万丈』第一話を読んでください、ありがとうございます。

この作品は私のデビュー作でもあります。

文章表現はまだまだ未熟ですが、楽しんでもらえるように頑張りたいと思います!ぜひ、感想や指摘などがありましたらバンバンお寄せください。


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