過去(健編)
今、目の前で微笑んでいる彼女、加那は死んでいる。
やっぱり成仏出来なかったのか。出来るわけないよな。あんな死にかたでさ。
彼女に俺だと悟られたが、加那は死んでいると悟らせる事もできたはずだ。
出来れば、バレたくなかった。記憶は、過去は思い出して欲しくなかった。
本当は、自分が死んでいるという事だけ教えて、成仏させたかった。
あの日、彼女は死んだ。決して美しい死だとは言えない死。
その日、俺と加那は、遊園地にいた。
俺が告って、俺が誘った事だ。加那の家庭事情も知っていたし、苦しんでいる事も知っていた。
遊んで少しでも楽になればという気持ちもあったし、純粋に好きだったからというのもあった。
ところが俺は、彼女を苦しめる元凶だった。
成績で一位を取らなければ怒られる。というか、殴られる彼女には俺という障害物があった。
常に一位を取り続ける俺を、彼女がいくら頑張っても越えることはない。
つまり勉強は嫌いだったが、効率的に勉強する俺を、親に言われてがむしゃらに勉強する彼女が越えるなんてことはないのだ。
そして、ある日彼女は俺に勉強方を教えて欲しいと言った。
付き合ってくれるならと俺は返答した。これが、正しいことだとは思わなかったが、彼女は了承した。
そして、遊園地へ誘った。
勿論、彼女は断らなかった。ただし、俺は弱みを握って彼女を思い通りにするのは望んではいなかった。
付き合ってくれるならと言ったのは、口から出ただけなので、後日に撤回している。それでも何故か彼女は付き合うと言った。
割と普通に楽しんで、彼女とは色々した。(色々の中身はあまり言いたくない。)
そして、出口を出たところで加那の母に見られた。
すごい形相で近寄って来ると加那を連れ帰ろうと手を引っ張った。
「加那。何してるの」
「ごめんなさい。ごめんなさい。」
平謝りする彼女に俺は無性に腹が立った。しかし、彼女の母にはもっと腹が立った。
「加那はもう限界だ。やめろ。」
俺は、命令口調ではあったが加那を弁護した。
「何あんた。うちの子は賢いのよ。そんなあんたみたいに怠けている不良と一緒にして欲しくない。」
金切り声をあげる加那の親に俺は言った。
「この場で最もバカなのはお前だ。今すぐやめろ。それともでるとこでるか?」
結局、俺の努力も虚しく加那は連れて行かれた。
そのにの夕暮れ、犬が吠えているのを聞き嫌な予感と共に犬の鳴き声の元へ行くとトラックに轢かれた加奈がいた。
その姿は、無惨そのものであり、あの可愛らしい姿は跡形も無かった。そこは、遊園地の前の道路だった。
その後は、警察も動いたらしいが行方不明とされ、丁度潰れかけだった遊園地は行くと子供が帰って来なくなる遊園地とされ廃墟となった。
その裏では、大きな金と多くの人が動いたらしい。
それから、俺は大人を信用しなくなった。