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第31話 お腹が空いたら……

 俺たち三人は、パソコンの画面に表示されているイラストを熱心に見つめていた。


「なんか普通だね……」


「それが売りなんだから当然だろう。イメージ通りじゃないか?」


 設計事務所から届いたのは、リゾートの完成イメージのプレゼンテーションイラストだ。そこには、昔からあったかのように自然な古民家風のコテージが描かれていた。


「見てください! 中はすごいですよ!」


「本当だね。この囲炉裏(いろり)もかなり凝ってるよ」


「だな、それに屋根は藁葺(わらぶき)っぽい見た目だけど、ハイテク素材みたいだぞ」


 イメージの中だけにあった風景が、こうやって形になるというのはやはりうれしい。


「このまま進めてもらうってことでいいよな?」


「はい!」


 長年廃墟に心を痛めていたこともあってか、雪さんは嬉しそうに返事をする。霞も異論はないようだし、このままでよいと高橋さんにメールを送る。それが終わるのを待っていたかのように霞が言う。


「お昼は何を作ろうかな。わたしはもうお腹ペコペコだよ」


「霞さんいつもお腹を空かしてますね。力を使いすぎなんじゃないですか?」


「ん? 力を使うとお腹がすくものなのか?」


「ええ、少なくとも私はそうです」


 雪女の力を使うと腹が減るというなら、霞がいつも腹をすかしているのも座敷わらしの力を使っているからなのだろうか。


「霞も力を使ってるから腹が減るのか?」


「うーん……。わたしは自分では使ってるつもりないんだけどね。でもそうかも?」


「どういうことだ?」


「捕まってた時はお腹空かなかったんだけど。逃げだす時に力を使ったら、倒れるくらいお腹ぺこぺこになったからね」


 俺が霞と出会ってから得た幸運にくらべて、百年単位で霞を捕えていたはずの鳳来家の規模がさほど大きくないのが気になっていた。その理由が今分かったような気がする。幸運の力を発揮し続けているのだろう。


「霞、無理に力を使わなくてもいいんだぞ」


「さっきも言ったけど、わたしは力を使ってるつもりはないよ。ごはんごはん」


 霞はそういってキッチンへと行ってしまう。会社は驚異的な速度で大きくなっている。そのために霞が犠牲になっているのだとすれば、本末転倒というものだ。


「雪さん、力をずっと使っていても問題無いものなのか?」


「小太郎様は優しいのですね。でも、そんなに心配しなくても大丈夫だと思いますよ」


 どうやら力を使いすぎても死んだりするわけじゃなく、単に(しばら)く力が使えなくなるだけらしい。念のため金剛丸にも聞いてみたが、同じ返事が返ってきたので間違いないだろう。


「そういえば、金剛丸は食事はいいのか?」


「ワシは里で食べておるからの」


 箱の中には鬼の里があって、他の鬼たちも一緒に住んでいるらしい。この小さな箱の中が一体どうなっているのか見てみたいが、どうやら人間はどうやっても入ることはできないらしい。


「残念だ。鬼の里を見てみたかった」


「死んだ後で見に来ればよい。それよりなワシに考えがあるのだが」


 ちょうど出来上がったらしく、霞と雪さんが料理を運んできた。美味そうなタラコパスタにお吸い物という組み合わせだった。


 パスタは出来合いのソースではなく、バターと醤油(しょうゆ)でタラコを丁寧に炒めてあって香ばしく、食欲をそそる。鯛あらのお吸い物のほうも最初は違和感を感じたが、これがまた和風のパスタによく合うのだ。


 霞は簡単に作れるものだと言っているが、とてもそうは思えない贅沢な昼食になった。


 料理を楽しみながら金剛丸の考えを聞く。それはわざと隙を見せて奴らを誘い出し、小鬼姿で都さんと接触してはどうかというものだった。


「小鬼の時は弱いんだよな? 大丈夫なのか?」


「問題なかろう。奴らごときが、ワシの隠形を見破れるはずがないからの」


 ぼんやりと向こうが準備を整えるのを待つよりは、こちらから動いて誘ってみるのも一つの手だろう。だが、うまく乗ってくれるのだろうか。


「霞と雪さんは、どうおもう?」


「いいと思うよ。じっと待ってるより面白そうだし」


「私も良いと思います。他にできることもなさそうですし」


 こちらに金剛丸が居ると分かっている以上、戦力が揃うまでは遠巻きに監視はしても直接襲ってくるとは考えにくい。作戦を実行するなら今しかないだろう。


「やるなら早い方がよさそうだな。明日にでも出かけてみるか」

2万ポイントを目指して頑張ります


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人類最強の暗殺者と史上最弱の勇者
今までの作品とは雰囲気が違いますが、楽しんでいただければなあと思います。



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