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廃墟の遊園地と少女  作者: 門林はみめ
第1章 全ての始まり編
2/8

捕まる

 小さい頃、母とよくここに来たな。

 日曜日に母が家にいると連れて行けと困る母に駄々を捏ねたっけ。多分5、6歳だったかな。

 無邪気に遊んでいたんだろう。今思うと悪い事をした気がする。


 小学校に上がると、低学年は公園で走り回るのが中心になって、ゲームをする時期が少しあって、中学受験が近づけば塾ばかり通っていたな。

 休みの日も勉強、勉強と言われて家からほとんど出なかった。

 結局、一度も行かなかったのだろうか。とりあえず遊んだ記憶は無い。

 そもそも、高校に入って彼氏と来るまでは遊園地の存在ごと忘れていたのかもしれない。


 高校は健君とデートしたな。

 あのベンチでクレープ食べて、あっちのジェットコースターに乗って、裏路地みたいなところでこっそりキスして。それでニコッと爽やかに笑う健君がかっこよくて。

 あと、それから。それから?


 ガシャーン


 私は、イヤホン越しでも聞こえるような大きな音で、急に思い出から解放された。もう少し、浸っていたかった。

 でも、いつまでそんなことしてられない。もう直ぐで大学受験だ。家に帰って勉強しなきゃ。

 とりあえず、音の正体を確かめてから帰ろうかな。何か気になるし。おばけだといいな。


 今まで、時間は気にしていなかったけれど、もう4時は回っているかもしれない。黒い空が少し光を帯びて来た。

 そんなことを考えながら少し歩くと、ジェットコースターの周りを男女5人くらいがたむろしていた。


 幽霊でも探しに来たのかな。私は、たくさん通って今まで会ったことないけど。

 でも、どうやって、入ったのだろう。あの高い柵を越えるのは大変だろうし。


 淡いブルーのジェットコースターの深い凹みを見て私は悟った。さっきの音はジェットコースターを叩いた音だ。


「ねえ、君たち。」


 気がつくと私は、彼らに声をかけていた。

 何を思ったのかは自分でも分からない。衝動というやつかもしれない。


 ビクッとして彼らは、私に気づいた。


「何だよ。ヒイッ。」


 機嫌が悪そうにゆっくりと振り向いたリーダー格の男は、顔を青くして走り出した。

 他の人もそれに続く。


 私に驚いたのだろうか。それとも後ろに珍しく警備員でもいたのだろうか。捕まる(・・・)

 最悪の結末が脳に浮かんだ。鼓動が速くなって、呼吸が乱れる。うまく考えられたのはそこまでだった。そのあとは、頭が真っ白になった。

 私はそれと出口へと走り出していた。


 ただ、無我夢中で。

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