フェカ激怒
「フィリア、フィリア」
ライラがそっとフィリアをゆすって起こす。
数回ゆするとフィリアがピクリと震えた。
「う……」
「良かった、生きてた!皆、フィリアが起きたよ!」
「あれ…」
ライラが安堵する。
「良かったよー。死んじゃうかと思ったんだからね」
「うん…ごめん」
ボーっとしているフィリアの隣にフェカが現れた。
「フィリア、ちょっといいか?」
額に青筋が立っているフェカがフィリアを皆に声が届かないところまで引きずって行く。
「…が!……バカ!」
微妙に風向きで聞こえる。
凄く怒っているのが分かる。
しばらくしてから憔悴しきったフィリアがフェカから解放されてライラの方にふらふらと歩いてきた。
「何だったの?」
「色々と…海とは相性が悪いので…」
フィリアが言いたくなさそうにライラへ言った。
「分からないよ、それじゃあさ」
「ごめんね…私のせいで楽しい海遊び台無しになっちゃって。せっかくの海だったのにね」
しょんぼりとフィリアがライラに謝った。
「別にいいよ。フィリアが無事でよかった。よし、もうひと泳ぎしようか!!」
うなだれているフィリアにライラが伸びをして言う。
「いや…私はここで待っているよ。残念だけど…疲れちゃって」
「そっか、わかった。泳いでくるから~」
ライラが海へ走って行った。
ライラと入れ替わりで服に着替えていたレオがフィリアの方に来た。
「大丈夫か?」
「大丈夫だよ。レオに心配されるほど…」
「はぁ…あのな、もっと自覚を持つべきだ」
「は?」
「お前は王女だ。それを誇りに持て。呪いも受け止めて自分のせいにするんじゃない。ちゃんと胸を張って前を向くんだ」
「わかっているよ、そのくらい!でもね、皆に…私と言う存在は見てもらえない。第3王女としか見てもらえないんだよ?」
「それでも、今日みたいに誰にも話さないと言うのは無しだ。ライラくらいには知らせておけよ?」
「分かってる」
フィリアは項垂れて怒るように言った。
「なら良いんだが。心配をかけさせるな」
「分かってるってば!」
「じゃあな。俺はもう帰るから。また…いつか」
レオが手を振ってワープして海から帰って行った。
「え?ちょ、何処い…はぁ、結局レオだって自分の事情を優先するのかな?まあいいけど」
「フィリア!ちょっとおいでよ!!綺麗なもの見えるよ!」
ライラが海の沖からフィリアに叫んだ。
「ん?」
「こっち来なよ~、独りでいないで!」
「ライラはいつも明るいな…何でだろう。辛いことが無いのかな?それともただ単に気にしていないだけ?どっちかな。羨ましい…」
フィリアがブツブツと呟く。
「あ、明日からクラスの交流を深めるためとかいう合宿だ」
「そういやそうだったかも…早く帰るか」
いつの間にか戻って来ていたライラがフィリアの呟きに答えた。
「うん、そうだね」
「じゃ、〝ワープ″」




