都合のいいヒーロー?
「ライラ、10年ぶりね」
フウラでした。
フウラが何故かいて、今朝会ったにも関わらず10年ぶりねと言っています。
「違う違う、さっき会った。今朝会ってる、お母さん」
「…絶対反応が違うと思う。そこはえー!!とか驚くべきだよ、ライラ」
フィリアが呆れてライラの肩に手を置く。
「て、え、ええー!!よ、良く見たらお母さん?!な、何で!?」
「…反応遅っ!つーかお母さんって言ってるじゃん」
「あはは、バレた?そんなに驚くことじゃないよね、これ」
普通に笑ったライラ。
「…ま、いいや。ライラはライラだしね」
「な、何その諦め方!!だってさ、お母さん10年間も行方不明だよ?しかも赤の国で記憶が途切れてるって言ったらこの可能性が高いじゃん」
「ま、まあそうなんだけど…普通の人はね、そんなことは考えないから」
「普通じゃないし~。それにフィリアもそう考えたからさっき言ったんでしょ」
「うん」
和やかな空気が流れる。
「さすが私のかわいい子。でね、やっぱりその子は私の子だから言うことに従ってもらうわ」
フウラがぶち壊した。
「へ?」
「…ライラ下がって。それから、私から離れなさい!危、険…」
フィリアが崩れるようにして床に膝をついた。
「フィ、フィリア?!」
パチパチパチ。適当な拍手の音が奥のドアから聞えて来た。ついで気取った足音も聞える。
「は~い、足止めご苦労様フウラ」
「だ、誰?!」
ライラがドアから現れた赤茶色のストレートな髪、かなりヤバそうな光が灯る黒い瞳の男へ聞いた。
「俺は赤の国第一王子マデュラ・ファンカレイラ。さあ、フィリア。こっちのサイドへ来てもらおうか。手っ取り早く言うと我が操り人形と化すんだ」
マデュラはツカツカとしゃがみこみ動かないフィリアに近寄って手をつかもうとする。
「フ…ライラ下がったよね。フェカを…探し、て」
フィリアが微かに笑う。
「何を…?」
マデュラが不思議そうに聞いた時。フィリアの髪が光り、膨大な量の魔力がフィリアの体から溢れ出す。
純粋な魔力の光の渦がフィリアを包み込む。
「う…く、あ…」
フィリアは渦の中でうずくまり苦悶の表情を浮かべる。
「ぐあ…!!な、なななんなんだ?!」
マデュラは光の渦から慌てて逃げ出し、怒鳴る。
「聞いてないぞ!フェカと離したらこうなるなんて…!!」
「ちょっと!!えっと、フェカだよね。あーあ悩める乙女の前にちゃっかり出てきてくれる都合のいいヒーローとかいないのかね」
ライラがフェカを捜そうと辺りを見回しつつため息をついた。
ドカーンと轟音がして壁が崩れた。
「お久―、バカども」
フェカが煙んの中から現れる。
「うわぁああああー!!」
ライラが色々と嫌なことを思い出して叫ぶ。
「フィリア、もういーぞー。見っけたし」
フェカが光の渦に手を突っ込んで魔力の暴走を止めた。
「フェ…カ、遅い」
フェカが息切れしているフィリアを抱える。
「悪ぃ悪ぃ。罠に引っ掛かってな。すぐ来たんだけど…」
「…ううん。大丈夫、だよ。そうだライラ。都合のいいヒーロー来たよ!」
フィリアはフェカに下ろしてもらってライラに嬉しそうに言った。
「イヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤ、違うでしょ」
全力でライラは否定した。
「なんだ、不満なんかよ?」
「いーえ、有りません!…嘘、有るよ沢山!!」
近づいてきたフェカにライラは後退しようとするが手をつかまれた。
「嘘つけ、一つだけだろ。顔に書いてあるぞ」
フィリアがおお!と顔を輝かせるのをを見たライラはもしかしなくてもこの展開は…と思う。
「はぁ…?」
「キスしてくれないと拗ねてやるってな!」
「えっ…」
ライラはフェカにキスされました。しかもバージョンアップして3秒から5秒に!
「わあ!!キスしたぁ~フフフ」
フィリアが楽しそうに笑った。
「なんだよ、かわいー奴。って何気絶してんだ?王家の効力が切れそうだったからやったのに。ホントおもしれー奴ー」
ライラがショックでなのか、気絶した。
「あーもう!貴重な戦力が!!」
フィリアが変な所に怒る。
「それかなりひどいな…ところでフィリア~無事でよかったよ~!!寿命の方は平気か?また、短くなってたりしねーな?後10年生きられるかどうか何にさ…縮めるなよ?」
「う、うん?って、フェカ苦しい!重い!重い重い!!潰れる~」
フェカは気絶したライラを座らせるとフィリアに抱きついた。
「…なんかあれだ…フェカ綺麗だよね、顔のつくりはそんなに変わらないはずなのに男と女の差でどうしてこんなに綺麗さが変わるんだろ?」
フィリアはフェカの重さに耐えきれず床に倒れる。それで、間近にある顔を見てしみじみと呟いた。
「何言ってんだ?フィリアだって綺麗だよ。ポラルとか言うクソ女より!」
「おお?…視てたんだ。いつも視てるの?」
フェカが立ってフィリアを引っ張り上げる。




