49話 魔王黒姫の訪問 其の3
入ってきた、執事は急いできたようだ。
何せ、王宮からの手紙だ。
「ご歓談中に失礼します。マキノ様、王宮から使者が手紙を持って参りました。至急、手紙を読むようにとのこです」
と、執事さん。
「わかりました。それで使者の方は?」
「それが、手紙を私に渡すとすぐに帰ってしまいまして、私も何が何やら訳が分かりません。これが、その手紙です」
と、執事は手紙をマキノに渡す。
マキノはすぐに手紙の封を切り、手紙に目を通している。
「ようやく、王都からの知らせか。それでなんて書いてあるんだ?」
「どうやら、本当に安全かどうかの確認に勇者のアルベルト様が軍を率いてもうすぐ確認くるようね。手紙にはもう出発していると書いてあるから、近日中には到着するはずだわ」
「確認に軍を動かしたのか? それではこちらも家のダンジョンモンスターを待機させるぞ」
「待って! そんな事をしたら余計に緊張を生むわ。だから、ガイア様の懸念も分かりますが、ここはいつも通りの人員でお願いします」
まあ、確かにマキノの言う通り、余計な緊張を生んでいらん誤解を生んでもしょうがない。
向こうも魔王と聞いて、慎重なのだろう。
だが、いざという時はこちらも黙ってはいない。
幸い、ゲートでいつでも援軍は町の近くまで呼び寄せる事ができるしな。
しかし、軍まで率いてくるとは、よほど、黒姫は魔王として恐れられるているようだな。
今までの魔王と人間との関係を考えれば、当然かもしれんが実際に争っていたのは、俺は史実、つまり人から聞いた事でしか、知らんからな。
人間が勇者と軍を動かすほどには、魔王とは恐ろしい者なのだろう。
「私からも頼む、ガイア。下手な行動をとれば、この町が戦場になる。そうなれば、今までお互いに築いたものが無駄になる。お互いに死傷者は出したくないはずだ。今回はあくまで確認の為に王宮が過敏に反応しているに違いない。魔王と言う名はそれだけで脅威なのだ」
と、マキノもシミルも2人ともこちらがダンジョンモンスターを動かすのを止めようとしている。
確かに、この2人は信用できるが、アルベルトは生真面目な性格だったはず。
気楽に話しが通じるだろうか?
まあ、いい。
ここは2人の顔を立てるとしよう。
「分かった。いつもの交易の最低減のダンジョンモンスターだけを町に連れて来よう」
ゲートでいつでも援軍を呼べる準備だけは、させて貰うがな。
「マスターよ、そんなに過敏に反応せんでも大丈夫じゃて。儂も付いておる。人間の軍勢が裏切ようと我らにはかなわんよ」
「私達はガイア様のダンジョンを裏切るような真似はしませんわ!」
「マキノの言う通り、我々は裏切るような真似はしない」
と、マキノとシミル。
「わかっておる。お主たち2人の事もこの町の住人や冒険者達も信じておるわい。ただ、軍は緊張して進軍してくるじゃろうな。勇者アルベルトが指揮を執っているなら少しは安心じゃろ。真の敵ではないとわかって貰えるじゃろ」
と、エンシェントドラゴンの爺さん。
「わかった、わかった。3人の言う通り、いつも通りに行く。黒姫もそれでいいな?」
「いいも何も人間ごときに負ける気はしないが? それに勇者だろうと、今の私や、マスターに敵うとは思えん」
確かに、黒姫の言う通り、負ける気がしないな。
女神様も大陸を制圧できると言っていたし、俺も少し過敏になりすぎたか?
「近日中に来るならどうする? こちらの交易の日でも構わないのか?」
「ええ、それで構わないはずよ。向こうも事を荒げる気はないはずだから」
と、マキノ。
「分かった。では今日はこれで失礼して、また次の交易の日に話し合おう。場所はマキノの屋敷に行けばいいのか?」
「ええ、それでお願いするわ」
こうして、その日はダンジョンに帰った。
そして、次の交易の日。
俺達は配下に装備をさせて、黒姫、エンシェントドラゴンの爺さんと共にマキノの町に向かう。
もちろん、万が一に備えて、ゲートの準備もしていつでも援軍を呼べる体制を取っている。
町に着くと、町の外には、野営をしているテントが多数見かけられる。
町に入り切らないほどの軍隊だ。
俺達はいつものように門番の衛兵に到着した事を伝え、配下達には冒険者ギルドに先に行かせ、俺達、黒姫とエンシェントドラゴンの爺さんの3人はそのまま、マキノの屋敷に向かう。
途中で軍人らしい人間を何人もみかけ、不躾な視線を感じ、いつもの町の活気は失われていた。
戒厳令でもしいたのか、町の人が見かけられない。
そして、門番の衛兵ではなく、王都からの軍人がこちらをマキノ屋敷まで送るようだ。
「ダンジョンマスターのガイア殿ですね? マキノ辺境伯の屋敷までご同行願います」
と、王都の軍人の1人が緊張気味に言う。
こちらを警戒している事がまるわかりの態度だ。
「分かった、ついて行こう」
俺達3人は王都の軍人に連れられ、マキノの屋敷に向かった。
屋敷に着くと、すぐに応接室に通され、そこには、マキノ、シミル、勇者アルベルト、それに知らない軍人さんがいた。
多分、軍のトップかそれに準ずる者なのだろう。
なにより、驚いたのは、ここに王太子殿下であるオデッセイまでが居る事だ。
「よく来てくれた、ガイア殿」
と、オデッセイ。
魔王の下見に次期国王のオデッセイが来ていいものなのか?
それともこちらを信用している証なのか。
「久しぶりだな、オデッセイ」
「貴様、相変わらず殿下に対して、馴れ馴れしいぞ」
と、勇者アルベルト。
「いいんだ、アルベルト。ガイア殿とは対等の関係だ。それで、そちらの女性が魔王と言う事でいいのか?」
「そうだ、魔王黒姫だ。俺がテイムして、今は人間に悪感情は抱いていない」
「ガイア殿にはいつも驚かされるな。報告ではそちらのご老体もエンシェントドラゴンと聞き及んでいるが?」
「その通りだ。しかし、オデッセイまで来るとは、危機管理ができていないのか? 下手をしたら、戦いになると思わなかったのか?」
「そこは、ガイア殿を信じているからな。今日は無理を言って無理やりついてきたのだ。こちらの信頼の証でもある」
「なるほど、オデッセイは俺達を信用してくれているわけか。ありがたい事だ」
「ゴホンッ。お話し中に悪いですが、今日は、本当に魔王が脅威でないか、確かめに来た。ガイア、悪いが黒姫が魔王として人間に嫌悪感がないかどうしてわかる?」
と、勇者アルベルト。
「簡単だ、俺がテイムしているからだ」
「それが信じられないと言っているのが軍上層部の見解だ」
「初めまして、ガイア殿。私は、オスカー。これでも将軍を務めている。我々の歴史の中で、魔王が誕生した場合、友好的な魔王はただの1人も居なかったのだよ。だから、テイムしたからと言って俄かには信じられない」
「そうか、では、黒姫が最初の人間に敵対しなかった魔王になるな。喜べ」
「それが真実なら喜ばしいが、確かめようがない。よって、ここにいる、勇者アルベルト殿と一騎打ちで勝負してもらいたい。もちろん、命のやり取りはなしでだ。魔王は戦いになると、無差別に虐殺をするものだからな、それがちゃんとルールを守れるか、見極めさせて欲しい」
「だ、そうだが。黒姫どうする?」
「オスカーと言ったか? 要はそこの勇者と戦い殺さぬように手加減してやればいいのだな?」
「勇者相手に手加減して勝てますかな? あまり、勇者であるアルベルト殿をなめない方がいい」
「かまいませんよ、オスカー殿。その自信、勇者であるこの俺が叩き折ってくれる」




