誰でもいいから止めてくれ
という訳で…。
フェカが実体化した。
「え…や、止めないよ?その、私に関係ないなら、構わないし…」
フェカを止められるであろう唯一の希望だったフィリアは、首を横に振りレオの隣へ逃げる。
「…逃げた」
「誰でもいいから止めようよ」
「無理だって。面白そうだし」
レン、セノーテ、ソフィーの3人も積極的に止めようとはしない。
「サンダーソード!!」
「…」
シベリスは雷でできた剣を振り下ろすが、フェカが手をヒラっと振ると雷はあっけなく霧散する。
「《来たれ、全ての魔獣よ!我が僕となりて、命に従え》」
フェカが面倒くさそうにつぶやくと、森に放たれていてまだ退治されていなかった魔獣が集まり、シベリスを攻撃しだす。
「…さすがにこれはまずいよ」
「だな…。仕方ない。《消滅せよ》」
流石にまずいと思ったレオが、小さく唱えると魔獣はすべて消えた。
「…これなんてチート」
「おまけに~《我が感情を糧に燃え上がるのだ!》」
シベリスの周りが燃え上がって、彼は恐怖から気絶する。
「だよねー、特待生と普通の生徒じゃ、勝負にならないってか。つまんないものを見ちゃったよ」
「…ソフィー」
ソフィーの意外な一面を知った出来事であった。
「ねぇ、フェカ…?私はね、何も言わないよ?止めなかったし。でもさ…これは、やりすぎなんじゃないかなぁって、思うんだ」
「あっそぉ?」
「…シベリス、起きなよ」
ニコニコと若干不気味にも感じるまでの笑顔を浮かべたフィリアが、フェカへ迫る傍らで、ライラは気絶したシベリスの治療を行っていた。
「ああ、女神様が…」
目を開けたシベリスは、ライラを見ると再び気絶する。
「え、どーしたのさ!?」
「良いこと教えてあげよっか?」
「何、セノーテ?」
戸惑うライラにセノーテが救いの手を差し伸べる。
「おい、俺のライラに変なこと吹き込むなよ」
「…!?」
「冗談、だけど?え、信じたの?嬉しいのー?クフフフ」
ちょっぴりどきっとしたことをフェカに見透かされたライラは、手の周りに雷をまとわせる。
「ちょ、タンマ!本気でいてほしいなら、言ってあげてもいいけど?」
「フェカ。ライラの反応が面白くて楽しいのは、わかるけど、それくらいにしておきなよ」
「いや~なんか、とまんなくてさ」
怒りマークを浮かべたフィリアに詰め寄られフェカは逃げ腰になる。
「ほっといていいのかな?…1つめはキス」
「……却下」
「じゃあね、もう1つは…平手打ち、とかどう?」
「…え」
「よし、それでいいだろ」
レオがシベリスの頬を思いっきりひっぱたく。
パァンという音が森に響いた。
「小気味いい音」
「うわっ!?」
「気分はどうだ?夢の中で女神にでも会えたか?」
飛び起きたシベリスを避けたレオは彼を見下ろして高慢に言い放つ。
「なんだかんだ言って、レオもイラついてるんだね」
「父さんがいない間にたまりまくっただろう書類を思い浮かべてしまったからな」
「…ご愁傷様です」
そんなこんなで、フェカが神様っていう衝撃の事実はサラリと流され体験実習は終了。




