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第71話 罰ゲーム

ちょっと色々あって、お待たせしてしまい申し訳ありませんでした。

これからまた2-3日に一話ずつ投稿したいと思います。

「――と、言うわけで温泉旅行のチケットがあるわけなんだが」


 夕食を食べながら商店街での出来事を話す。テーブルを囲んでいるのはいつも通り霞と雪さん、それに都さんとココといういつものメンバーだ。 ココは最初は、時々夕食をとってから帰る位だったが、最近は当然のように一緒に食べている。


「温泉旅行ですか。行きたいですけど学校が……。あ! 都さん、そのヒレカツ私が狙ってたんですう」


「悪いねアタシの獲物だよ。だいたいあんた家に帰ったら夕食あるんだろう? 太るよ」


「ぐっ……。若いから平気なんですう。それに霞さんのお料理はとっても美味しいので」


 大皿からとった最後のヒレカツを口に放り込んだ都さん。最近はココの好みに合わせたカレーやハンバーグ、それに今日のような揚げ物といったメニューも多くなっている。どんなメニューでも美味しく作る霞の腕にはうなるしかない。


 ヒレカツを食べ終わった都さんが、思い出したように話題に参加する。


「アタシは行きたいねえ。豪勢な風呂に美味い酒に郷土料理だろう? 最高じゃないかい」


「わたしも行きたいよ小太郎。温泉だよ。温泉。都ちゃん勝負だよ」


 都さんと霞は温泉旅行に乗り気なようだが、雪さんは何かを考えているようで黙っている。その様子をみた都さんが「雪はどうなんだい?」と質問する。


「私は雪女の里にあの日のことを調べに行きたいんです」


「ああ、例の件か」


 襲撃のあと雪女と鳳来ほうらい亘胤のぶつぐの行方はいまだにつかめていない。


「はい。望みは薄いと思いますが、何か手掛かりになるようなものがあればと」


「なるほどな。じゃあ俺も気になるしついて行っていいか?」


「勿論です!」


「じゃあ霞と都さんは温泉、俺と雪さんは手掛かり探し。そしてココは学校で決まりだな」


 現地でなにか新しい情報が得られればいいのだが。


「ええ……。小太郎こないの?」


「残念だねえ……」


 霞と都さんが露骨に不満そうに言う。ココに至ってはお通夜のような表情を見せている。


「私だけ学校とか、まるで罰ゲームですう……」


 ココの不満はまあ分かるが、霞と都さんは二人とも希望通り温泉に行けるというのになぜか不満そうにしていた。


 食事を終えココを駅まで送るために表に出たところで、建物を見張っていたらしい刑事たちが近づいてきた。全く飽きもせずにご苦労な事だ。


「おい久世、どんな手を使ったのかは知らないが、お前福引で温泉旅行を当てたんだってな?」 


「何か問題があるのか?」


「問題はあるだろ。お前は依然として殺人の重要参考人なんだからな。逃亡でもされたら大変だ」


 どうやら他の手掛かりは一切見つけられていないようで、刑事たちの中では俺が未だに一番の容疑者だという事のようだ。どんなに調べたところで鳳来が俺を恨む理由はあっても、俺が鳳来を害する理由なんて一つもない事は分かりそうなものだが。


「まだ犯人扱いするのか。幾ら付きまとっても無駄だぞ。俺は犯人じゃないんだからな」


「そうです! 小太郎さんがそんなことをするはずがないんですう」


 ココも援護射撃をしてくれるが、刑事たちは一切動じた様子がない。早く俺への疑いを解いて真犯人を追いつめてくれないものか。このままでは、俺に構っている間に真犯人は逃げ切るための時間を稼ぐことになるだけだ。


「真犯人が誰か、なんて事は些細な問題なんだよ。こいつが犯人ですと言ってみんなが納得すればそれでいいんだからな」


 犯行現場がビデオに収められているなんて事が無ければ、真犯人を確定することが無理なのは確かだし、刑事の仕事はそれで正解なのかもしれないがそれを口にしてしまっては駄目だろう。


「安心しろ。温泉旅行へは行かないからな。まあ、ほかの場所へは出かける事になるが」


「おい久世! 温泉旅行が駄目だって言ってるんじゃないんだよ。街を離れるなといってるんだ。お前は物見遊山で楽しいのかもしれないが、安宿に泊まりながらついて行く俺たちは面倒なだけだろうが」


 それをするのが刑事たちの仕事だと思うのだが、これ以上挑発すると難癖をつけて別件で逮捕されかねない。


「ココ、父さんが心配するだろう。急ごうか」


 ココにそう言って刑事たちとの会話を終わりにして歩き始める。刑事たちは揺さぶりが効果が無いと悟ったらしく、距離をとってついてくる。それを確認した俺は隣を歩くココに話しかける。


「さっきは庇ってくれてありがとうな」


「びっくりしました。本当に警察に付きまとわれてるんですね」


「ちゃんと説明したじゃないか。信じてなかったのか」


「だって、私には小太郎さんがそういう人じゃないっていうのが分かりますから。きっと冗談だろうと思ってたんですう」


 なるほどココの持っている人狼の能力なら、俺が疑うのは間違いだとわかるのだろう。刑事の中にも同じような能力を持っている奴が居れば良かったんだが。


 駅に着いた時には既にココの父親の車が迎えに来ていた。預かっていたかばんを車に積み込んでココを見送る。

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人類最強の暗殺者と史上最弱の勇者
今までの作品とは雰囲気が違いますが、楽しんでいただければなあと思います。



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