思い返せば
私が最後にここを訪れてから何度目の夏だろうか。
かつては子供が走り回り、カップルが手を繋ぎ、親子が歩いた。たくさんの笑顔で溢れていた夢の世界は暑い中での何回冷たい事件を思い返すのだろうか。
今や、多くの店が並んでいた大通りは整備がされず、かつてピンク色の道だったアスファルト上の塗装は剥がれ無機質な黒色がまばらに露出していてその脇には多くの長い草が生えている。お土産屋さんの壁には落書きがあり(書いた当本人たちはアートだと言う)ハンバーガーショップのガラスは割れて店内に散乱していた。
当然子供達の転げるような笑い声など聞こえるはずもなく、吐き気がするほど静かだった。
奥に見えるカラフルな城は過去の威厳を保ったままだったが、やはり劣化は避けられてはいないらしい。
子供達の憧れの世界はもう、幽霊が出ると噂のホラースポットでしかない。この、無理にでも明るく見せた空間が逆に夜では不気味に映るのだろう。遊園地の変わり果てた姿は痛々しかった。
この遊園地では一つの事故があった。残念ながら何年前だったか忘れてしまったが、今日のように暑かったことは記憶している。
「はぁ」
私は、ため息をついてからイヤホンをして、そこから聞こえるバンドブーム時の曲を聴き流しながらあの頃を思い返した。