優しいあなた。その理由。
短編に初挑戦。
上手く纏められなかった感がすごいです。
文才、文章力皆無なので見苦しいものとなっております。あらかじめご了承ください。
情けないことに、何もない場所で転んでしまった僕。
校門を通り過ぎて、少し進んだところで盛大に転んでしまった。
クスクスと、笑う声が耳に入る。恥ずかしくてたまらなかった。嘲笑されていることが、たまらなく悔しかった。
「大丈夫?」
スッ、と。
僕の目の前に、手が差し伸べられた。
ゆっくりと、顔を上げる。
…言葉が、出なかった。
その美しさに。その、優雅さに。見惚れてしまう。目が離せなくなる。鼓動が早まる。
「君、大丈夫かい? 何処か、痛いところでも?」
「あ…だ、大丈夫です…」
必死に振り絞った僕の声は、震えていた。
心配そうにこちらを見つめるこの人の、差し伸べられた手を取って立ち上がる。
優しく微笑むこの人の、差し伸べられた手に。
その、優しさに。
僕は、救われた。
些細なことかも知れない。だけど、周りの人が僕を嘲笑する中で躊躇いなく手を差し伸べてくれた、この人に。
僕は、紛れもなく。確かに、救われたのだ。
「君は、いつも私と居て飽きないのかい?」
突然、隣を歩くあの人に問いかけられた。
「飽きませんよ。とても、とても楽しいです」
僕の言葉に、あの人は嬉しそうに笑んだ。
そう。僕はあの人に救われて以来、ずっとあの人と行動を共にしていた。
少しでも、恩返しがしたくて。
そんなふうに、あの人と行動を共にしてるうちに気付いたことがある。
あの人は、困っている人が居たら必ず手を貸す。相談に乗る。力になろうとするのだ。
それも、自分の身を省みずに。
ずっと疑問に思っていた。何故、そこまで人に優しくなれるのか。
どうして、自分を犠牲にしてまで誰かの為に動くのか。
「どうして、あなたは…そこまで、人に優しく出来るんですか?」
失礼を承知で、唐突すぎるのも承知で疑問を口にした。
どうしても、知りたかったから。
「私が誰かに優しくする事は自分の価値確認、存在確認でしかないんだよ。優しくすれば、喜んでくれる。笑顔を向けてくれる。私にも、まだ価値があるんだと安心出来る。だから、優しくするんだよ」
返ってきた言葉は、衝撃的なものだった。
ああ、そうか。そうなのか。
「…私のこと。嫌いになってくれて、構わないよ」
あの人が、優しい理由。
それは、自己価値の確認。自分が必要とされているという、喜びを得る為。
すべては、自分の為なのだ。
―――だけど。
僕は、どうしても。
あの人のことを、嫌いになんてなれなかった。
たとえ自己満足の為の行為だったとしても、あの人の行動に救われたのは事実なんだ。
僕はその恩返しがしたい。
だから。
「嫌いになんて、なれません。僕は、あなたの側に居ます。あなたに恩を返します」
笑顔で、僕はあの人にそう告げた。
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