夏休みが明け
―夏休み終了して秋―
「秋と言えば…!!」
リンゴが効果音付きで重要なことを言う。
「ジャン!スポー」
「食欲の秋だねっ!!」
ライラがそれを遮って言ったのをフィリアが気にしないで~とライラの口をふさぐ。
「…スポーツの秋ですの。スポーツ大会もとい体育祭の協議出場者を決めますの」
リンゴがしきるホームルームの時間です。
ホームルームとは言え授業です。しかし教室にはルーピンの姿が見当たらない。
実は先生が来ると思われる10分前ほどに…
「みなさ~ん、注目ですのっ!」
リンゴがクラスに居る人が思うがままに喋りまくっているせいでうるさい教室の真ん前に立ち手を振って注目されるのを待つ。意外とすぐに皆の視線はリンゴに集まった。それだけリンゴが信頼されていると言う事だ。
「ホームルームで体育祭の話をするらしいんですけど先輩からの情報でルーピン先生の話は聞いても勝てないと言うのでルーピン先生をホームルームに参加させないようにしたいんですの…どうしますですの?」
リンゴが可愛い顔に似合わないことを言う。
「はいはーい!!フィリアと大橋さんの蹴りで気絶とかは?」
ライラが真っ先に手を上げて聞いた。
「え~だったらライラが幻術かけちゃえばいいじゃん」
面倒なことはやりたくないフィリアがライラを指名する。
「そしたらバインドかアレストやって」
前にも出てきましたがバインド、アレストとは拘束魔法の一種です。
「そーゆーのはリンゴが得意だぞ」
燎子も面倒なことが嫌なのか押しつける。
「燎子ちゃんのためならいいですの」
リンゴが言ってクラスの人が頷いた時、問題のルーピンが元気良く扉を開けて現れた。
「ホームルーム始めるぞ…」
ルーピンが扉を開けたのを見たライラとリンゴは獲物が何も知らずに来た事に気づき顔を輝かせる。
「〝バインド!ですのっ。あなたは縛られるですのっ″」
「〝イリュージョン、銑川家秘伝術!楽しい夢でも見てホワホワしていろ″!!」
リンゴから呪文を唱えてルーピンを拘束してからライラの幻術で楽しい夢の世界へ落とした。
「ず、銑川秘伝術って…?」
レンが恐ろしいものを見てしまったと後悔しつつライラに引っ掛かった単語の意味を聞く。
「この間剣さんに教えてもらった。幻術得意ならこれも出来るぞーって。私の魔力も減らないし解くときは一言でオーケー。リンゴさんもーいいよ」
「はいですの~」
13はこんなふうに担任を再起不可能な状態にした。他の学年でも3組はこうなっている。なまじ魔法が得意なだけに先生必要ねーんだ!ってことなんだとか。ライのクラスもこうなている。
本編に戻す。
「私は戦略をたてますの。皆さん頑張りましょうですのっ!」
いつにも増して張りきっているリンゴを見てフィリアが斜め前の机に腰掛けている燎子に話しかけた。
「ねえ、大橋さん。なんでリンゴさんあんなに張り切っているの?」
「あ~、リンゴの奴、賞品に釣られたんだろうな。優勝クラスには魔法道具が授与されるって言う…」
魔法道具とは魔力を注いだ道具の事。マジックアイテムとも言われる。
「ああ…」
納得してしまったフィリア。ライラをチラッと見てフィリアはリンゴに視線を戻した。
フィリアがライラに視線を移した訳はこいつも同じことを考えるなと思ったからだ。
まあそれは置いておいて。
「玉入れとかは置いておいて、問題はクラス対抗リレーですのっ!!」
クラス対抗リレーは学年で闘い勝ったクラスが学年代表チームとなり学校全体で闘う。
「私達の最大の敵は高校生よりも、ライさんですのっ!2-3の!」
リンゴが燃えています。
ライは今回敵です。でもその前に学年の代表にならないといけません。
「ライさんに対抗できると思われるのはライラさん、あなたですの!!」
「へ?私?…質問!」
ライラが元気良く手を上げた。
「何ですの?」
「魔法って使っていいの?」
「はいですの。一日一人3回までならOKですの」
「え!ワープって良い訳ないよね?」
「ええと…第一走者のみ許されているっぽいですの。あんのエロジ…こほん。校長先生が楽しいから良いじゃないかと許したとかなんだとか。基本的には許されていませんですの。変化もですの~」
リンゴがマニュアル書をパラパラとめくってライラの質問に答える。
「オーケー。んじゃあ私がアンカーになる」
ライラにも『賞品欲しいぞスイッチ』が入りました。
「全部で8人必要ね…メンバーどうするの?」
「私的にはフィリアが一番になって欲しいなーとか思っているけど」
フィリアが聞いてライラがすぐに答える。
「…分かった」
フィリアは少し間をおいてから答えた。
「後6人ですの。私は燎子ちゃんにも出て欲しいですの~」
「え、なんで俺が…」
リンゴに可愛くおねだりされた燎子が渋るのを見てライラとフィリアが同時に言う。
「頼んだ!」
「おい!レンお前も道連れだ!」
最後の足掻きに燎子がレンも引きずりこむ。
「いいですよ」
レンがあっさりと頷いて後4人。
「レオ君は出ないの?」
フィリア以外の女子に言われたレオは女子にひっつかれるのが嫌で承諾する。
「…じゃあ出ても良い」
「私も!」
ソフィーがそれを見て立候補したため後2人。
「あ、レイン君走るの速いから出ませんの?」
「そういうなら出るが…」
リンゴが教室の端の方に居る黒髪黒眼の男子レイン・ハブリントに聞いて参加させる。
後1人。
「…あと一人誰にしますの?」
リンゴが教室をぐるりと見回すとも懲りの人はそろって首を横に振った。
「んー、リチャード君とか?」
「イヤイヤ止めた方が良いって!」
初登場のリチャード・ワイマンはソフィーに聞かれて首を横に振る。
「ちょっと、わたくしをお忘れ?」
ポラルがしゃしゃり出てきた。
「ケレンスさん?あなたは50m走を…」
「うるさいっ!!そーよわたくしは走るのが遅いですわよっ!でも、ドラグニルでもなんでも召喚してやりますわ!」
偉そうに言い放つとポラルはなんか文句ある!と言いたげに教室を見まわした。
「召喚術しても良いの?」
「ダメですの」
ライラがリンゴに聞くとリンゴはマニュアル書をパラパラとめくって魔法行使の云々カンヌンを調べあげる。
教室が一層静かになった。
ちなみにポラルの50m走の記録は10秒くらい。
「…」
「そんなに出たいんなら、いいけど?」
押し黙ったポラルを哀れと思ったのかライラが声をかけてあげる。
「本当!!ありが…」
「どうせ私の奥の手でどうにかなるしね」
「…」
礼を言おうとしたポラルはライラの意味深な言葉が聞こえてしまって凍りついた。
「では、気を取り直して他の競技の事も決めるですの~」
リンゴが凍りついた教室の空気を和ませて協議決めへと移らせる。
「私は何でも良いよ。だから話しかけないで。先生で遊んでいるから」
ライラが先手を打ってルーピンをいじりだす。
「え?何すんの」
「怖いこわ~い夢を見せる。〝イリュージョン月詠″!」
皆が話し合いをしていて5分後。
「ギャ―――――」
「くくくくく」
ルーピンの悲鳴とライラのかなり不気味な笑い声が教室に響いたのでした。
「…ラ、ライラ…」
ライラはルーピンに八つ当たりをしているようです。
更に10分後。
「終わったよ。ライラと私は障害物リレーだって。体育祭一番のメインの。でもやりたい人少ないって言うから何か怖い競技なのかな?」
レオも障害物リレーに出ます。
「ヘーイ、〝ホワワワ~ン″」
秘伝術を解いてルーピンをライラは悪夢から解放した。




