39話 魔王と竜族
爺さんに稽古で負けてから、俺も鍛錬に励むようになった。
女神さまにはほぼ不老不死と言われているがほぼである。
コアが完全に無くなれば、俺とて死んでしまう。
まあ、ほぼの時点で不老不死ではないと思うけどな。
女神様もいい加減な所かがあるからな。
それより魔王復活の予兆とか分かれば、人間達にも教えてやれるんだが、全くわからない。
今の所、女神様も考え中と言っていたし、そのまま保留にして置いて欲しい。
長い時間を生きたエンシェントドラゴンの爺さんなら何か知ってるかもしれないし、聞いてみるか。
俺は、爺さんがいるであろう4階層の食堂兼遊戯場に移動する。
ここも賑やかになったものだ。
いろんな種族のモンスターやら妖精が全て俺の配下として仲良く過ごしている。
爺さんは、相変わらず昼間から酒を飲みながら将棋をやっている。
「爺さん、酒は夜だけだと何度言えばわかる」
「おっ、マスターに見つかってしもうたわい。カッカッカッカ」
と、酔っぱらっているのか大袈裟に笑う。
「酔ってるのか? そんなんで防衛できるのか?」
「何、これぐらいで酔うたりせんわい。問題ない。それより儂に何か用かの?」
「ああ、そうだ。長い時間生きてる爺さんならわかると思うと思ってな。魔王が復活するときに何か予兆みたいな事は起きないのか?」
「魔王か。そんな話もしていたな。儂が知ってる限り予兆などは見つかった事はない。魔王は自然と生まれて、いつしか人々から魔王と呼ばれる。その者が魔王となり魔の者を率いておる」
「魔の者とは、モンスターか?」
「基本的にはそうじゃな」
「魔王はどう行動する?」
「歴代の魔王達によって色々じゃな、人間を目の敵にして戦争を引き起こす者。自分で王国を作り、引きこもる者もおったが、人間と友好的な魔王は1人もおらんかったな」
「爺さんは魔王が生まれたらどうしてたんだ?」
「別にどうもせんわい。わしらドラゴンは基本的に誰の下にもつかん。まあ、マスターの配下になった儂が例外なだけじゃな」
確かに、爺さんは珍しい部類に入りそうだ。
初めはただの行き倒れかと思ったしな。
今じゃ酒を飲んで、将棋やらで遊ぶ、お爺さんだ。
これが切り札なのだから、世も末だ。
「爺さんはドラゴンの里から来たのか?」
「そうじゃやよ。ドラゴンにも集落はある。そこから飛び出してきたんじゃ、後の余生をどこかで楽しめる場所を探してな。そしたらここにたどり着いたわけじゃ」
「家で少年みたいな事にななって、里で大騒ぎになってないだろうな?」
「大丈夫じゃ、ちゃんと伝えて来てある」
どんな伝え方をしたのか、気になるがここは聞かない方が胃に優しさそうだ。
すると、対局していたゴブリンが、
「なんて伝えたゴブか?」
聞いちゃったよ、おい!
「何、簡単じゃ、『里に飽きたから、旅にでます。探さないで下さい』と置手紙をちゃんとしてきてた」
「家で少年かよ!」
それ絶対、探してるパターンの奴だよ!
「爺さん家族とかはいないのか?」
「息子と娘がおるの」
「そんな手紙一つで納得できると思うか? 今からでもどこにいるかぐらい知らせた方が良くないか?」
「それはならん。やつら、攻め込んでくるぞ?」
「なんで、攻め込んでくるゴブ!? しかも奴らって、複数ゴブか!?」
「爺さんドラゴンの里で何やらかしたんだ?」
「何もしておらんわい。だから、置手紙がをして、息子と娘に押し付けて……。いや、大丈夫なはずじゃ」
「なんだよ、さっきの間は!? 爺さん、さては、何か肩書があって、仕事を息子と娘に押し付けて来たんじゃないだろうな?」
こういう場合のお約束としては、結構偉い立場の場合が多い。
例えば、爺さんが竜王とかな。
「何、心配はいらんじゃろ? 儂はすでにマスターにテイムされた身。すでにここのダンジョンモンスターの一員じゃ」
「答えになってねえよ!?」
「そう、細かい事を気にするな。禿げるぞい」
元の姿のコアから元々つるピカボディだよ!
これで擬態まで禿げてたまるか!
「爺さん、マスターはコアだから元々髪の毛が無いゴブ」
「そうじゃった、わっはっはっ!」
笑ってる場合じゃねえだろ!?
魔王復活説に爺さんの竜王説まで出て来てしまった。
頭が痛い。
どちらが、先に来る?
とにかく用心しておかなければ。
爺さんの方は、もうテイムした後だ。
もし爺さんが竜王だとしたらテイムされたと知れられたら、ドラゴンの一族も怒るよな?
爺さんも攻めて来るって言ってたし。
しかし、いまさらテイムを解除できるのか?
それに爺さんは俺達ダンジョンモンスターにとっても切り札だ。
今、魔王が復活するかもしれない時に爺さんに抜けられるときつい。
爺さんの事は一先ず置いておいて、シミルとマキノには魔王復活説でも話しておくか?
何事もなければ、それでいいが、本当に復活した時にせめて準備ぐらいしていた方がいいだろう。
次の交易の時にでも、一応注意ぐらいはしておいた方がいいだろう。
俺達も戦いに向けて、少し備蓄の量を増やしておいた方がいいかもしれない。
後は、俺が女神と交信できて信じてもらえそうな奴は、ラザーぐらいかな。
妖精に間に入ってもらえれば、信じてくれるだろう。
考えていると、配下から念話が届いた。
『マスター、魔王と名乗る者と竜族がマスターに面会を求めています』
いっぺんに来たー!
どうする俺!?
しかし、攻め込んでくるわけじゃなく両方が面会に来たってことは、まだ、話し合いの余地が残っているという事だよな。
「お前たち!魔王と竜族が来た。戦闘になるかもしれん。特に爺さんは竜族を抑えてもらうぞ」
「やれやれ、もうかぎつけてきたのか」
と、爺さん。
「もう、魔王が復活してきたゴブか? しかも1人で攻めてくるとはいい度胸ゴブ」
「今の所、両者とも俺に面会に来ただけのようだ。事は慎重にすすめるが、何が起きるかわからん。全員警戒態勢を崩すなよ」
「了解です。マスター。しかし面会に来てるなら戦闘になりますかね?」
と、ミノタウルス。
「わからん。しかし相手は魔王とドラゴンの一族だ。警戒をしていて、損はない。俺は1階層まで行ってくる。ダミーの4階層で話しを聞くつもりだ」
『マスター大変です、しびれを切らした魔王が勝手にダンジョン内に入って行きました!攻撃対象として対処をしますか?』
魔王め!
少しは我慢しろよ!
『いや、相手は魔王だ。どれほどの強さかわからん、お前たちは下手に刺激しないようにしておけ。それと竜族の奴らには魔王の対処をするため待っていてもらえそうか?』
『それが、魔王が先に強引に入ったので、我らも入れろとの事です』
ちっ、厄介な奴らめ。
『しょうがない、竜族の奴らはダミーの4階層に連れて行って、そこで待って貰え。俺は魔王の対処をする』
俺は、魔王が進んでいる階層をサーチする。
するとすでに2階層まで来ていた。
早すぎる。
中はかなり入り込んでいて、初めての探索でももっと時間がかかるのに。
しょうがない、2階層まで俺も転移するか。
俺は、魔王の近くに転移する。
するといきなり攻撃魔法が飛んできた。
俺は、慌てて、攻撃を避ける。
「今のを回避するか、中々やるではないか」
と、魔王。
見た目は肩下まで伸ばされた黒髪に黒い瞳、そして少女のような顔たち。
まるで魔王には見えない美少女がいた。
これで大きな鎌、デスサイスというのだろうか?
を持っていなかったら、良かったのに。
「貴様がダンジョンマスターじゃな? 貴様を殺してわらわがこのダンジョンを頂く!」
「待て待て、俺は、ダンジョンマスターじゃない」
「しかし貴様の配下はマスターと呼んでいたぞ!」
と、言いながら、持っていた大きんなデスサイスの鎌で攻撃を仕掛けてくる。
「そうだけど、違うんだって」
どうやら、話しを聞いてもらえるまで時間がかかりそうだ。




