第16話 新事業
朝と夕方を目安に更新していきます。
6/23 17:44 タイトル変更しました。(準備開始→新事業)
「霞の知っている範囲で鳳来の事を教えてもらえないか?」
「うーん、知ってる事って言われてもねえ……。ずっと閉じ込められてたから……」
霞が覚えていた事をベースに、ネットなども活用して調べていく。より正確な情報を得るためには役所なども回る必要があるが、現段階ではそこまでする必要はないだろう。
表向きは江戸の昔から名字帯刀を許され、豪農として権勢を誇っていた鳳来家。そのころに貯めた資金を元に近代化の中で事業を興し、戦後復興で躍進したゼネコンを中心として各種事業を行っている。ゼネコンとしては中堅よりちょっと下といったところだ。
加えて、最近になって手抜き工事が何件も発覚して、その補償関係の訴訟がいくつか起こされている。はっきりいって経営状態は悪いと言える。
「表の部分は何とかなりそうなだが……」
もちろん今の俺が動かせる金額ではどうにもならない。
裏の顔は大輔さんや霞、氷山さんの証言からの想像になる。今でも術者などを使っているのかどうかは一切不明だが、相当な悪事を働いているのは間違いない。
問題になるとしたらこちらの方だろうな。今のところ何の対策もできないが……。あといくつか確認すればどうするべきか決められるはずだ。
「氷山さん、一つ疑問なんだが霞を追跡するような方法はあるのか?」
霞が「なんで私にきかないのさ?」と抗議する。俺は聞くだけ無駄だと思ったからだ。と心の中で返事を返して黙殺する。
「どうでしょう? 優れた術者なら可能かも知れませんが時間がかかるでしょうね」
氷山さん自身も詳しくはないらしいのだが、複雑な手順の儀式が必要で、月の満ち欠けなども条件になるらしい。ならば当面気にする必要はないだろう。
「じゃあどちらかというと、鳳来本人や術者が作るだろう似顔絵の方が問題か……」
「うん? 似顔絵とか作れないと思うよ。せいぜい何歳位の娘とかいうくらいだろうね」
「どういうことだ?」
「最初捕まった時以来、誰にも姿を見られた事がないからね」
何を言っているんだろう。霞は前の家の大家さんや大輔さんにも普通に見えるし、宅配便のお兄さんたちとも雑談したりもしている。
「腹を減らして倒れてた時から普通に見えてただろう?」
「小太郎だけだとおもうよ?」
どういうことだ。俺はあの日の事を思い出す。
霞を助ける人がいなかったのは、傍観者効果などではなく見えてなかったからなのか。
レストランではどうだ。食器はトレーからセルフで取り出す方式だった。水は俺がグラスに汲んだし、注文もメニューが分からない霞に代わって俺が伝えて……。まさか店員には俺が一人でやってきたよう見えていたのだろうか。
「じゃあ、いつから誰にでも見えるようになったんだ?」
「たぶんね、小太郎が住んでもいいよって言ってくれた時からだよ」
いったいどういう理屈なのだろうか。いや、考えるのはよそう。本当はどうなのかなんて誰にも分らない事だし、今重要なのは霞が似顔絵などで特定されることはないという点のはずだ。
「すまん、話が脱線した……。つまり、そう簡単に俺たちの事を特定できないということでいいんだな?」
「うん、そうだね」
「そうだと思います」
しかし、それでも大輔さんには特定された。「女の勘よ」と言い張る大輔さんから、手配の内容を詳しく聞きだしてみた。
――最近やたらとツイてる男か女、もしかしたら若い和服を来た娘を連れているかもしれない。
なるほど確かに宝くじも当てたし、商店街なんかの福引も当てまくっていた。それを知っている大輔さんなら、俺の事かもしれない思うのは当たり前だ。
まとめると状況としては、圧倒的に俺たちの方が有利な状況だと言っていいだろう。こちらから仕掛ける必要はない。まだまだ準備をする時間はあるはずだ。
「新事業としてリゾート開発というのもいいかもしれないな。ちょうど開発途中で放棄されてる廃墟もあることだし」
ローファンタジージャンルにて、日間3位に入りました!!
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