フィリアのためならば
「ねぇポラル!」
「何よ!」
早くも喧嘩腰のフィリアとポラル。
「あんた何出来んの?」
「…」
3人の間に沈黙が落ちた。
「おーい!!」
「…ドラグニルの召喚…」
しばらくしてからポラルが消え入りそうな声で告げた。
「は?ウォータープリズム!!」
水が襲いかかり10体ほどカガラルトをチリにした。
「サンダープリズム!!あっちは大丈夫かね?」
今度は雷が10体ほどのカガラルトに当たりチリとする。
そのころあっちは。
「ちっ!面倒くせぇ」
レオはセノーテ達がカガラルトを1体ずつちまちまと倒しているのを見て吐き捨てた。
「何がだよ!!お前も傍観していないで手伝えよ!」
レンがレオに叫んだ。
「ああ、やるとも。〝現れたまえ″」
レオが上向きに右手をのばしてから右手首を左手で握り静かに呟く。するとレオの伸ばした右手の上に純白のオーラを纏う長剣が現れた。
それをレオはカガラルトの方にブン投げる。
「投げたー!?」
何事かと見ていたソフィーが驚きで叫んだ。
「うるさい。〝爆″」
飛んで行った剣がレオの言葉で、カガラルトの群れの中心にてはじけ飛ぶ。
「うわっ!」
剣が爆発したときに生れた光と風でレオ以外の3人が目をつぶる。
「どうでもいい事だが、フィリアに頼まれたからな。サボる訳にはいかない」
レオが呟いて爆発では消えなかったが傷を負ったカガラルトを踏みにじって消していく。
「こんな雑魚に手間取るなんて、まだまだだな」
自虐的にレオは呟いた。
「て、手間取った?!ウソでしょ!一瞬だったじゃない!」
光が収まって目を開けたソフィーはカガラルトが全滅しているのを見て目を向いた。
「よし、フィリアに合流しよう」
レオはさっさと歩きだしてフィリア達がいる方へ行く。
フィリア達
「めんどくなったぞ」
「右に同じ~」
むぅと唸るフィリアとライラ。ポラルは木の陰に隠れている。
「う~ん、楽したい!!」
フィリアがつぶやくのと同時に、レオが木立から現れて、鞘に納まった剣を空中から取り出す。
「フィリアの願いというならば」
「レオ?」
「いざ、参る」
レオはカガラルトの群れ全体が視野に入る位置まで歩き、剣を抜刀する体制をとる。
そして、一瞬何かのきらめきが目に留まると、次の瞬間。
まだ残っていた150体余りのカガラルトが吹き飛んだ。
そして高らかに響くチンという剣を鞘に納める音。
「すっげー!あっという間だぁ!!」
ライラが感動する。
「ポラル、役に立たなかったね~フフフ」
フィリアがわざとらしく笑う。
「ぬぬぬぬ…!!」
ポラルが憤怒の形相で震える。
「レオ、ありがとう」
「いや…フィリアのためだから」
「…」
「おお!!」
ライラの目がキラキラと輝き、
「似た者同士仲良くしてればいいじゃん」
レンがそっぽを向いて言う。
「えっと、終わったし帰ろうか」
フィリアの提案で学園に戻る7人。
―夕暮れ―
「あ~良い感じの疲労感が押し寄せるー」
ライラが食堂の椅子に座ってそんな省もないことを言っています。
「じゃあお開きってことで~バイバイ!!」
ソフィーとセノーテが部屋に帰りました。
「あ、じゃあ僕も帰るね。また明日」
レンも帰って食堂にいるのはフィリア、ライラ、レオだけになりました。
「なんか真面目に疲れた…」
冗談抜きで疲れた顔をしているライラ。
「え?どうしたの。ライラ大丈夫?」
フィリアが心配そうにライラの額を触って熱の有無を診る。
「ないよ、熱なんて。あーでもフィリアの手冷たくて気持ちいいー」
ぐだっとしているライラをフィリアとレオが心配そうに眺める。
「ライラ今日は早く休んだらどうだ?魔力の使いすぎだろう」
「魔力?」
「…魔法を使うために必要な燃料みたいなものだ」
「いや、それは分かってるから。使いすぎなんてことが有るの?魔力って無限にあるもんだとばかり」
「おかしいでしょライラ。この間魔力少ないからって言っていたよ?」
「あっれぇそうだっけ?まいいや。今日の帰りポラル静かだったね」
「そうだね、どうしてかね?」
不思議そうなフィリアとライラになんとなく分かったレオが苦笑する。
「フィリアとライラには分からないだろう。力を持たない者の気持ちは」
「…そう、かな?」
フィリアが悲しそうな顔をしてレオに尋ねた。
「ま、今日は早く寝ろ。また明日な」
レオが席を立って食堂を出て行った。
「じゃあ私達も帰ろうか」
フィリアとライラは部屋へ戻った。
―ポラルは―
「くやしい」
なんだかんだいってポラルは今日役に立っていない。
「…私が…一番よ」
ポラルが机に向かって呟く。
「フィリアなんかより…私が…強いはずだったのに。なんで!!」
ポラルは自分の弱さを自覚した
レオがチートすぎるので、ポラルをダメダメにすることで釣り合いをとろうと目論んでいます。




