4話 ラッシュマッシュと侵入者
2,355DP。
これが今、我がダンジョンのポイントである。
毎日2,000DP貰えることがわかり俺は明け方までせっせと手作り武器を作っていた。
そうだ、せっかくだからみんなと食べたいな、ラッシュマッシュ。
よし、そうと決まれば、まずはホムンクルススケルトンを10体召喚する。
そして1体づつに武具生成で鉄の剣、鉄の盾、皮の鎧を装備させる。
次はホムンクルススケルトンメイジを10体召喚。
そしてこちらも1体づつ魔術師のローブ、魔術師の杖を装備させる。
えーとこれで、残りは、855DP。
おっと一気に減ってしまった。
これで、ラッシュマッシュの召喚陣が300DPだから、残りは555DPか。
うん、いけるな。
今日はパーティーだ!
スケルトンたちはアンデッドだからご飯も食べないし眠る事もない。
「という事で、すまんが、ゴブリン達と警備を代わって貰っても問題ないよな?」
「そういう理由で召喚されたのですか!?」
「えっ喋れるの!? そっちに驚きだよ、俺は!?」
「私たちは普通のスケルトンではありません、元は人間の形をした、魔力合成で作られたホムンクルスです。通常のスケルトンではありませんよ。声も魔力を使えば話せます」
「お、おう。なんかすまないな」
って俺マスターだよね?
何で召喚したてのホムンクルススケルトンに謝ってんだ!?
「ま、取り敢えず頼むわ」
「了解しました。マスター。それで基本的には侵入者は全て殺してしまって構わないのですか?」
「おう、モンスターなんかはな」
「どういう事でしょうか?」
「話しができる相手とはなるべく、穏便にいきたい。たとえば、人間とかな。もし話しができる奴がでてきたら、俺を呼んでくれ」
「かしこまりました。そのように致します。では警備の交代に行ってまいります」
そして、スケルトン達、いや、ホムンクルススケルトン達は警備の交代に行ってくれた。
そしてゴブリン達が集まりだす。
「マスターいつの間に配下を召喚したゴブ?いきなり警備の交代って言われたからビックリしたゴブ」
「たしかに、同じダンジョンのモンスターじゃなかったらわからなかったゴブ」
「ん?やっぱり、同じダンジョンの仲間だとわかるもんなのか?」
「当り前ゴブよ。じゃなきゃ今頃戦闘になっているゴブ」
「マスターも、他のダンジョンモンスターや侵入者がきたらわかるゴブ」
「確かに言われてみれば、その通りだな!わっはっはっは」
「マスターが笑ってごまかしてるゴブ」
「今日はお前たちのためのラッシュマッシュの召喚陣を作ろうと思う」
「「「おおお」」」
と喜ぶゴブリン達、素直ないい奴らです。
「それで、召喚陣を作る前に何が必要だ?」
「奴らはとっても逃げ足が速いゴブ。だから同じダンジョンモンスターでも食べられると知ると、必死で逃げるゴブ」
「そうゴブただしジャンプができないゴブから策を周りに作って、飛び道具かなんかで仕留めるゴブよ」
「じゃあ、まずは他の家畜達同様に、策を作るか? 飛び道具は昨日俺が作った石斧とか槍でなんとかなるだろ?」
「そうゴブね、マスター手作りのサブウェポンの性能テストも兼ねていいかもしれないゴブ」
何故!? 夜なべ仕事を一生懸命にした、俺が作ったサブウェポンが性能テストまでされるんだ!?
こいつらマスターの俺の事を何だと思ってるんだ!?
まぁ確かに性能テストは大事だが、何だか釈然としないぞ!?
取り敢えず今は柵作りだな。
昨日持って帰って来た蔦がロープ変わりになって、ちょうどよく、柵が出来上がっていく。
「さて、諸君。準備はいいか?」
「いつでもOKゴブ!」
「ではこれよりラッシュマッシュの召喚陣を設置するメニューオープン」
俺は300DPを使い、ラッシュマッシュの召喚陣を設置した。
これで残りのDPは555だが、必要経費として、割り切ろう。
召喚陣から現れた、ラッシュマッシュはギラついた、俺達の目を見て即座に走り出した。
確かに速い。
さくの外から一斉に石斧やら短槍を投げたりしてるがことごとく走って避けている。
だが、ラッシュマッシュも体力の限界がきたのか投げた短槍に足があたりこけてしまう。
そこにすかさずに全員の攻撃が殺到。
これでようやく1匹、大きさは小型犬ぐらいだが、よく2本脚であそこまで走れるものだ。
ここで一度武器を回収し、もう一度挑戦だ。
何度も繰り返すたびに全員の投げる精度も上がり後半には、全員が投擲のプロ並みになっていく。
意外に良い訓練になっている。
だが、何度も力いっぱいに投げられた、俺が夜なべをして作ったサブウェポンはほとんどが壊れてしまった。
耐久性に難ありと誰かが言った時は本気で殺気をぶつけてやろうかと探したが、そこは仲間意識が強い連中だ。
上手く溶け込みやがって見つけられなかった。
畜生め、あれだけ力強く何十回も投げられたらそら壊れるわ!
まったく、しょうがない、今日も夜なべして、準備はしとかないとな。
「で、仕留めたラッシュマッシュはどう食うのがうまいんだ?」
「そのまま焼いて食べるのが、ゴブリン風ゴブ」
キノコだからそれでもおいしそうだが、鍋にしても上手そうだ。
だが、残念なことに鍋にして入れる具材がない。
白菜の代わりに薬草なんて入れたら、大変だしな。
入れるとしたら鶏ぐらいか?
それも上手そうだが、今回はこいつらの言う通り、そのまま焼いて食うか。
食レポは、うまくないんで、一言だけ。
「塩があればなお、うまかったに違いない!」
まだまだこれからも楽しめるのだ、期待してダンジョンコアしながら調味料をいつか手に入れよう。
そのためにも、人間さんと仲良くしとかないと、交易の機会が無くなってしまうかもしれない。
ま、ここは人里から離れた場所にあるダンジョンだ、そう簡単には出会えないだろう。
ってこれがフラグになって、良い人間さんこないかな?
ん?
侵入者かさてどんな奴かな。
俺は念話でホムンクルススケルトンに連絡を取る。
『どんな侵入者だ?』
『マスターお待ちかねの人間の様です』
フラグ来たー!
おっとここは冷静にいかないと。
『んん、それで、どんな奴らだ?』
『それがどうも逃げて来ているようで、ここをただの洞窟だと思って隠れているようです』
『わかった、俺もそっちにいく、下手に接触するなよ』
『はっ』
「お前たち、侵入者だ、動けない奴はいないな」
と俺はさっきまで馬鹿騒ぎしていたゴブリン達に声をかける。
「はっ」
と全員が起立する。
「今、ダンジョンの入り口に人間が隠れている。どういう状況下なのか俺が見てくる。指示があるまで各自持ち場で待機していろ」
全員が動き出す。
俺はゴブリンの擬態を解いてダンジョンコア本来の姿、野球ボールぐらいの大きさにもどり、ホムンクルススケルトンの側に転移する。
「侵入者は?」
「まだ入り口で隠れているようです」
「見つかってはいないみたいだな、俺が様子を見てくる」
俺はそう言って、壁に擬態しながら侵入者に近づいて行く。
数は4人か。
男3人に女が1人。
なんだ?
冒険者ってやつか?
これじゃあ良い人間か悪い人間かわからないぞ。
もっと近づくか。
近づいていくとようやく、話し声が聞こえてきた。
「姉貴、もういいよ。俺が囮になるからその隙に全員で逃げろよ。この傷じゃもう助からない」
と大けがをしている、金髪の男が喋る。
「ジャックしっかりしなさい、貴方をこんなところで死なせたりしない」
んん?
なんかやばそうな雰囲気だぞ。