友達ってさ
凍りついた床に火花を散らして突き刺さった剣のブゥンと音を立てる青いオーラは複雑な模様を描き凍った床に魔方陣を生み出す。
「〝我、汝を呼び出したり。汝、我の呼びかけに応え今、召喚されよ!リルナントゥリア″!!」
その魔法陣を見て満足したようにフィリアはうなずき、声高々に叫んだ。
「リ、リルナントゥリア!?そ、それって今の龍の王様なんじゃなかったっけ?!」
彼女の召喚術呪文に入っていた名前を聞いたライラが驚愕する。
「その通りよ」
フィリアはライラに答えて魔法陣へ視線をもどす。
4人が固唾を飲んで見守る中、それは現れた。
「よっ」
「リィ!」
魔方陣の中央に現れた黄色く小さい生き物は、パタパタと黄色の翼を振りフィリアに向かって飛び上がる。
フィリアが嬉しそうに小さい子龍に手を伸ばす。
「こ、これが…王様な訳ぇ!?」
エリカがその場の皆(ライラ、城主)の気持ちを代表して驚愕の叫びをあげる。
「…そぉだけど、何か悪ぃか、オイ!俺が王様だったら悪ぃですかぁ?フッフッフッ…もうウンザリだぜ!」
リルナントゥリアはハンッと鼻で笑いそっぽを向いた。
「リィ、すねないで。困るの、私が」
「そう思うんなら人型で呼べよ!」
「いやあ、ごめんね。ちょっと間違えちゃって」
全く悪く思っていることを感じさせない笑顔を浮かべたフィリアにやれやれって首を振るリィ。
「それなら人型に自分でなる。いいだろ?」
「うん。別に止めはしないよ。その代りいっぱい働いてもらおうと思う」
リィはフィリアの言葉をあえて聞き流し、ポンっと手(翼?)を叩き人間の形を取った。
「か、かっこいい…」
リィの人型は、金髪にひと房白髪が混ざっていて、明るい性格なのが見て取れるキラキラと光る黒眼。スラリと伸びた長身に引きしまった体格だ。年のころは20歳くらいと言ったところか。
「これでどうだ?」
「うん、バッチシだね。じゃあ、やろうか」
にっこりとリィにフィリアはウインクすると剣を床から引き抜いて茫然としている城主に剣先を向けた。
「ルリント!!」
城主がそれに気づいて捕えの魔法を唱えた。
が、魔法は掛からなかった。
「残念。魔法は使えないのです」
「え!な、何で?」
「リィの性質でね!ってことでクフフ…覚悟なさい」
楽しそうに笑うと城主へ走って近寄り茫然自失としている城主をグーで殴った。
「ひぎゃ!!」
変な声を出すと城主は気を失いかけた。
「気を失えると思うなよ」
フィリアによって起こされたが。
―しばらくして―
「ま、参りました…」
「もうしませ~ん!ゆるして~!!」
魔法が使えなかったことで、一方的にフィリアにボコられ、降参する城主とエリカ。
「うん、認めない。というか認められるとでも思っているの?」
楽しそうに鈴のような笑い声を立てるともう一発殴ろうと拳を振り上げるフィリアをようやく我に返ったライラが止める。
「こ、降参って言ってるし、止めよう」
「やだよ、楽しいもん。リィもそう思うでしょ?」
「いんや。やりすぎだと思うぜ。それに青国の法律だと降参は必ず認めないといけなかったろ」
「それはそうだけど…。でも、こいつらは…」
「あ!危ない!!」
城主が手に隠し持っていた短剣でフィリアを刺そうとするのに、ライラが気づいて止めようとしたが失敗する。
後ライラが馬鹿な止め方をしようとしたせいで短剣の前に飛び出した感じになる。
ようするに城主の振り上げる軌道に一直線。
「!ば、バカ!!な、何やってんの?!」
さらにぶっちゃけると、フィリアの代わりにライラが城主に刺された。
「え、へへ…ちょっと失敗しちゃった」
という訳で、血がライラの腹から流れる。
血を流すライラを見てフィリアは真っ青。
「バカ!バカバカバカ!!大馬鹿野郎!!何やってんの!」
彼女にしては珍しく泣きそうな顔をする。
「…こぉんの、バカ野郎が!よくも…よくもクラスメイトを、傷つけたな!よっぽど、死にたいと見える。お望み通り殺してやろうじゃないか。フ、フフフフ」
そしてゆらりと倒れたライラの隣から立ち上がると血に濡れた短剣を持って構えている城主に素手のままツカツカと近寄る。
城主はフィリアの怒気に、みっともなく震えている。
カタカタと城主の震えで上下に動く短剣を左手でわしづかみにし、グッとひっぱり城主の体勢を崩してからフィリアは城主の腹を思いっきり蹴りあげた。フィリアの左手から血がポタポタと垂れる。
「ぐは!!」
その威力はすさまじく、城主は10mも離れている天上に衝突し、埋まった。
「…ざまぁみろ。エリカお前もか?どうな訳」
がたがたと震えているエリカへ優しく問いかけるフィリアを見ると、エリカは一層震えを激しくした。
「どうやら、その気はないみたいね。じゃあ、面倒だけど眠っててもらうから。おやすみ」
震えるエリカの首に手刀を落として気絶させると、ライラの方へ走って行き、傷跡を診るフィリア。
「大丈夫?…お前、ううん、ライラ、有難う。それからごめん。今、治すから」
治癒魔法をかけようとしたフィリアをライラは遮ると何事もなかったかのように立ち上がった。
「だ、大丈夫なの!?……そうか」
そんなライラに驚愕してからフィリアはハタとあることに思い立った。
「えっと、これくらい大丈夫だよ」
普通に言ったライラ。
「そうだよね。心配した私がバカみたい…」
ちょっと恥ずかしそうにうつむくフィリアの肩にライラはポンと手を置く。
「もしかしなくてもフィリアがいつの独りでいるのってこうやって誰かが傷つくのを見たくないからなの?」
「ま、まさか!そ、そんなことあるわけがないでしょ!」
カァと顔を赤くしてフィリアは叫んだ。
「ねえ、私は大丈夫だからさ、友達に、なろうよ。友達をつくろうよ。いつも独りだと悲しいよ」
ライラの提案に少しフィリアは考えるが首を横に降った。
「だめ…友達なんていらない。信じられるのは家族とアイツそれからリィだけ。友達なんて…」
「そんな悲しいこといわないでさ。ね?」
ライラは彼女へ優しく語りかける。
「どうせ、皆裏切るんだから…信じても裏切られるんなら最初から作らない方がましなの。わかる?」
「裏切るなんて…しないから!!」
「…それに私といると、悪いことばかり起こる。止めた方がいい」
「だ~か~ら~!!大丈夫って言ってんでしょ!!人の話は聞け!!」
「え!は、い?!」
「私とフィリアは今から友達だから。ちなみに拒否権はないからね」
「え?いや…」
「つべこべ言わない!よぉし、フィリアと、友達になったぞ!!」
「は?や、そうじゃなくて…私は友達がいらないって」
「聞こえな~い!!」
かなり強引に友達発言をしたライラ。
「…しかたない、王宮に戻って無事終わりましたって言いに行くか」
フィリアは深くため息をつくと立ち上がってライラの服に付いた血を消した。
「お?」
「いい?何事もありませんでしたって言うんだよ。間違っても刺されましたなんて言っちゃダメだからね!絶対だから!」
何かを恐れたフィリアは首をかしげるライラに釘をさすと王宮へワープする。




