見てればわかるよ
「…元気なことで」
「うるさいねー」
「ねぇ、冷静に物事を見てみましょう、とか言われたことない?」
ふと、フィリアが思いついたことを2人へ尋ねる。
「「なっ、なぜわかる!?」」
「うん…。見てれば…」
同時に同じ反応を見せた2人へライラがポツリと心の声を漏らす。
「図星だったのか…。はぁ…」
元からなかったやる気をさらになくすフィリア。
「あーあ」
「バカバカしいよ、こんなことやってられない。どうせ、末っ子でしょ?」
「嫌われ者とか?」
「それはないでしょ。兄姉の方が目立つんだね」
「「う」」
フィリアとライラのすごく的を射た意見に2人は言葉に詰まる。
「姫君がた!コイツラを殺っちゃってください!!」
マデュラの他力本願すぎる叫ぶに、フィリアは頭を抱える。
「フィリア、しっかり!」
「うー、嫌だ嫌だ嫌だ――――――!!こんなのに、一回だまし討ちとはいえ、殺されかけた自分が嫌だ―――――!!」
「…フィリア、ドンマイ!!」
「わ、わかってるわ!そっちの金髪は…竜の子ね。ガガイが殺して。銀髪のほうは、私に楯突いたことを後悔させてやるんだから!!」
「わ、わかったよ、ナナイ!僕頑張る!!」
ギュとこぶしを握るとガガイは一生懸命に呪文を唱え出す。
「…なんか、萌え~」
「呑気なこと言ってないで!アレが唱えてる呪文で、ライラ死んじゃうかもしれないんだからね!?昏国は…えぐい魔法作るの好きだから」
「へ?うん、がんばるね!!」
「そうじゃなくて!今すぐ、あれが唱える呪文を止めないと…」
ホワホワしているライラに忠告をしようとしたフィリアへナナイが魔法を放つ。
「!?」
「あら、避けちゃったの?残念」
「避けるからね、普通は。…それに、これ禁じられた暗黒魔法とかいう廚二な名前が付いた魔法でしょ?イタイよね」
彼女が放った魔法は壁に当たり、黒い光を放つ。
「い、イタイ!?し、失礼なやつね!!これでも食らいなさい!!」
次にナナイが放った魔法は鈍い鉛の光を放ちフィリアの前ではじけ飛ぶ。
「…危ないでしょうが。こんな物騒な魔法を使って」
とっさにフィリアが盾にした床板には釘が大量に突き刺さっている。
「どうして避けられるのよ!?こうなったら!!」
得意魔法の2つをあっさりと避けられたナナイは癇癪を起して床を叩き、剣を召喚する。
現れたのは、デッバリが沢山付いた黒色の剣だ。
「待って!?その、釘バットみたいなのが、武器なの!?痛いじゃん!!」
「釘バットじゃないわよ!!本当に失礼な奴!!…でも、私の攻撃の後でも、その口を開くことができるかしら?」
「……あ、フラグ立てちゃったよ、この子」
「関係ないでしょ!!」
決め台詞の後につっぶ焼かれたフィリアの言葉へナナイは叫ぶ。
「シリアスが台無しだね!フフ…シルヴァームーン、私を手伝って」
フィリアも負けじと長剣型のシルヴァームーンを召喚する。
「えーと、ガガイ君だよね?なんか、かわいいけど、ごめんね~」
フィリアに忠告されたにもかかわらず呑気なライラはガガイへグーパンを正面から放つ。
「クハハハ!!僕だって、強いんです!!」
ガガイはライラのグーパンを手で軽くつかむと、詠唱し終わった呪文を放つ。
「しまった!」
「マヌケさん、サヨウナラ!!混血の忌々しい血を滅ぼせ!!《ミクシードブラッド・デストリィ》」
放たれた魔法はライラに直撃した。
「っ!?ライラ!!あほ!馬鹿!!ドジ、まぬけ、ど変態!!」
「最後の関係ないわよね!?仮にも友達へ叫ぶ言葉なのかしら!?でも、よそ見なんて、お馬鹿なのは、どちらですか!!」
ナナイと激しい攻防を繰り広げていたフィリアはライラに魔法が直撃したことで、一瞬そちらへ気を取られた。
「バカはそっち!」
決め手となるはずの攻撃を防がれたナナイは、焦るどころか余裕の笑みを見せる。
「フフフ!!神様がいるからって強気になっちゃって!!生意気な子にはお仕置きよ!!」
「フェカのこと…?でも、私の体とはあんまり関係ないはずだよ?」
「アハハハハ!!食らえ、我が怒りを!神なんて敬うか《ノット・レバーゴッド》!!」
赤黒い炎が直撃したフィリアは、口から流れる血を拭いナナイを冷たい瞳で見つめる。
「バカね…フェカを消して不利なのは、そっちの方なのに」
「な、何よ!?っていうか、どうして生きてるの!?そっちの混血は死んだのに!!もっと、取り乱しなさいよ!友達なんじゃないの!?」
「さっきから…友達友達連呼して…私はね、確かに、友愛っていう意味の名前だよ?だけどさ、おかしいよね…私は、友達なんて、愛せないし、必要ないんだから。でもね、ライラは別かなぁ~。見てて楽しいもんね。すべては、そう!それが基準!私が楽しいか、楽しくないか。私が、中心で、私の世界は回るの。自己犠牲?何それ、おいしいの?友達?それって、お金になるの?私のためになるの?ねぇ、お馬鹿な2人組。あ、っと3人か。アリガトウ、フェカを少しだけ、引き離してくれて。だって、本音は見せられないもんね。フェカに聞かれたら母様や父様にばれてしまうもの。それだけは困るの」
くすくす笑いながらフィリアは一歩退いたナナイへ近づく。
「いや、ちょっと待て!?私を勝手に殺さないでください!?」
ムクリとゾンビのごとく置きあがったライラがそれに異論を唱える。
「あれ…ライラ、生きてたんだ?あれが直撃したから死んだと思ったのに」
「勝手に殺すな―――!!フィリアのドアホ!!」
「…ごめんね?」
「謝られたって嬉しくないわ!!」
「だって、ねぇ?死じゃったほうが都合良いんだもん。そうしたらさ、友達が死んじゃって、それで悲しみのあまり魔力を暴走させてしまった可哀そうな王女様っていって、これから使う魔法のことで責められないから」
「…何を使う気なんですか?」
ニコと目が笑っていない笑顔を見せたフィリアへライラは恐々尋ねる。
「え…と。ちょっと待っててね。すぐに消すから」
「け、消す…?何を!?いや、ナナイとかガガイとかマデュラとかなんだろうけど!?消すってそっちの意味ですか!?」
「そっち?そっちも何も、消すって意味は一つしかないでしょ?なに、馬鹿なこといってるの?本当に、ライラはかわいいんだから」
「うわぁ、いつもなら言われると嬉しいけど、この状況で言われてもうれしくないわ!?」
「さぁて…私を怒らせちゃったことを、後悔しながら地獄へ落ちるといいわ。あー、でも。すぐに地獄へ落ちるのが待ち遠しくなるようなこと、してもいいんだよ?どっちがいい?」
剣をちらつかせて歩み寄ってきたフィリアへ3人は恐怖から逃れようと泡を吹いて気絶する。
さて、このフィリアをどう止めようか…とライラが悩んでいると、扉を蹴っ飛ばしてフェカが入ってきた。
「はい、しゅーりょー!!カット―!!」
「ふぅ…疲れた」
ころりと態度を変え、さっきまでの殺気が嘘のように消えたフィリアへライラはマヌケな顔をしてマヌケな声をだす。
「……え?」
「あれ、ライラには、わからなかった?全部、演技だよ?すごいでしょ?上手だったでしょ?」
「…へ?」
「ア八ハハハ!やーいやーい騙された―!」
「フィリア、色々と大丈夫?」
「ん?ああ、ダメだと思うよ?さっきのナナイの魔法は記憶消去っぽくてさー。今は何とか押さえ込んでるんだけど、ちょっと箍がはずれそー」
ライラの反応でげらげら笑い転げていたフェカが、笑いを納めて、フィリアを抱き上げる。
「フィリア、お疲れ様。さて、早く王宮に戻って治療なりなんなりするか。ライラは怪我、平気か?」
「う、うん。大丈夫だよ。…本物のフェカですか?」
「はぁ?何言ってんだぁ?頭まで行かれちまったか?」
フェカの紳士な態度に戸惑ったライラがそう尋ねると、いきなり彼はいつもの口調に戻って、彼女をからかう。
「ちょ、ひど!?女の子に失礼な…」
「ハン」
「鼻で笑わなくたっていいでしょ!?」
「ヘイヘイ」
シリアスが一瞬にして消え去るライラクオリティ。
ちょっと、ふざけてしまいました。
アハハハ。
・・・後悔はしてます。




