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三、
布から溢れ出す淡い木漏れ日。暖かな光が花畑を照らす。
桃色の折り紙が丁寧に折られていく。優しく慣れた手つきで一枚の紙が桃色の鶴へと姿を変えた。創られた新たな命。その命に触れ、生きている実感を受ける。
生み出された鶴は床に置かれた。周りには様々な色の鶴が仁王立ちしていた。桃色の鶴は群れの一員となったのだ。
床を疎らに埋める鶴が花のように映る。
花畑の上で出雲ヒガナは花を摘んでは抱擁する。失いつつある感情を多色の鶴で穴埋めする。
閉じ込められた庭に生きる鶴が息苦しそうに木漏れ日を求めていた。しかし、癒えない傷を檻に変え、有無を言わせず閉じ込める。
愛情を埋め合わせる使命を果たす。それ以上のことは許されず、自由は存在していなかった。
鶴の庭に咲く一凛の彼岸花。その花から垂れ流れる悲劇が鶴を道連れにする。悲しい記憶に打ちのめされ、未だに抜け出せずにいる。頼みの綱の鶴も意味無く聳えるだけだった。負の連鎖に彼女は揉まれていく。
その部屋には一筋の希望も見えてこなかった────