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第33話 良く考えてからね!

 部屋に戻った俺たちは、資料を前にどう動くかを相談している。木塚の資料は完璧で邸内の様子が手に取るようにわかる。


「都さんに接触してこちら側に引き込みたいんだが」


「うちでのこづちが奪われておるままではないか」


「うちでのこづちには鬼を自由に操るような力があるのか?」


「いや、そんな力はないが……」


 金剛丸はうちでのこづちが壊されたりすることを恐れているようだが、そんなことはしないと断言できる。なぜなら、霞が去ったことで振りかかる不幸を払うのに必要になるだろうからだ。俺はみんなに説明する。


「確かにそうかもしれぬの」


「あんなケチな家の人が、宝を壊すなんてありえないよ」


「他に、代わりになるような宝は持っていないのでしょうか?」


 雪さんの指摘に少し考える。確かに他にもそういったアイテムを持っている可能性はある。


「たとえ持っていたとしても、どうにもならないだろうな」


 会社の不祥事(ふしょうじ)表沙汰(おもてざた)になったりと避けきれていない訳だし、うちでのこづちの重要性は相当のはずだ。


「金剛丸、協力してもらえるように説得してもらえないか?」


相分あいわかった。しかし、どうやって都と連絡を取るか……」


 都さんがスマートフォンなどを持っていてくれれば問題無いのだろうが、木塚の資料には書かれていない。


 連絡を取る方法が無いものかと木塚の資料をひっくり返してみるが、これと言っていい方法が見当たらない。


 小鬼姿の金剛丸に侵入してもらうほかないのだろうかと考えていると、不意に霞が提案してきた。


「安太郎ちゃんに、頼んでみようよ」


「どういうことだ?」


「だってこの池、川から水を引き込んでるんだよね?」


 霞は都さんが鯉に餌をやっている写真を指さす。なるほど、川とつながっているのであれば、安太郎なら泳いで池までたどり着けるだろう。


「いいかもしれないな。金剛丸からの手紙とスマートフォンを届けてもらうか」


「でも、安太郎さんの身に危険はないのでしょうか?」


 確かに厳重な警備がされているのなら、水の中にも何か仕掛けられているかもしれない。木塚の資料にもさすがにそこまでは書かれていない。加えて術者は脅威にはならないのだろうか。


「安太郎というのは、あの河童のことだろう? 都でもあれを害するのは難しいであろうな」


「安太郎ちゃん、実は強い?!」


「いや、水中の河童は、それこそ水を得た魚だからのう」


 安太郎が引き受けてくれれば上手くいきそうだ。ダメだった場合は、小鬼姿の金剛丸にやってもらうしかない。


 都さんに渡す手紙だが、これは金剛丸に書いてもらった方がいいだろう。俺が書いたところで信用されずに捨てられるだけになりそうだ。


「金剛丸、都さんに渡す手紙を書いてもらっていいか?」


「よかろう。内容はどのようにするのだ?」


 伝える内容は、うちでのこづちは必ず取り返すということ、そのために内部から手引きをしてほしいという事。連絡には一緒に渡すスマートフォンを使ってほしいという事くらいか。


 一応スマートフォンの簡単な使い方も説明した方がいいかもしれない。ハイテクを使いこなす霞や雪さんを見慣れているせいで忘れがちだが、使えない可能性がたかい。


「ふむ、このままでは筆はとれぬ。小太郎殿。しばらく体を使わせてもらうぞ」


「乗り移りみたいなもんか? まあそのくらいなら好きに――」


 言葉を遮ぎるように霞は俺の口を押える。


「ダメだよ小太郎! そんな簡単に返事をしちゃ」


「うむ。試してみただげだが、おぬしは脇が甘すぎるぞ」


 意味が分からず驚いてる俺に、雪さんが説明してくれる。


「小太郎様、あやかしに不用意に許しを出すのは危険ですよ。しばらくと言うのが十年とかだったらどうするのですか」


 それを聞いて俺は愕然とする。確かに長く生きている鬼の感覚なら、十年や二十年でも暫くかもしれない。後悔はしていないとはいえ、霞は好きにしろと言った事で一緒に住む事になったわけだし、妖と関わる以上はよく考えて返事をする必要があるな。


「よし、金剛丸。十分間、文字を書くためだけに腕を貸してやろう」


「それでよい」


 満足そうに笑う金剛丸が消えると、俺の腕は意志とは関係なく万年筆を走らせはじめる。おそらく鬼たちの言葉なのだろう、見たこともないような文字がつづられていく。


 つづる動きがとまると、金剛丸がまた箱の上に姿を現し腰かける。


「あとはスマートフォンか」


「それならあるよ。どれにする?」


 霞がタマゾンのダンボール箱を持ってくる。中にはいつの間に買っていたのか、スマートフォンが何台も入っていた。


「なんでこんなにあるんだよ……」


「最高に使いやすい一台を求めて?」


 俺はその中でも一番小さい、クレジットカード位のサイズのものを選ぶ。どうやら最低限の通話とメッセージ機能くらいしかついていないようだが十分だ。むしろ、隠し持つにはこれが最適だろう。


「小太郎様、明日は安太郎さんに会いにいかないといけませんね」

2万ポイントを目指して頑張ります


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人類最強の暗殺者と史上最弱の勇者
今までの作品とは雰囲気が違いますが、楽しんでいただければなあと思います。



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