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第59話 帰宅



 部屋へと送ってもらう車内で、弁護士と色々と話す。事件の概要や警察とのやり取りに始まり、かなり事細かな点まで聞かれる。一通り話したところで本題に入る。


「念のために聞いておきます、無実ということで間違いないんですよね?」


「当然だ。そもそも手を下す理由が無いからな」


「それなら安心して下さい。費用等は明日にでも郵送で請求します」


 弁護士は「まあ、事実がどうだろうと結果は変りませんけどね」と不敵な笑みを浮かべる。この人に任せておけば問題はないだろう。


「そういえば、一緒に暮らしてるお嬢さん方の証言はお願いできないのですか?」


 俺は返答に困ってしまう。それは証言はできるだろうが、霞も雪さんも都さんも身分証明の類は一切ないはずだ。警察が彼女たちの身元を探ろうとする流れは避けたい。


「うーん、難しいんじゃないかな」


「なにやら事情があるようですね。教えていただけますか?」


 さすがに全員妖怪で戸籍がないんですよ。なんて話をするわけにもいかず、事情があって身元を明かせないのだとぼかして説明する。


「なるほど、身分証明の問題ですか。犯罪のやり方を教えるわけにもいかないですし、私からは何とも言えないですね。大輔さんに相談してみるといいかもしれませんね」


「大輔さんに相談か……。これ以上借りを作る訳にはいかないんだが」


「まあ、考えておいてください」


 そんなやり取りをしている間に到着する。車を降りようとしたところで、呼び止められ名刺を手渡された。


「なにかあれば、すぐ連絡ください」


 それだけ言うと弁護士は車を走らせ帰って行く。見送ったあと部屋に戻るため階段を上る。出て行ったのが朝だというのに、すでに昼過ぎになっていて時間の無駄遣いも良いところだ。


 部屋の前まで焼き魚のにおいが漂っている。食事の準備をしてくれていたようでありがたい限りだ。


『おつとめ、ご苦労様です!』


 霞たちの声が見事に重なったかと思うと、クラッカーの音が響き俺は紙テープまみれになる。三人は綺麗に並んでやくざ映画で名乗りを上げるような変なポーズをしていた。


「ちょっ、なんだこれは?」


「小太郎様、見ての通り放免祝いですよ!」


「いやオカシイだろ! 刑務所に入れられてたわけじゃない」


 俺の返答を聞いて霞と雪さんがほぼ同時に都さんの方を見る。都さんは居心地が悪そうに身じろぎする。


「どういうことか説明してもらおうか」


「こ、細かい事にこだわってたら男がすたるよ」


 都さんはどうやら映画で出所シーンをみて憧れていたらしい。どこに憧れる要素があったのか謎だが理由は分かった。


「ごめんよう……。一回やってみたかったんだよう」


「まあいいや。お腹空いたしご飯にしてくれないか」


「小太郎、ちょっと待っててね」


 テーブルの上に並べられていく、鯛の塩焼きに赤飯と昆布巻き、それになぜか黒豆や数の子まである。おせち料理のようなメニューだ。


「もしかしてこれも?」


「そう、都ちゃんがメニュー決めたんだよ」


 またしても注目を集める都さん。料理まではよくわからなかったらしく、おめでたそうなものを適当に言っただけらしい。


「数の子って子宝とかだろ? 放免祝いだとしても関係なくないか?」


「私も変だなとは思ってたんですよ」


「美味そうなんだからいいじゃないか。もう勘弁しておくれよ」


 消え入りそうな都さんの声につい笑ってしまう。俺は父親が子供にやるように都さんの頭を撫でながら言う。


「いや、都さんのおかげでイライラしてた気分が晴れたよ。ありがとう」


「ほんとうかい?」


 俺がうなずいているのをみて、都さんはぱあっと嬉しそうな表情を見せる。


「私だって準備頑張ったんですから、撫でてください」


「わたしだって料理頑張ったんだよ」


 順番待ちしてる雪さんと霞の頭を順番に撫でていく。二人を撫で終わったところでなぜか都さんが「アタシが言い出したんだから、もう一回」と言い出したことで二週目に突入するのだった。


「もう充分だろ。飯を食わせてくれ」


「そうだね、冷めても大丈夫なメニューだけどお腹ペコペコだよ」


「私、小皿持ってきますね」


 腕によりをかけたと霞が豪語するだけの事はあって味は折り紙付きだろう実際に食べてみると、おせち料理なんて長い間食べていなかったが、こんなにおいしいものだったかと思うほどの出来栄えだった。

ちょっとズレてる勘違い系が結構好きです

早くターボババア出したい……

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人類最強の暗殺者と史上最弱の勇者
今までの作品とは雰囲気が違いますが、楽しんでいただければなあと思います。



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