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蒼国物語  作者: 松谷 真良
第10章 あのライラに春が来た!?
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フェカVSシベリス(がんばれシベリス!)

次の日。


きゃあああ―――!!


という、か弱い乙女(笑)の悲鳴が森へ響きわたりました。


「何事だぁ?」

「さぁ…?」

「おそらく、セノーテあたりの声だろう」


魔獣を狩っていた3人は、すぐさま悲鳴が聞こえたところへ向かいます。



そこで、目にした光景は…。


「ねぇ、ふざけてんの?どうして、ご飯がこんなに真っ黒になってるの!?火加減くらいちゃんと見れないの!?」


黒焦げの物体を手に持って怒っているセノーテと、怒られているソフィー。

そんな彼女に憐みの視線を向けるレンとシべリスだった。


「うん、事情を聴かなくてもよくわかる状況だね。しかしソフィーが料理できないとは…」


呆れたようなフェカとレオの視線を追加されたソフィーはプルプル震えだす。


「違うの!!急に、火が大きくなったのよ!」


ソフィーが叫んだ言葉にレオは、フェカを批難の目で見る。


「…フェカ」

「いやっ、俺じゃねぇぞ!確かに、火は操れるけど…人の飯焦がしても面白くねぇから!」

「なに、焦ってんの?まさか、フェカが…」

「ちげぇよ!!」


バシバシとライラの頭をフェカは叩き否定する。


「頭をたたくな!馬鹿になっちゃうでしょ!」

「…もう、手おくれだ」

「ひどいよ、レオ!!」


ボソリとつぶやいたレオをライラは涙目で怒る。


「ところで君、誰だい?僕の、ライラに近づくなよ」


ジトッとフェカに熱い視線を送っていたシベリスがライラの肩を抱いて、フェカから離す。


「誰って、フィリアですけどー?」

「おい」


しれっとフィリアに成りすまそうとするフェカをレオが小突く。


「違うでしょ!?」

「えー。どのへんが?俺的には、そっくりだと思うんだけど…」

「似てねぇよ」

「レオには、聞いてないしー」


バチバチと火花が散りだした2人をライラが慌てて止める。


「ま、待とう!!こんなところで喧嘩されたら堪んないって!」

「ってか、えーと、誰だ、お前」


シベリスを見てフェカは今更な質問をする。


「そっか…封印されてたから知らないのか…?」

「……違う、が」


首をひねったライラをレオはバカを見るような目で見る。


「なにさ、その視線は!」

「いや」


「お前、誰だか知らねぇけど、俺はライラと2回もキ、グォ!?」

「言わなくていいから!!シベリスって言ってね…あーそのー…まぁ、知り合い」


言いながらも顔が赤くなったライラにフェカは何があったか察する。


「ほぉ。やるところまでやっちゃった関係、と」



「違うよ!?」

「違いますよ!!」


2人は同時にフェカの言葉を否定する。


「ねぇ、レオ君。フィリアさんのようでフィリアさんじゃない、あの人は、一体誰?」

「あー、説明してやろーか?」

「お願いします」


ソフィーの問いにフェカがニッと笑い説明する。


「へぇー、王家の人って大変なのね」


ソフィーの感心したような呟き。


「よーするに、フェカはフィリアさんの体に憑りついた悪い奴だと」


全く分かっていないシベリスの感想も。


「はぁ、これだからバカは嫌だねぇ」


フェカは、そんなシベリスの感想にお手上げのポーズをして喧嘩を売る。


「なにを!」

「どこをどう曲解したらそういう結論になるんだ?」

「バカだからしょうがねぇよ、レオ」

「…イライラがたまってるんだな。わかった、俺は止めない」


フェカの怒気を感じ取りレオは、その場から一歩後ろへ下がる。


「え?いーじゃん。ライラについた悪い虫だろ?違うって?でもフィリアもそー思っただろ?」

「…フィリアと話すなら、言葉にするなよ」

「なんだよ、妬いてんのー?良かったな、フィリア」




独りで話しているようにしか見えないフェカの姿ははたから見ると不気味でした。

と、のちにライラは語る。


「なんだよ、ずっと無視して!!」

「お、やるか?」

「喧嘩っ早い奴」


レオの指摘は、ライも前に言っていた。


「やるのはいーけど、実体化しろって?えー、フィリアの体にいた時の方が魔力高いしー。そーいう問題だって。そー思うだろ、ライラ」

「えー、まーいーんじゃない?」


いきなり話を振られたライラは、適当に返事をする。


するとそれをどうとらえたのかシベリスがさらに怒って顔を赤くする。


「ライラさんが困ってるでしょ!そんなこと聞くなよ!!」

「…やっぱ実体化しよう。そうすりゃ、俺の問題だから、殺してもおっけー」


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