庭師のニィ・ワシ
「で、シーファントムの情報提供者ってどこにいるの?」
「じゃあ、そこへ向かおうか」
「うん!」
ライラの素朴な疑問へフィリアはニコッと微笑んで歩き出す。
「歩くの!?」
「だって、そこだもん」
ライラの驚きにフィリアがさすのは王宮の庭。
「庭!?」
「庭師なんだって。だから、庭に行けば会えるよ」
「そうなんだー」
てくてく歩くこと5分。
「…ねぇフィリア」
「なに?」
「どうして、目の前に庭が見えるのに、5分も歩く羽目になるの!?」
「フフフ」
歩いても歩いてもたどり着かない庭へ異常を感じたライラが尋ねる。
「ごまかさないで!?」
「ハイハイ。王宮は防犯者除けの魔術で守られていてね?目の前にあっても、実際は遠いなんてことがよくあるんだよ」
「何その面倒な設定!」
「しょうがないじゃない」
「…ごめんなさい」
フィリアから滲み出た黒いオーラにライラはすぐ謝る。
「自分の意志は大切にしないとね?」
「何の話ですか!?」
「なんか、ライラ見てたら言いたくなった」
「そうなの?」
「そうなの。あ、ニィ・ワシさん!」
スコップ片手に背中が曲がった老人に声をかけるフィリア。
「ニィ・ワシ?あ…庭師!!」
「…間違ってはいないんだろうけど、あえて誰も言わなかったところをつついたね?」
「なんじゃ、フィリア姫か。今日はどんなようで?」
「うん?シーファントムって、知ってる?」
「ぎゃああああああああああああ!!」
フィリアの言葉に、ニィ・ワシは叫びだす。
「…うるさ」
「恐怖心煽っちゃったか―。“眠れ”」
叫び声のうるささに耳を塞いだフィリアが魔法を行使して彼を眠らせる。
「さて…と。ちょっと記憶を拝見させていただきますよ~」
彼女がニィ・ワシの額を左手の人差し指で3回叩くと、そこから青い窓のようなものが現れる。
「なにこれ!」
「フフ…。《記憶の窓》と呼ばれるものよ。魔法なんだけど、やり方はトップシークレットね。どこらへんかなぁ」
現れた窓の中に右手を突っ込むとフィリアはシーファントムに関係する記憶を探していく。
「うわぁ…なんだか、とっても暴挙な気がするよ!?」
「良いのよ、別に。いつものことだしね」
「い、いつものこと!?」
「そ。ニィ・ワシさんは、情報屋もどきだから」
「…そうなんだ」
「そうなんだよ。ん?」
フィリアは窓の中から、赤い鏡を取り出した。




