体育祭2日目~障害物競走(後)~
『フィリア・スィエルムーンの策略によっり、ライラ・クレイクが凄い羽目に!!そんなんじゃ友達なくすぞ!!』
「うるさいなー、ライラが自分でやったんだしいいじゃん」
フィリアが玉から下りて次の障害物のところに行った。
その後をぼろぼろになったライラが追っかける。
「フィリア、酷いよ!!死ぬかと思った!!」
「ごめんよ。まさか本当にやるとは思わなくてさ」
「むぅ…」
フィリアがライラに笑いながら謝った。
「フィリア、前!ぶつかるぞ」
隣を走っていたレオがフィリアに前への注意を促す。
前から鉄の矢が音速で次々と飛んでくる。
レオに注意されて気付いたフィリアが寸前で叩き落とした。
「うわ!?ってか殺す気かー!!」
「さあ?と言うかこれ、何処まで行けばいいの?ずっと走ってるんだけど!!」
「これを越えて次のトラップで終わる…らしい」
「じゃあ、早く越えるか。後使っていい回数は2回。トラップの数は2個だけど…使わない方が良いかな?」
フィリアがレオに相談する。
「シルバームーンを出せばいいじゃないか。そうしたら一回で済むだろう?」
「ああ。いや…ポケットから出せばいいんだ」
フィリアが制服のポケットをゴソゴソとあさりシルバームーンを出した。
『フィリア・スィエルムーンが魔剣を出したー!!やっぱ、かわいーぞ!!』
放送部の人が久々にやっかみをした。
「あー…はいはいはい。よし、矢を叩き落とすよ」
フィリアが矢を剣で片っ端から落として前に進む。
最後の障害物はコースの真ん中の方に置かれた回転扉。
「えっと、この回転扉は何だろうね…」
『回転扉は我が学園の英知の結晶!!コスプレってやつだよ!!ランダムって言っているけど校長先生がコスは決めてるって…ヒギャ、ムウウすいません部長すいませーん!』
ブツッと放送が切れた。
「なんなんだろ…ってかコスプレ?凄く嫌なんだけど。カメラ構えている野郎もいるし…」
フィリアが顔をしかめて回転扉に手をかける。
「ど、どんな感じ?」
「…どうって聞かれても触っているだけなんだから分からないよ」
ライラがワクワクってフィリアに尋ねる。
「ライラから入れば良いだろ」
レオがライラに生贄になるように促す。
「え、嫌だよ」
「しかしなぁ…」
3人で押しつけ合っていたらルーピンが来た。
「あ、ルーピン先生!先良いですよ」
フィリアが気づいてルーピンに押しつけた。
「え、良いのかい?わかった、それじゃあ」
ルーピンが回転扉をくぐると扉が光ってくるくると回った。
『おおおおお!!!ルーピン先生が扉をくぐったぁ!!』
ルーピンは出てきたときに熊の縫いぐるみを着ていた。
「うわっ、こんなにくそ暑いのにご愁傷さまで…」
「ぎゃー、これ懐炉が張ってあるー!!」
ルーピンが悲鳴を上げてゴールに走り出した。
「うわ、負けちゃう!ライラ、行け!!」
フィリアがライラを回転扉に押し込めた。
「ヒド!!」
ライラが扉から出てきたとき浴衣を着ていた。
「動きやすい服なのか?ううむ…当たりなのか外れなのか?」
フィリアがそれを見て唸った。
「よし、もたもたしてると追いつかれる。どっちが先だ?」
「ここはレオが先でしょ」
「わかった」
またもフィリアはくぐるのを先に延ばした。
レオは半袖の白い服に紺色の袴を着ていた。
「む…」
『か、かっけー!!いいなぁ!!ねえねえ、誰かと付き合う気はあるの?』
放送部の人の告白っぽいもの。
「ない」
即答したレオにガッカリする放送部女子。
『ああん、残念!!誰か好きな人…ああ、フィリア・スィエルムーンか』
「…何なんだろう、この校長の助平と叫びたくなりそうな…」
フィリアが一人回転扉と向き合って呟く。
「あ~…校長が衣装を決めているんならフィリアはかなりヤバそうだもんな」
レオがフィリアの呟きを聞いて言う。
「…もういいや、どうでも!!なんかギャラリーがいて嫌なんだけど!」
『フィリア・スィエルムーンが扉をくぐった!!どんなコスかなぁ!!可愛いと良いな!!』
フィリアが仕方なしに扉をくぐった。
なんかフィリアだけ変身シーンっぽいものが有った。こうピカッと光ってクルクルと光が体にまとわりつく奴。
「おかしい!!ペンダントが盗られた!」
フィリアが出てきて洋服を確かめて、次にふさふさした感覚に気づき叫んだ。
フィリアの洋服は青国王家の色である碧色の薄い生地に純白のリボンが腰に巻いてあって、大きく蝶々結びされている。袖はふわっと膨らんでいて、白いフリルの先にリボンがきゅっと結んである。手首足首にも白くて細いリボンが結んであって、フィリアが動くたびにフワフワと揺れる。首には水色リボンに青国王家の印である翼と剣が一体化したものが通されている、チョーカーが巻いてある。髪はクルクルとパーマがかけられていて、ひと房水色のリボンでくくられているほかは背中で波打っている。頭にはフィリアの碧い瞳に良く合う最上級のブルーダイヤが中央にはまっている銀で出来た王冠がチョコンと乗っている。で、銀色でフワフワの尻尾と耳が出ている。
『お姫様だぁ~!!王冠も乗ってるし~かわいー!!しかもネコ耳!!!僕と付き合ってぇ!!』
放送部男子による放送。が、最後の部分はフィリアに無視され、他の男子生徒から抜け駆けすんなテメェって言う殺気の籠った目で見られるだけだった。
「ルーピンを追いかける」
恥ずかしいさで顔が赤くなったフィリアの怒りは何故かルーピンに向かった。
「フィリア、可愛いから良かったじゃん。当たりの衣装だな」
いつもの習慣でドレスの裾をチョンと抓んで全力疾走しているフィリアの隣をレオは余裕で走りながら耳打ちした。
「バっ!!くぅ…こ、は、だ、う、わ、な、ま、あわわわわ!!」
言いたいことが有るフィリアだが動転しすぎて言葉にならなかった。
フィリアはさらに顔を赤くするとダッとさっきよりも速く走りだして熱いと騒いでいるルーピンを抜き一位でゴールした。レオがそれに続いてゴールする。
「ううううう!!」
ゴールした後すぐにフィリアは顔を真っ赤にして、レオに言葉になってない抗議をする。
「何言っているか分かんないぞ」
「ううううううう!!!」
「だから分からないって」
「うううううううううう!!」
うーと唸っているフィリアの抗議に真面目に付き合うレオ。
「ううううううううううううう!!」
「だからさ…可愛いぞフィリア」
「!!う、うううう…」
ヘナヘナとフィリアが地べたに座り込んだ。
「よ、汚れるって」
レオがフィリアの洋服が地面に着く前に急いで腕を取って立たせる。
「!!!!うーー!!」
「…分からないってば」
若干呆れているレオにフィリアは、うーと言い続ける。
「フィリア、速いよぉ~」
ライラが息も絶え絶えでやっとゴールした。それでもルーピンより速い。
「ってか可愛い!!どうしたの!?何でネコ耳!!お姫様ルック!!!幸せ~!!」
ライラがフィリアに近づいてとろけそうな顔をする。
「う…わー!!ううううう!!!」
「あ、ウ以外の言葉を久しぶりに聞いた」
レオが変な所に感心する。
「ううううー!!!」
「ウしか喋れないのかよ…」
「う…く、あ、わ、そ、な、バ!!」
ウ以外の言葉を喋るには喋ったが動転なのか恥ずかしいからなのか言葉になっていないフィリア。
「だから何が言いたいんだよ」
「く、あ、そ、わー!!」
「フィリア、頭でも打ったか?大丈夫なのかよ」
フィリアの様子を心配するレオ。
「だ、だ大丈夫でっ…だよ!れ、れレオにし、心配されるほだっ…ほどその…えっと、ほら」
「…の割には噛みまっくっているしドモっているけど?」
「だ、大丈夫だってば!」
ようやく落ち着いてきたのかましに話せるようになったフィリアをライラがハグする。
「フィリア~!!か、可愛い!!」
「ひっ、き…」
ほとばしりかけた悲鳴を寸でのところで呑み込んだフィリアはくっついて離れないライラを困ったように見てレオに助けを求めるか悩んだ。
「ライラ、離れてやれよ。フィリアが困っているだろう」
フィリアが助けを求める前にレオが察してライラを引き離す。
「ふぅ…レオありがと」
「いや別に」
「…べ、別にって!!酷いよ!!」
「はぁ?」
「うううううー!!」
うーと唸りだしたフィリアにレオがまた振り出しに戻ったのかとげんなりとした顔をする。
「フィリア、いい加減落ち着かないのか?」
「うー…っく、ひぇ…」
突然、うっすらと涙が浮かべたフィリアにレオは慌てて涙をふく。
「こ、こら。な、泣くなよ!」
「うううー…ひぇ…ふぇえええ」
「だから泣くなって!!放送部の奴とか新聞部の奴がスクープを狙ってカメラを構えているんだぞ!?」
「だ、だってぇ…レ、レオが」
「なんだよ」
ライラそっちのけで話を進めて行く2人にいらつき始めているライラがこっそりとリンゴを呼んでくる。
「こ、これは…!!フィリアさん、どうしたのですの?」
「ううううう!!?…?!り、りんごさん?な、ななななんでこ、ここに!!」
「体育祭も終わりましたので閉会式が近づいてきていることを教えに来たのですけど迷惑でしたの?」
「い、いいえ!!だ、だ大丈夫でっ…大丈夫だよ」
まだ噛んでいるフィリア。
「じゃあこちらですの。お洋服は着替えないで下さいですの」
「な、ま…わかった」
フィリアが落ち着いてきたようでリンゴについて行った。




