第46話 団欒
すみません。
色々あって昨日投稿できませんでした。
今日からまた毎日投稿します。
闇医者が時折やってきて、痛み止めだの化膿止めだのといった薬を置いていく。おかげでここ数日でほとんど痛みを感じなくなってきている。流石に動かすとまだ痛むがそれも時間の問題だろう。
今日も診察に来ているが、流石に闇医者なんてやっているだけあって、話しかけてくるのも「痛むか?」とか、「あと数日で糸が抜ける」といった事務的な会話のみだ。事情に深く首を突っ込まないのが、商売のコツなのだろう。
気になるのは治療費だ。やはり闇医者だと正規の料金より高いのだろう。今の俺に支払えない金額を請求されるとは思えないが、準備の都合もある。
「治療代の事なんだが、どいう方法で払えばいい? やっぱり現金か?」
「いや、大輔にデカい借りがあるからな。金は要らんよ」
「借りがあるのは大輔さんにだろう? だから俺が払わないのはおかしいだろう」
闇医者は診察器具を片付けながら、「大輔が気に入ってるようだからな。ありがたく受け取っておけ」と取り付く島もないまま帰ってしまった。大輔さんには大きな借りができてしまったな。
その大輔さんはというと、今日もフランソワ鈴木の散歩に出かけている。よほど気に入っているのか、ほぼ毎日大輔さんが散歩に連れていってくれている。飼い主を探し続てはいるが見つかりそうには無い。このままだと最終的には、大輔さんがフランソワを引き取る事になるのかもしれない。
いつまでも遊んでいるわけにもいかないし、パソコンで市場取引をする。霞の恩恵を受けていることもあって、しばらく見ることができなかったというのに、十分すぎるほどの含み益が生まれていた。
「放っておいてもこれか……」
つい独り言が出る位の数字が並んだ画面を見ながら、小一時間ほどかけてポジションを整理していく。複利で増え続けていることもあって、ポートフォリオの総額はとんでもない金額にまで膨れ上がっている。
鳳来には今、これとは全く逆の作用が襲い掛かっているはずだ。何をやっても最悪の結果にしかならないなんて、想像するだけでも恐ろしい。だが、今までやってきたことの報いなのだから、たっぷりと味わってもらうしかない。
「小太郎、まだ本調子じゃないんだから、根を詰めすぎちゃだめだよ」
「大丈夫、もう終わるよ」
霞がお茶の準備を始める。合わせるように雪さんと都さんが茶菓子を持ってきてくれた。霞たちには心配をかけ続けになっていることだし、今日はこのくらいにしておくとしよう。
あの夜以来怪我をしていたこともあって、久しぶりのみんなでゆっくりする時間だ。いつもどおり人間と雪女と座敷わらし。それにここ最近は箱に戻らず小鬼姿で過ごしている金剛丸を肩に乗せた都さん。ずっと一人だったが随分とにぎやかになったものだ。
「そういえば、金剛丸と都さんは、どうしてここに残ってるんだ?」
「おぬし、我ら鬼はそこまで恩知らずではないぞ。ちゃんと恩を返すまでは帰らぬ」
金剛丸は昔話などで知っているような鬼とは、全くかけ離れた義理堅いことを言う。
「金剛丸と都さんの為だけにやったことじゃないからな。本来の目的のついでの事だ、恩に着る必要はないぞ」
「そんなことよりコタロー。あたしの亭主になっとくれよ」
「は?」
突拍子もない事を言い出す都さん。話が飛びすぎてて意味が分からない。メッセージのやり取りを数回した位で、まともに話をしたこともないんだが。
「亭主だよ亭主。旦那って言った方がわかるかい?」
「そこが分からないんじゃない。デートどころかまともに話したこともないじゃないか」
「細かい事を気にする男だね。こういうのは思い切りが大事なんだよ」
「ダメです! 小太郎様は私と一緒に雪女の里に住むんです!」
なぜか雪さんがそんなことを言い出す。俺ここに住んでるんですが。雪女の里を見てみたいとは思っても、住みたいとは思わないんですけどね。
「かー、雪女の里なんてどうせ冬は雪に閉ざされるような極寒の地だろ? 鬼が島で過ごす方が間違いなくコタローも喜ぶさ」
実在したのか鬼が島。そういえば金剛丸が言ってたっけ。仲間の瑪瑙丸が無人島に移り住んだと。
「ちょっとまってくれ! 鬼が島があるってことは、桃太郎は実話なのか?」
桃太郎の名前が出た瞬間、都さんの表情がまさに鬼の形相と化していた。
「コタロー、まさか桃太郎の野郎と関わり合いがあるのかい?」
「いや、知り合いとかじゃない」
都さんは苦々しい表情で言う。
「あの野郎は、平和に暮らしてるあたしらの里を略奪していった極悪人さね」
桃太郎はただの強盗じゃないかと言ったのは、確か福沢諭吉だったか。芥川龍之介の桃太郎も、平和に暮らしている鬼を襲う話だったはずだ。まさか、それが真実だとは。
「驚いたな……」
「そんなことより。小太郎様は雪女の方がいいですよね? お米もおいしいですし」
「なにをいってんだい。鬼にきまってるだろ? 本物の鬼嫁なんて粋じゃないかい」
迫ってくる二人の迫力に参っていると、今まで黙っていた霞が口を開く。
「小太郎の家がわたしの家だからね。どっちでもいいよ」
「霞さんズルいです!」
「そりゃあ卑怯だよ」
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