クリスマス前日
クリスマス…の前日
雪が降り積り、深とする学園。雪が世界に溢れる音を吸収してしまうからだ。
いつもならもう少し五月蠅いのに…とフィリアは思う。
「うっわ~寒っ!あ、雪降ってる~」
そんな静かな雰囲気をライラがぶち壊した。
「冬だからね」
ちょっとだけ頭に来たのかフィリアの答えは素っ気ない。
今は冬休み中。生徒はほぼ家に帰るけれど、2人は何気なく寮に残っている。他にも残っている人はいるのだが、普段よりは圧倒的に少ないため、静かだったりもする。
「ねぇ、明日はクリスマスだよ!そこでっ!明日皆にあげるプレゼントを買いに行こー!」
ライラが窓の枠に頬杖をついて深々と降っている雪を見つめるフィリアに提案した。
「…いいよ」
この世界にはワープと言う魔法がある。だから、プレゼントをベッドのわきに置いたりすることができる。
「私はー両親とラキ、それから…セノーテ、レン、ソフィー、レオ達にあげよっかな」
「私は…レオと、兄上、姉上、母上…父上とお世話になってる大臣とか…セノーテ達に…」
「沢山いるねぇ」
「はぁあ…」
憂鬱そうなフィリア。
「どしたの?」
「別に。嫌だなぁ…プレゼント交換」
「え、どして?」
「ライラは知らない?男子とか、男とか、野望に餓えたケダモノとかが、ご機嫌伺いで嫌なものを送って来るんだよ」
「へ、へええ」
「ま、私もやり返すし良いけど…」
黒い笑みを浮かべるフィリアをライラは心配そうな目で見た。
そして2人は買い出しから帰る。
ピピピピピ
ライラの机に置いてある携帯端末が鳴った。
「なんだ?私の?」
「その通り…ライラのしかあり得ないよ。私は電源切ったから」
携帯端末の必要性を感じさせなくするフィリアの一言だった。
「もぉしもぉし」
『あ、お姉ちゃん?ラキです』
「ラキかぁ、久しぶり」
可愛い妹から電話がかかってきたからライラのテンションが上がりだす。
『あのね!私、お姉ちゃんと一緒の学校に入るの!!1-3だよっ!』
「え!!本当!」
「嘘言っても仕方がないでしょ」
冷静なフィリアの突っ込みは無視された。
『何か、いけなかった?』
ライラの反応にラキが不安になって聞いてくる。
「ライラと違ってラキは可愛いね…反応が」
「ごめん、私ライラ・クレイクで生徒登録してあるから」
フィリアはライラに再び無視される。
『あ、それなら大丈夫。私もラキ・クレイクで入っているから』
「さっすがラキ!気がきく!」
『エヘヘ』
「ん、じゃあまたね」
ピとライラは電話を切った。
「…シスコン」
無視され続けて若干怒り気味のフィリアがライラに呟く。
「シスコン!?ど、どの辺がっ!」
思っていたより反応したライラを面白く思うフィリア。
「どの辺って…全部?」
「そんなこと言ったフィリアだってシスコンだしブラコンじゃない?」
「な…凄く心外…そんなのはフェカだけ。私は違う」
「フェカだってお兄さんでしょ?」
「…え?ゴメン、聞えなかったな。フェカが五月蠅くて」
「フィ~リ~ア~?言うだけ言って逃げるとか王女様の言うことかなぁ?」
「王女だから。何やってもオッケーだから~。アハハ」
「笑い事じゃないし!何、何様!」
フィリアの態度にキレたライラが怒鳴る。
「王女様に決まってんでしょ。五月蠅いなぁ、もう。こんな良い天気なんだから静かにしてよね」
「待った!」
フィリアの言葉にライラが待ったをかけた。
「ん?」
「これの、何処が…何処が良い天気になるのか教えて!」
ちなみに今の天気は、深々と降っていた雪が酷くなり学校があったら間違いなく休みになるほど大雪になっている…という、とても悪い天気です。
「え?大雪ってテンションが上がらない?」
「普通は上がらないよ?」
「だってさ…大雪だと嫌な奴が雪に埋もれて凍死しているのとか、思い浮かべやすくなるでしょう」
フフフと笑うフィリアの周りに一瞬、吹雪が見えたライラだった。
「怖い…怖いよ、その妄想は!…で、誰よ?」
「何が?」
「嫌な奴ってのは」
ライラがワクワクと言った感じでフィリアに尋ねる。
「え~…いいの?本当に聞く?」
フィリアの様子にライラがごくりと唾を飲み込んだ。
「聞きたい!」
「えっと…ライラとか?」
フィリアはそんなライラを虐めたくなった様でライラの名前を出してみる。
「嘘や!!んな訳無いよ!私、フィリアと心の交流をいっぱい深めたもん!」
「心の交流…?なんか面倒くさ…じゃなくて!ポラルとかポラルとかポラルとか…財務大臣とか、ポラルとかポラルとかポラルとか財務大臣とか…かな」
フィリアは呪文のようにポラルとその他一名の名前を呟いた。
「へぇ…ってほぼポラルかい!しかもたまに出てくる財務大臣って?」
「さあ、誰だろうね?フフフフフフ」
フィリアの黒い笑顔が怖くなったライラはなんとかして話題を変えようと試みるが失敗した。




