叩いてみたくなんない?
「何、その鏡は」
「これは…?」
フィリアが首をかしげながら、鏡を叩く。
「叩いてどうするの?」
「こういうのってさ、叩くと反応する気がしない?」
「…確かに」
実際、鏡は光りだし空中に文字を反射させる。
「間違った鏡の使い方を…ええと、何々?」
「シーファントムは、我ら赤国の手下だ!壊滅させたいのなら、第3王女一人でデセバン城まで来い…?」
ライラが、文字を読み上げると、その場に沈黙が落ちた。
「…フィリア、どうするの?」
「どうしよっか…」
「とりあえず、リランさんとかのアドバイスでも、貰いに行く?」
ライラの提案に、フィリアは肩を震わせる。
「あ、あのね、ライラ?リラン兄様が、どんなに恐ろしいか、知らないの?そんなくだらないことで、手を借りに行ったら怒られちゃうよ?政務が大変だから…」
「じゃあ、王様を手土産に…」
「そんなことできません!!…仕方ない、デセバン城へ向かうか」
さらなるライラの提案をフィリアは切り捨てる。
「危なくない?」
「ライラもついてくればいいでしょ?」
「一人でって…」
「そんなの、聞く必要ないじゃない。何かを人質にとられてるわけでもないんだから」
鼻で笑ったフィリアは、デセバン城へワープする。
デセバン城。
2人が広間へ着くと、黒髪黒眼の少年が所在なさげに立っていた。
「君たち、何しに来たんだい?ここは学生が来ていいようなところじゃないよ?」
注:2人は制服を着ています。
「…あっそ」
「あっさりとスルーしないであげて!?誰、とか反応を!!」
スルーされてしまった少年はプライドが傷つけられたような表情をする。
「…ああ、誰?」
「ワンテンポ遅いし、私が言ったこと、繰り返しただけだよね、それ!?」
「俺は…」
「そして、君もスルーしちゃうわけ!?」
「あ、待って。わかった。マドラリト・ル・レイラ・カラントロンク・アハ・ハナンさんだね?」
名乗ろうとっした少年を遮ってフィリアは、彼の名前を言う。
驚く少年。
「誰なの!?ってか、何処の人だよ!?クソ長い名前だな、オイ!?」
「ライラ、見事な3段ツッコミありがとう」
「さらに突っ込むと、なんで名前知ってんの!?」
「フフフ~」
「な、なんで…知ってるんだ!?親父でさえ、俺の名前が全部言えるないのに!」
彼が驚愕の表情を浮かべたわけは、それだった。
「うわっ、マジで!?そ、そんな可哀そうなことが…」
「…まさか、黒の国王家にそんな落とし穴があったなんて」
「な、なんでそれも知ってる…?」
「ん~、内緒」
ちょっと考えてから、うまい言い訳が浮かばなかったフィリアはフフと笑ってごまかす。
「内緒ごとはしないって約束だったよね?」
「あ…」
そういえばそんな面倒な約束もしてたっけ…というフィリアの表情にライラの頬がピクピクと動く。
「ほら、吐け~」
「……」
「あ!?お前、もしかしなくてもフィリアか!!あんときはよくも!!」
どう説明しようかフィリアが悩んでいると、マドラリト(以下省略)が叫んだ。
「あん時?」
「えっと…ゴメン、何のことかさっぱりわからない」
「お、覚えてないというのか!!」
「う、うん?ごめんね~」
謝る気がないフィリアの謝罪にマドラリトは顔を怒りで赤くする。
「いつ?なにが?ねー言って!言って!」
「あれは…緑の国の皇太子とやらに俺がぶん殴られたとき…」
「あ!あ~!!君が、突然抱き着いてきて告白かまして切れたレオにブチのめされた奴だね?懐かしー」
「うぉう!なんて大胆な!」
フィリアの言葉とライラの追撃により、マドラリトは拳を握りプルプル震えだす。
「お、お前が!!」
何やら言おうとした彼だったが。
「そんなラブコメ云々はでもいいんだよ?君は、どうしてここにいるの?」
フィリアがぶった切り、彼の怒りは広間のタペストリーをズタズタにする方向へ向かった。
「いけないんだー!モノに当たっちゃー」
「誰がその状況を、作り出したんだ!!」
「えっとー、フィリアかな?」
「どう考えてもそうだろう!!」
「うん、じゃあゴメン、さよーならー」
フィリアはいつのまにか展開させていた魔方陣で、マドラリトを広間から強制退場させた。




