表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

作者: 由雅憐

思いつきの、とても短い話です。

 春、彼は彼女に出会った。


 散り際の桜を見て、嬉しそうに笑っていた。


「人の命だってそう。散り際の炎が一番、儚くて美しいもの」


 彼にはそう言って微笑む彼女が一番儚げに見えた。


 だから。


 彼は彼女の幸せを願った。




 花が散って、夏。

 彼女は来ない。

 でも、彼は彼女を忘れなかった。

 夜空から一枚の炎が舞い降りて、散った。




 炎が消えて、秋。

 だんだん涼しくなってきた。

 彼女は来ない。

 それでも彼は、柔らかな日差しに笑いかける。




 葉が散って冬。

 焚き火を囲んで暖をとる人々がいた。

 でも彼女はいない。

 彼は少しだけ、寂しそうに見えた。





 季節がめぐる。

 今年も春が来た。相変わらず桜は隆昌(りゅうしょう)に咲き誇っていた。



 どこかで低く鐘が鳴っている。

 彼は眩しげに目を開け、音をたどる。




 彼女が、いた。




 とても幸せそうな笑顔で。隣にいる男と手を繋いでいた。

 真っ白な服に身を包んで、桜色に頬を染めて。

 青空に、白いブーケが舞っていた。


 …それでも彼は微笑む。

 彼女の笑みは、もう儚くはなかったから。


「桜って本当に綺麗だよね」


 彼女の声が聴こえた気がして。



 彼は少しだけ頬を染めると、フワリ、と彼女の肩に舞い降りた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ