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第38話 人面犬の依頼

「小太郎! 人面犬だよ人面犬! しかもイケメン!」


「そんなに興奮するな。ただの変な犬だろ」


「こんなに美しい毛並みのボクに、変な犬とは失礼な人だな」


 つい顔にばかり目が行ってしまうが、よく見てみると体はトイプードルのようだ。確かに毛並みはつややかで、良く手入れされているように見える。一升瓶から口を放した源蔵げんぞうが不思議そうに言う。


「人面犬とはどういう意味だ? そやつ、ただの犬ではないか」


「ただの犬に見えるのか?」


「私にも普通のワンちゃんに見えます」


 雪さんも不思議そうに首をかしげる。どうやら雪さんと源蔵げんぞうには、普通の犬にみえているらしい。どういう理由か分からないが、人によって見え方が違うようだ。


「普通のトイプードルに見えてるってことか。どういう事なんだ?」


「ボクたちはそんなに強いあやかしではないからね。それよりボクはミニチュアプードルだ! あんな愛玩犬と一緒にしないでくれたまえ」


「そうだ雪さん。こいつの言葉はどう聞こえてるんだ?」


「なんとか分かりますね。吠えてるだけに聞こえる部分もありますけど……」


 雪さんはそういうと眼鏡を忘れた人のように眉根を寄せて、フランソワの顔を見つめている。そんなことでよいのかと思ったが、「確かにイケメンですね!」と言っているので正解なのだろう。


「そんなことより、ボクの頼みを聞いてはくれないか?」


「頼みっていうのはなんだ? とりあえず聞くだけは聞くよ」


 妖怪を助ける業務なんてやってる暇はないんだがな。フランソワは我慢しきれないようで一息に言った。


「嫁探しを手伝ってほしいんだ」


「嫁? 何か事件に巻き込まれたのを探す手伝いか?」


「違うよ。今から嫁をもらうのさ」


 結婚相談みたいなものだと思えばいいのだろうか。相性のよさそうな雌犬探すために、どういった方法があるのだろう。


「小太郎。買ってあげればいいんじゃない?」


「ミニチュアプードルって、いくら位するんでしょう?」


「ボクが欲しいのは人間の嫁だよ!」


「それは無理だな」


 即答する。いくらなんでも人面犬の嫁になりたい女性なんて、どうやっても見つけられる気がしない。どこかに存在しているかもしれないが、探し出しすのは現実的ではない。


「どうしてだ! ただの犬と伏姫という夫婦も居たんだろう?」


「それは小説の中の話で、フィクションだ」


「それでも! ボクは美しい人間の女性と結ばれたいんだ」


 現実を知るべきだと口を開きかけたところで、雪さんが袖を引く。


「小太郎様、ちょっといいですか」


「じゃあフランソワちゃん。わたしに理想の女性像を聞かせてよ」


 霞がフランソワ対応を引き継いでくれる。タイミングの良さから霞も雪さんと同じことを考えているのだろう。俺は真剣な表情を見せる雪さんに袖を引かれるまま移動する。


 よほど話を聞かれれたくないのか、雪さんは屋上まで俺の手を引いていきやっと口を開いた。


「小太郎様、あの犬は危険です」


「と、いうと?」


「普通の妖怪とちがって、あれは此岸こちらの動物が妖に変化したようなものですから……。人を襲うかもしれません」


「女性をレイプしたりするかもしれないという事か」


 雪さんは頷いて話しはじめる。一般的な妖怪というのは人間に、ちょっとしたいたずらのような事は出来ても、それ以上の事はなかなか出来ないものらしい。


 言われてみれば、安太郎も俺に住めと言われなければ引っ越しもできなかったし、霞にしても俺が住む許可をあたえたという事になっている。


 よくある妖怪話でも「それをよこせ」と言いに来るという話が多い。人に見つからず盗み出すことも簡単だろうに、しないのにも理由があったのだとすれば納得だ。


「あいつは普通の犬が変化したようなものだから、そういった制約が無いということか」


「はい。不本意ですが、調伏することも考えておいた方がいいかもしれません。諦めてくれれば一番なのですが」


 俺は術者なんてものではないから、調伏しろと言われたところでどうすればいいかさっぱりわからない。


「見て見ぬふりってわけにはいかないよなあ……」


「小太郎様ならきっとできますよ」


 ため息をつく俺に、雪さんは励ますように言ってくれる。上手くやれる自信なんて全くないが、できる限り説得してみるしかないだろう。

思ったより長くなってしまったので、次回に続きます……


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人類最強の暗殺者と史上最弱の勇者
今までの作品とは雰囲気が違いますが、楽しんでいただければなあと思います。



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