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とあるゲームの販促活動、その結果のひとつ

作者: 猫の人

 VRMMO-RPGは発売当初、多くのゲーマーの心を掴んだ。

 しかしVRMMO-PRGが乱立するに従い、「ゲームなんてどれも一緒」という考えが広まることになる。


 焦ったゲーム運営会社はその半数が自滅し、残る半数がしのぎを削るようになるのだがまだ数は多い。

 そこで運営が考えたのが「実際のゲームプレイを見てもらう」、その為のプロモ製作だった。

 ただし作るのは運営ではない。プレイヤーだ。

 運営は専用の動画投稿サイトを作成し、プレイヤーに賞金目当ての10分限定「スーパープレイ動画」「ネタプレイ動画」を投稿させることにしたのだ。


 この考えは大成功する。

 ソロプレイ専用、パーティ専用、クラン(プレイヤーがゲーム内で作る組織のこと)専用とすみ分けることであらゆるプレイヤーに挑戦権を与えた。

 人気上位の動画を投稿したプレイヤーには課金アイテムをはじめ、過去のイベントでしか手に入らない特殊アイテム、ある程度以上レアリティの高い素材アイテムなどが配布されることになった。

 それ目当てでプレイヤーが頑張ればゲームは活性化するし、外部に動画を公開することでゲームに興味を持ってもらう販促活動となる。





――特に優秀だった作品は伝説となり、多くのゲームで引用され(パクられ)ることになるのだが、発禁処分となった別の意味で伝説の話をしよう――





 それは、とあるクランでの会話が始まりだった。


「なー新人、何かインパクトのあるネタって無い?」

「いや、そんなモンあればもうやってますよ」

「いやいや、お前この間までソロだったじゃん。人数使ってやるネタは無理だろ」

「そうですけどねー。ソロネタを大人数でやるだけってのも芸がないと思いません? 方向性を統一しつつ、ソロではできないお遊びなら一個ありますけど。ギャグですよ、ギャグ」

「面白そうじゃん。どんなん?」

「まあ、ギャグっていうか、パロなんですけどね、――――で、――――ってわけです。ただ、ちょっとネタが少ないんで人数分やるなら他の人からもアイディアをもらわないとダメなんだけど」

「んー、確かにそれなら30人まかなうのは厳しいなー。でもさー、――――」

「戦隊ものならありですね。でもそれだと絞っちゃったほうがよくありません?」

「そこは上手くやろうよー」

「それより問題は参加者集めじゃねーですか? ぶっちゃけ、女性陣は逃げるでしょ」

「それをなんとかすっからリーダーなんだよ」

「んー。じゃーそんでいーですよー。俺もちゃんとやるんで」

「おう。じゃ、装備の用意が出来たら呼ぶわ」

「うぃーす」


 馬鹿が馬鹿な会話をして別れる。

 そのまま生産系のクランに装備の発注をかける男。

 ネタを出した男は「どーなっかねー」と無責任に呟いた。



 その数日後。

 とあるクランがとあるダンジョンで最強のボスを倒す動画を投稿する。

 最強のボスといっても、その程度ならほとんどの討伐系クランならできることだ。

 しかし、そいつらは、馬鹿だった。





「わが名はゼンラー・ゾンバルト! 服を裁つ剣なり!!」


 ボス戦は、その言葉から始まった。

 刀を持った銀髪の男がボスの前にいる敵に斬りかかる。ボスの取り巻きが一刀両断された。

 他にも太陽神「裸・無ー」が光と炎の魔法で雑魚を駆逐する。

 隣では「裸夢ちゃん」が「おしおき○っちゃー」と叫びながら雷魔法を使う。

 雑魚の数が減り、最初にボスへ突貫したのは「キン○マンゼンラ」。シマウマ模様のマスクをかぶったガチムキマッチョ。パンチでボスに殴りかかる。

 他にも「ゼンラーマン」が「白黒脱がすぜ!」とやはり拳で戦う。

 ボスが距離をとれば黒くてデカい馬に乗った「裸王」が雑魚を踏み散して駆けつけ、「我が生涯に、一枚の服無し!」と殴り飛ばす。

 「○面ライダー鎧無」が長ドスで斬りかかるが、他は格闘とバランスが悪い。


 カメラが変わり、今度は「全裸戦隊カクサンジャー」が5人で共鳴魔法をぶち込めば、「邪神ニャル裸トホテプ」はなんだかよく分からない黒いビームを撃つ。

 効率など無視した戦いが、そこにあった。



 全裸の男が刀を振るう。

 股間にモザイク(薄消し)の男が光と魔法を使う。

 緑の髪の全裸娘が雷を落とせば、ガチムキマッチョと細マッチョ、巨漢といったマスクで、兜で顔を隠した3人の全裸が殴りかかる。鎧っぽい肩当をした虫っぽい仮面の長ドス使いも肩当以外を身に着けていない。

 同じ形だけど色違いのマスクを装備した共鳴魔法を使う5人組だって基本はマスクと同じ色の全身ペイントで全裸だ。異形の神だって全身黒ペイントだけど服を着ているわけではない。


 一応VRゲームだけに肝心な部分が見えるわけではない。

 だが、パッと見全裸集団による最強ボス討伐。

 見た人は思う。

 「馬鹿だ。馬鹿がいる」と。





 女性プレイヤーが少数だが混じっていたことでアクセス数・再生回数はかなり伸びたが結局見得ないしエロさよりもバカさが目立つ為に評価は低め。

 最終的に運営により削除され、所属クランは注意コメントをいただくことになった。



 ただし、掲示板に載せられた首謀者(リーダー)のコメントが


「あいしゃるびりたーん」


だった為、反省はしてないようだ。


 きっといつか、馬鹿は全裸をやってやるのだろう。

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― 新着の感想 ―
[一言] くだらない事にチャレンジする姿がいいですね。 馬鹿と天才、紙一重な感じがしていいですね。 (馬鹿と変態か)
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