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蒼国物語  作者: 松谷 真良
第1章 任務
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ライラと任務へ

      ―翌日―


「フィリアー!?何やってんの!おいてくよ!」

「そうしてくれるとありがたいんだけど…分かった今行く」


小声で呟いてからフィリアはライラの後を追う。


「王宮に行くよ!」


そう言う訳ですから学園を出て、ワープをして王宮の前。


「えーと、アリア学園の者ですが、任務内容を聞きに来ました~」


ライラが門番に言うと門番は疑わしげにライラを見、フィリアを見てから、門を開いた。


「フィリア、どっちか分かる?地図持ってくるの忘れちゃって」

「なんでこのくらいの広さの建物の地図が覚えられないかな………ついてきたら?」


テヘっと笑ったライラをいら正しげに見てから、フィリアは不服そうに彼女の前を歩いて王の間まで先導してあげた。



    ―そんな訳で王の間―

フィリアが先に入って、綺麗に臣下の礼を取る。

ライラは、彼女が取った礼のあまりの綺麗さに数秒呆けてから慌てて礼を取る。

そんな2人を眺めると王座に座っている人物はおもむろに口を開いた。


「ええと、今日呼んだのは…何でだったっけ?」


おおい!自分で呼んだんだから覚えとけよ!とライラは思った。


「リラン王子、シルネント地方で起こっている大雨を止めてもらう為でしたと思いましたが」


王の間って言ってんのに、王じゃなくて王子が居んのかい!ともライラは思った。



ちなみに青国には王子が3人、王女も3人います。が、第三王子、王女は家出中で現在王宮に居ません。

一部の大臣は、さっさと探そうぜ!とか思ってますが王が捜索隊を出さないので放置です。

王が言うには「自ら戻って来てくれた方がいいのだ」だとか。

この態度から王が実は家出中の2人の居場所を知っているのではないかと考える大臣も結構います。

王子の名前は上から、リラン、アース。

王女の名前が上からファイナ、リナ。

第3王子、王女はまだ成人していないので名前が伏せられています。



ライラが王子の顔を見ようと顔を上げたら、そのまま固まりました。

何故なら、リランが明るい金髪、澄んだ紫眼の美男子だったからです。

王家の人間はなぜか皆そろいもそろって綺麗な顔をしているのです。


「と、いうことをしてきて。よろしく頼んだよ、フィリア、ライラ」

「はい」


優しく言ったリランに不機嫌そうに頷くとフィリアは、まだ彼に見とれているライラを王子から見えないように小さく蹴っ飛ばして王の間を出る。


「あ、待って…」


ライラが慌てて追いかけると、さっさと歩いていたフィリアは少しだけとまって彼女を待ってあげ、2人そろってから王宮の外へ出ました。


「よぉし、やるぞぉ!ね、フィリア!」

「そうなんじゃない?」

「とりあえず〝ワープ″!」


次の瞬間2人ははるか遠くのシルネント市に来ていました。


ワープと言うのは魔法の一種で術者が言ったことのある場所へ運ぶ魔法です。

シルネント市は暗く陰気な雰囲気でした。民家に明かりはついていなく、ずっと続いた雨のせいかジメジメとしています。


雨がザーザー降っています。


「うわぁ…大雨だ…」


ライラは少し嫌そうに言うとフィリアの方を振り返って聞く。


「フィリア、どうするの?」


フィリアはライラを無視して、暗い街を見てぶつぶつ呟いています。


「おかしい…前はもっと明るかった。灯がともせないほど貧しくなかった、はず。だいたい王家は魔法税で30%しかとっていないんだから、残りの70%で灯が使えるはず…。ここの城主が勝手に税を取っていなければの話だけど。でも、この街の城主は温和な人だし…。もしかして城主が交代したのかな…?」

そうこうしているうちに、大きな城が2人の前に見えてきた。そこには唯一明かりが灯っていました。

「あの、フィリア?聞いてる?」

「え?あ、ああ…うん。とりあえず城主をぶっ飛ばす」


フィリアはボーっとしていて確認してきたライラの問いに上の空で答える。


「え!?い、いや、それはさすがにまずいでしょ…」

「なんで?」

「なんでってそりゃ偉い人だよ?ぶっ飛ばせる訳ないじゃないか!」


心底意外そうに尋ねたフィリアに、ライラがとても常識的なことを言いました。


「だって、この大雨を創り出している人だよ?その人ぶっ飛ばせばお終いじゃない」

「なんで、城主さんが犯人ってわかるのさ!」


雨がドバドバ降っていてフィリア達の声を消します。

なので自然と怒鳴りあう形に。


「だって、あそこから大量の魔力が流れているのが分かるでしょう!?」

「そんなの何で分かる訳!」

「え、なに?聞こえなかった、もう一回言って!」

「そんなの何で分かる訳!」

「分かるから分かるの!…怒鳴るの疲れた」

「そう言えばフィリアの出身地って何処?」

「王都!喉嗄れそう…。魔法でなかったかな?」

「王都!?へー」

「あ。〝サイレント″!」


フィリアが唱えるとピタリと雨の音が消えました。さすが魔法。


「すげー!!こんな魔法授業で習ってないよ!どこで習ったの!」


凄く感心したライラ。


「王宮に…ああ、いや」

「?」


何かを暴露しそうになって、フィリアは途中でやめました。


「王都で習ったの。結構簡単な魔法だからね」

「ふぅん。で、さっきの王宮ってのは?」


ライラはフィリアが言い換えた言葉に誤魔化されなかった。


「内緒。気のせいなんじゃない?それとも頭がおかしくなっちゃったかなぁ?…って、ライラはもとからおかしいか」

「ひどいよ!?そ、そこまで言う!?」

「城に付いた」


ライラの抗議をさらりと流してフィリアは目の前に鎮座する城を見て言う。


「そうだ、この城なんていうの?」

「デセバン城」


そのくらい知っていてよと言わんばかりのフィリア。


「でかっ!」


城なんだから大きいのは当たり前でしょう。


「小さいね。しかも前より派手な建物になっている」


大きくないそうですね。


「よし!行くぞ!!…イテッ」


何故か頭をフィリアに投ぐられたライラ。


「バカライラ。うるさいよ、門番に気づかれたらどうするの?侵入が大変になるでしょう」

「侵入するの!?」

「当然」


少し不機嫌そうなフィリアと、侵入と聞いてテンションが上がったライラは城の裏口からこっそり城の内部に入った。


「なんでバレた…」


のだが1歩踏み込んだ途端、兵士が沢山現れてフィリア達を囲む。


「何者だ!?」

「聞かれて答える人って少ないよねぇ…」

「…」


兵士のかしらと思われる人に剣を突き付けられたライラは呑気に答える意思がないことを表明する。

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