第41話 月明かりの下で
今日は投稿時間が遅めになってしまいました。
すみません…
部屋にやってきた源蔵に準備ができた事を伝える。てっきり今夜にでも決行するものだと思っていたのだが。
「今夜はまだ月が明るすぎる。そうだな、あと三日ほど待った方がいいだろうな」
新月だと暗すぎてこちらの行動に支障がでるし、満月に近いと明るすぎて隠密性が下がるという事らしい。酒をねだるばかりの、飲んだくれ妖怪だとばかり思っていたが、存外ちゃんと考えていたらしい。
「わかった。じゃあ三日後ってことでいいな?」
霞も雪さんもやはり緊張しているのであろう、神妙な面持ちで頷いて同意する。こうして三日後に侵入するという事が決定した。源蔵は準備があるからと一升瓶片手に山へと帰って行った。
「もう少し練習しておくか」
「はいっ」
俺は雪さんと移動の練習をする。一度できるようになってしまえば簡単なもので、失敗することは全くと言っていい程なくなっている。
「小太郎には、赤と緑どっちがにあうのかなって。コミカルな赤もいいけど、渋い緑も捨てがたいんだよねえ……」
「どういうことだ?」
「鳳来の屋敷に乗り込むときの服装だよ」
霞が操作しているラップトップをのぞき込むと、比較リストに派手な赤いジャケットと緑のジャケットとが表示されている。
「小太郎様ならどちらでも似合うと思いますよ! 素敵です」
「こんな派手なジャケット着てたら、警備の連中に即発見されるぞ。動きやすさも考慮するなら、ジャージなんかが一番だろう」
「派手なジャケットはどうかと思いますが、ジャージもないと思います!」
雪さんはジャージを着せられるのが嫌なのか、ジャージは一瞬で拒絶されてしまう。良いと思うんだけどなジャージ。
「わたしは能力を使う都合で、デフォルトスキンの着物になるでしょ? だから雪さんはブラックのスーツで小太郎はジャケットかなあって」
「デフォルトスキンって、ゲームのやり過ぎだろ……。だいたい、どうして服装に決まりがあるんだ」
「小太郎はわかってないねえ……」
「とにかく、そんなものは着ないからな」
霞が何を目指しているのか理解していないかもしれないが、どんなことを考えているのかは理解している。なにかのキャラクターが、そういう服装をしているのだろう。座敷わらしという性質のせいか霞にはそういう子供っぽいところがある。
引かない霞と俺の服装に関する舌戦は、雪さんの一言であっさりと終戦を迎える。
「目立たない服装なら、なんでもいいですよね」
「確かにそうだな。じゃあ目立たない服を各自選ぶってことで」
「わかったよう……」
後は当日まで練習を続けながら、集中を高めていくだけだ。都さんに連絡しておく事も忘れてはいけないな。緊急時にはひと暴れしてもらう必要もある。都さんからの返信はすぐに返ってきた。
――三日後に侵入との事わかりました。いつでも動けるように準備しておきます。
静まり返った鳳来の屋敷と警備する男たちの姿が、わずかな月明かりにうっすらと見える。空に浮かぶ月はいわゆる有明月というやつだ。なるほど源蔵の言う通り、暗さに慣れていれば十分に見えるが、明るすぎるわけではない。
結局、俺はジャージ姿で、霞は最初に出会った時の着物姿。雪さんは暗めの服装で動きやすさを重視したものになっている。
「やっぱり予定通り通用門から入るのが良さそうだな」
鳳来の屋敷にはいくつか入口があるのだが、正門はカメラの数も警備も一番厳重だ。政治家や暴力団関係者などの裏の客が使う入口は、カメラの数は少ないが人の数が最も多い。カメラは多いが人手は少ない、通用門が一番楽という事になる。
「練習通りやるしかないな」
「小太郎様、中に入ってから庭へと回るまで頑張りましょう」
源蔵が姿を消して、難なくするすると壁を超える。俺の目にはギリギリ見えるが、そこに居ると分からなければ見落としてしまうだろう。
姿を消した俺達三人は通用門の所へ移動しその場で待機する。扉に到着した源蔵が内側から鍵を開けたのだろうカチャリという音が聞こえる。
門がカメラの死角になるタイミングを見計らって、音を立てないように注意しながら邸内へと入る。素早く扉を閉めると様子をうかがう。どうやら扉が開いたことには気付かれずにすんだようだった。
「とりあえず侵入成功だな」
「庭にたどり着けるまでは安心できないよ」
「そうですね。見つからないように急ぎましょう」
俺は次のカメラの位置を思い出しながら、移動を開始するのだった。
みなさんのおかげで、2万ポイント達成できました!
まだまだ頑張りたいとおもいます。
もしよろしければ、まだの方はブクマや評価などで応援してください。
よろしくお願いします!




