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第17話 つまづき

朝と夕方を目安に更新していきます。

 合同会社モノノケの新事業であるリゾート開発だが、開始早々だというのに頓挫しかかっていた。


「まさか土地を売ってくれないとはなあ……」


「でも、怒る気持ちはわかるよ」


 霞の言う通り住人たちが怒る気持ちはわかる。毎年賃料を払うという賃貸契約になっていて、住人たちもかなり期待していたらしい。結果として廃墟だけが残され、賃料も入らずじまいというわけだ。怒るのも無理はない。


「とりあえず現地へ行ってみるか」


 新幹線を降りた後レンタカーを借りて現地へと向かう。高速道路もないせいで一般道をのろのろと現地に向かう。


 一時間ほども走ったというのに目的地まではまだまだ遠い。おそらくまだ一時間以上はかかるだろう。


「雪さんは、こんな山奥からどうやって俺たちの所までやってきたんだ?」


「荷物を運ぶトラックが村まで来ているのは知っていたので、こっそりと荷台に忍び込んで……」


 隣でスマートフォンをいじり続けている霞もそうだが、意外と妖怪たちも文明に頼って生きているみたいだ。大自然の前に無力なのは人間も妖怪も大して違いはないのかもしれない。


 目的の集落への分かれ道を曲がってしばらく行くと、さっきまでスマートフォンをいじっておとなしくしていた霞が騒ぎ始めた。


「小太郎! ここ電波がないよ!! もう駄目だよ。いますぐおうちへ帰ろう?」


「落ち着け霞、電波が届かなくても死なないから」


「人間は死なないかもしれないけど、座敷わらしは死ぬのー!」


「死なねえよ!」


 暫く泊めてくれることになっている寺院について、車を降りた後もスマートフォンのアンテナが立つことはなかった。


 俺は諦めてすぐに電源を切ったが、霞は諦めがが悪くあっちこっちへと携帯を向けては接続を試みている。


「ネット地図で航空写真をみて知ってはいたが、本当に何もない村だな」


 山の斜面に棚田があり、隙間を縫うように数十軒の家がある。そんな日本の原風景のような景観の中、例の廃墟だけが異質な雰囲気を放っている。


「何十年もこの景色を見せられたら、そりゃ開発話に反発もするな……」


「そうだねえ、これはヒドイよ!」


 廃墟マニアの間ではそのギャップが良いなどと話題になっているそうだが、俺にはそうは思えない。廃墟マニアのフォロワーがいるという霞も俺と同意見のようだ。


「久世さんのご一行ですね? ようこそいらっしゃいました」


 寺の住職に案内されて中へと通される。通されたのはあまり広くはないが、丁寧に手入れされた清潔な和室だった。


「続きで二部屋ございます。女性二人は奥の間をお使いくださいませ」


 着替えなどの入ったバッグをおろす間もなく、住職はさっさと立ち去ってしまった。言葉は丁寧だがあまり歓迎されていないのだろう。あの廃墟の惨状をみれば納得だが。


「なあ霞、あの廃墟見てどうしたいと思った?」


「全部壊して、元に戻したいよ」


「私も同じです。コンクリートの塊はこの里には似合いません」


 前の開発の時は巨大リゾートホテルを作ろうとしていたようだが、この風景には全くそぐわないし、景気が傾かなくても失敗していたのは明白だ。


 この土地を観光地化するんだったら、なおさらこの土地にしかないものをアピールしていくべきだろう。前から考えていたプランだが現地をみると、なおさらこれしかないと思えた。


「――と、いうわけだ。この開発プランどう思う?」


「素晴らしいと思います!」


「すごくいいよ! さすが小太郎はいいこだねえ」


 霞はまた俺を子ども扱いにして頭を撫でてくる。俺は霞を引きはがすと雪さんにお願いする。


「雪さんには住民の説得をお願いしたい。この土地に対する思いを語ればきっと通じるはずだ」


「私にできるでしょうか?」


 俺は雪さんに大丈夫だと太鼓判を押す。それを肯定するように霞もうんうんと頷いている。


 座敷童の幸運などなくても、俺のところまであの廃墟のことを相談しにきた雪さんの気持ちはきっと住人の心を動かすはずだ。

ローファンタジージャンルにて、日間3位に入りました!!

ブクマと評価をしてくださった皆様のおかげです!! ありがとうございます!!


十万字迄はなんとか一日二回更新を維持していきたいと思います。


いつまで居続けられるかはわかりませんが、

もしよろしければまだの方は、ブクマや評価などで応援して頂けれと思います。

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人類最強の暗殺者と史上最弱の勇者
今までの作品とは雰囲気が違いますが、楽しんでいただければなあと思います。



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