第3王女ってさ。
城主を縄でぐるぐる巻きにしたフィリア達は、報告をするために王宮に戻りました。
「リラン王子、任務は無事に終わりました。大雨はシルネント地方の城主が降らせていたようで理由を問うと『第3王女を呼ぶ為』と答えられましたので色々と説明をし、納得してもらったうえで大雨を止めて貰いました」
「うん、ごくろー様。またこんな感じで頼むね」
おお、エリート道まっしぐらな感じだよ!とライラは感動の目でフィリアとリランを眺める。
「はい。それでは」
フィリアがリランに一礼してから王の間を出ると、首の後ろでくくられた茶髪に黒い瞳の男性が翼の生えた黒い大きな猫を従えて立っていた。
「ええと…どちら様?」
ライラがフィリアにこそっと聞く。
「第2王子のアースさん。なんだってこんなところに…」
2人ともさりげなく失礼なことを言っています。
「少し、話したいことが有るんだ。君たちを見込んでの話だよ。来てくれるかな?」
…質問しているけど、これは逆らえないですよね。ってライラは冷静(?)に考える。
「はい」
立ち話もなんだよね、アースが言ったことにより場所を移動しました。
王宮の一室です。名前は薔薇の午後とかいう名前の通りバラ色な名前です。誰が考えたのか…。
「それで、君たちへの話なんだけど。結論から言うと第3王女を嫌わないで欲しいんだ。彼女は授業で習うほど悪い人じゃないから」
「はぁ…」
どうでも良さそうにライラが相槌を打つ。内心、うわぁシスコンだぁこの人、と引きながら。
「第3王女のことは授業で習ったか?」
「いいえ」
「来週からです」
「そうか。そしたら、妹がとても悪いように教えられるけど事実は違うから」
「はぁ」
一応相槌を打っているけどどうでも良さげに聞いている。そして、やっぱ救いようのないシスコンだよこの人、とさらに引きつつ。
「彼女は証拠がなくて表で裁けなかった話を全部始末してくれたんだ。いいか、これが事実だからな。ライラにフィリア、第3王女を嫌うなよ。嫌うならば全てを彼女にかぶせて悪い人にした王家を恨め」
「た、例えばどんなことでしょうか?!」
興味なさそうに聞いていたライラが食いつきました。フィリがそんなライラを止めようと袖をつかみましたが無視されました。
「例えば…どんな話がいいと思う?」
「そうですね…パン屋の話とかはどうでしょう?」
アースが猫に聞くと、猫が喋りました。
が、ライラも驚いた顔をしただけでスルーの方向へ持っていきます。
「ああ。
王都に有るとあるパン屋が貴族に何かを横流しにしてお金をもらっていた。それも証拠を取られないようにこっそりと。
でも、証拠がないから王家は捕えられない件でね。
そうしたら第3王女がそんなことをぼやいた次の日にパンをどっさり持って街から帰って来た。どうしたのか?と聞いたら例のパン屋から貴族からもらっていたお金分のパンをかっぱらって来たって言うから皆驚いてさ。ほんとあのときだけだよな、兄上の驚いた顔が見られたのは」
「す、凄い人です!考え方も、それを実行しちゃうところとかも!!もし会えたら友達になりたいです!!」
ライラの瞳がきらきら輝いています。
「それは良かった。俺の話はこれだけだ」
「有難うございます!!王子様も頑張って下さい!!」
元気いっぱいのライラに少し顔を赤くしたフィリアが引きずられて学園にワープした。
「アース、あれで第3王女の味方が出来たと思うか?僕たち以外で」
「そうですね。きっと…」
リランがいつの間にか扉の影に居てアースに話しかけた。
「きっと、あいつも心を開くだろうしな」
「ところで兄上。父上は捕まったのですね」
「そうそう。やっと政務を代わってもらえたよ。ちゃんと真面目に働いて欲しいね、仮にも王様なのだから」
どうも王様はサボり癖があるようです。
リランはそのせいかとても政治が上手になりました。
常に微笑みを多やさない不憫すぎる宰相、と有名です。




