第52話 元上司
第1話のシーン回収です……
ちょっと内容修正予定です
俺はさっきの出来事を思い出す。ビルの前でブラック企業の上司だったオッサンに絡まれたのだ。
会社を辞めてから結構な期間が経っているというのに、相変わらず上司気分で、偉そうに中身の無い事を言うだけのオッサンだった。最終的に警備員に排除してもらい事なきを得た。しかし、そういった事情は雪さんと都さんは知らないので話題にのぼる。
「コタロー、さっきのおじさんは何だったんだい?」
「あの人、都さんの胸ばかり見てましたよね……」
雪さんは自分の胸を見下ろしながら、「フフフ……、ミルカチナシデスカ……」とかなんとかつぶやいている気がするが、触れない方がいいだろう。
「見てたねえ。ばれて無いとでもおもってんのかねえ? こんなもん珍しくもないだろう」
「いえ! 私くらいが普通ですから! 普通ですからっ!!」
俺は二人にオフィスの前で出会ったのは、前の会社の上司だと明かす。おかげで苦労したということを説明するのも忘れない。
「じゃあ、この前の後輩さんの上司でもあるんですよね?」
「あいつまで辞めちまうって分かった時の顔を、ゆっくりと見てみたいもんだねえ」
「もう会う事はないだろう」
あの様子だと俺の抜けた分すらまだ埋まっていないようだし、あいつまで抜けてしまうと、いくら経営者一族といっても多少の処分はあるかもしれない。そうなれば残った連中も随分と楽になるだろう。
エレベータを降り高橋さんに、後輩から預かっていた書類を渡す。後輩に特産品サイトのラインナップ等を一任することは、既に決定済み事項なので話は簡単に終わる。
「久世さん、雪女に会える宿の建築もそろそろ終わりますし、一度遊びに行ってみてはどうですか?」
「もう施設は全部使えるのか?」
「周辺施設はまだですが、宿自体は使えますよ。温泉に浸かったりするのもいいでしょう」
隣で話を聞いていた雪さんと都さんが、温泉という単語に反応して話に入ってくる。
「温泉かい、そりゃあいいねえ」
「小太郎様、あの辺りの温泉は美人の湯として有名なんですよ」
「そりゃたのしみだな。近いうちに行ってみるか」
温泉なんて無理やり連れていかれた社員旅行以来じゃないかと思う。とてもじゃないがリラックスできるようなものではなかった。
「ええ、それがいいです。日程が決まりしだい連絡をいただければ現地に伝えておきますよ」
話もまとまって帰ろうとしたところで、高橋さんに呼び止められる。
「あ、そうそう。お嬢さん方にお願いがあるんですよ」
内容は現地へ行ったとき、ついでに宣材写真を撮らせてほしいという内容だった。確かにみんななら見栄えのする良い写真が撮れるだろう。納得しながらも抜け目なさに舌を巻く。
「カメラマンも女性の方を手配しますので、よろしくお願いします」
「モデルさんを雇った方がいいんじゃないのか?」
「いやあ、皆さんのような美人はモデルでもなかなかいませんからね。期待してますよ」
こう持ち上げられては都さんも雪さんも悪い気はしないようで、表情を見る限りはやる気になっているようだ。あとは霞だけだが、こだわらない性格だし問題ないだろう。
部屋に戻ると霞はほくほく顔で届いた荷物を開けているところだった。
「ただいま。それが例の荷物か?」
「おかえり小太郎。そうだよ、さっき届いたばかりなんだよ」
今日霞が部屋に残っていたのは、どうしても受け取りたい時間指定の荷物があるという理由だったのだが、今開けている箱の中身がそれらしい。
「いったい何を買ったんだ? また役に立たないガラクタなんじゃないだろうな」
「ちがうよ! 雪ちゃんと都ちゃんのも届いてるよ」
「本当ですか!」
「どれどれ楽しみだねえ」
雪さんと都さんも霞の所に集まっていく。俺も興味をもって成り行きを見ていると、箱から出てきたのは水着だった。
「水着か。タイミングが良いな」
温泉も楽しみだが、近くの川で沢遊びや泳いだりもできるはずだ。泳ぐならもうすこし暑くなってからが良いだろう。日程を考えないとな。
「小太郎そこで待っててね。着替えてくるよ」
霞の一言で水着ショーの開催が決定した。審査員は俺とフランソワという事になるらしい。フランソワが何を審査するのか分からないが、いつも餌をやっている霞に有利な気がする。
「小太郎どうかな?」
衝立の裏から最初に現れたのは霞だった。白地に控えめな柄の入ったビスチェスタイルの水着で、可愛いさの中にちょっとミステリアスな雰囲気があって、霞の魅力を良く引き出していると思う。
「うん、似合ってる。霞らしくて良いと思うぞ」
「えへへ、小太郎ありがと」
「次はアタシだね」
都さんの声が聞こえる、相当アグレッシブな水着で登場するのではと俺は少し身構える。しかし意外にも都さんが選んでいたのはワンピースのものだった。ところどころカットアウトされていて、普通のワンピース水着に比べると露出は高いが、エロさよりも美しさが強調されていて上品な感じだ。
「思ったより普通で意外だったけど、それ以外無いくらいに似合ってるよ」
「過激なのは夜のとっておきさね」
「じゃあ……。出ますね」
最後に現れた雪さんは、白のビキニに薄いブルーのパレオ付きというスタイルだった。露出度的には三人の中で一番高いのだが、上品なせいか不思議と清楚な感じがする。
「雪さんの肌の白さとよくマッチしてていいと思う。とても似合ってるよ」
「小太郎様にそういってもらえて幸せです」
「さあコタロー誰が一番か言っとくれよ」
「私ですよね?」
「わたしに決まってるよ」
上手く避けようと思っていたのに、先手をとって順位付けを言い出されてしまった。この後俺は、三者三様で順位を付けられるようなものじゃない。カレーとうな重は比べられないと力説し続けるハメになるのだった。
大輔「あれ? アタシの水着シーンは?」
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これからも、まだまだ頑張りたいとおもいます。
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