第25話 お土産
何もなければ明後日位からは、投稿ペース上げて行けるかと思います。
ショッピングモールの中はやはり観光客が多く、お土産物を求める客がそこかしこで大量の荷物を抱えている。
「なあ、雪さんは欲しいものはないのか?」
「私ですか? うーん」
霞のお土産品を買うばかりで雪さんは自分のお土産物を買おうとはしない。
「遠慮する必要はないからな」
「はい。何か欲しいものがあれば言いますね」
それからも特に何を欲しがるわけでもなく、霞のお土産だけが増えてゆく。
人気のお土産店で順番待ちをしていた時、雪さんが隣のアクセサリーショップのショウウィンドウをじっと見つめているのに気付いた。視線の先にはホワイトゴールドのネックレスがある。
「それが欲しいのか?」
「いえっ、あの……、はい」
「よし、買っていこうか」
お土産の列を離れてアクセサリーショップに入る。意外と人気のある店らしく若いカップルが何組か商品を見ていた。
店員はちらりと俺たちに目をやったが、特に近いづいてくる様子はない。どうやらこちらから声をかけるまでは話しかけず、ゆっくり選んでくれという方針のようだ。
「結構種類があるな。どれにする?」
「小太郎様が選んでくださいませんか?」
こういうものを俺が選んでも良いものなのかと聞き返すが、「是非、選んでください」と言われてしまっては断るわけにもいかない。
並んでいるアクセサリーを真剣に見る。ぼんやり見ていた時には分からなかったが、本当にいろんなデザインのものが並んでいる。共通しているのはどれもデザインセンスが優れているということだ。
「やっぱりこれだな」
俺は店員さんを呼んで選んだネックレスを取り出してもらう。ホワイトゴールドで丁寧に作られた雪の結晶に、小さなダイヤモンドがちりばめられたペンダントトップが特徴だ。
店員さんから品物を受け取った雪さんは鏡をみながらつぶやく。
「どうでしょうか?」
「よく似合ってるよ」
俺の言葉を後押しするように店員さんが続く。
「ええ、とってもお似合いになると思いますよ。センスのいい彼氏さんでうらやましいです」
雪さんは慣れていないアクセサリーに少し照れているようにも見えるが、ものは気に入ってくれたようだった。
「じゃあ、これにします」
そのまま身に着けて帰りたいというので、雪さんの後ろに回って金具を止める。雪さんの白いうなじに少しドキっする。本当に透き通るような綺麗な肌だ。
「高価なものをありがとうございました。宝物にしますね」
雪さんはそういうが、霞のお土産リクエストもトータルでは大して金額は変わらない。一つのものか沢山かうか、食べ物を買うかそうでないか、なかなか対照的な二人だ。
上機嫌な雪さんと残りのお土産を買い集めていく。数の限られている限定品でも「完売しました」と断られる事が無いのは、さすがは座敷わらしの幸運といったところか。
お土産を買い終えるころには、食事の約束まであまり時間がなくなっていた。
俺と雪さんは大量のお土産を宅急便で部屋に送ると、約束の店までタクシーで向かうことにしたのだった。
――――――
建築家と雑談をしながら食事を楽しむ。地元のブランド牛を使っているという鉄板焼きは、シェフが目の前で料理をしてくれるという趣向だ。
料理を堪能した後に、建築家がもう少し時間はあるかと聞いてきた。
「山の頂上にある展望台から見える夜景が素晴らしいんですよ。この街に来たなら絶対に見逃せません」
そういって建築家は俺と雪さんを、車で展望台へと連れて行ってくれた。展望台から見える風景は、港にあるライトアップされたシンボルタワーや、街の灯火と海の暗さの対比が素晴らしい。
名残惜しいがホテルに戻る時間も近づいていたので切り上げる。今度は霞も連れてきてやりたいところだ。
感動したのは雪さんも同じだったようで、車に戻るまでにも「綺麗でしたね」と何度も言っている。
ホテルに戻るため山を下りる道路を走っているときに、建築家が思い出したように話す。
「そういえば、このあたりにはちょっと面白い話がありましてね」
「へえ、どんな話なんですか?」
俺には恐らくあれの話だろうなあという予感はあるのだが一応念のために聞いてみる。
「実はね、この辺の道路を夜間に走っていると車と並走してくる老婆の姿をみたって怪談なんですけどね……」
建築家の話が続くなか、後部座席で並んで座って居る雪さんが「そこのお婆さんの事ですよね?」と俺にささやくように言う。俺は雪さんに頷いて見せる。この話は間違いなく窓の外を走っている婆さんの事に違いない。
これがターボババアとの初めての遭遇だった。
港町篇はとりあえずここまでになります。
次回から本拠地に舞台を戻して、また三人での話になります。
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