絶賛迷子中
数日後…の校長の気まぐれで学校は休みなMonday。
「2-3で総まとめで打ち上げしましょうですの!!今まで溜めていた分全部!!」
「え、どうしたのリンゴさん」
朝食を食堂で取っていたフィリア、ライラ、レオ、クライト、ユメの5人は乱入してきたリンゴに視線を注ぐ。
「あ、すまないが俺はパスだ」
クライトが片手を小さく上げながらリンゴへ言う。
「なんでですの?」
リンゴに問われてクライトは申し訳なさそうに答える。
「…ちょっと、家庭の事情が。ユメもパスで」
「え、そうなの!?」
初耳だったユメは驚いてクライトをまじまじと見つめる。
「全く母上もめんどくさ…いや、色々と。色々と…」
ハァ、と深く息を吐いてクライトはレオの肩をつかんで懇願する。
「そういうことだから、頼んだぞレオ。…お願いします」
「頼まれてやろう」
鷹揚にうなずくとレオはクライトの手を流すように肩から落とす。
「で、その…打ち上げだっけ。詳しい話は?」
居場所がなくなりかけているリンゴにフィリアは話を振る。
「ええとですのね。校長をおど…ゴホンですの。校長先生にお願いして2-3だけの2泊3日旅行を企画させてもらったのですの。メンバーは、私とリョウコちゃん、セノーテさん、レン君、ソフィーさん、ポラル、シベリス…あ、あとラックさんもですの!」
生徒じゃないのが一人混ざりました。さりげなくリンゴはポラルとシベリスを呼び捨てにしています。
「えっ!?な、なんでラックが!」
ライラは盛大にミルクを吹きだす。
「うわ、汚い!」
幸いなのは真正面に誰も座っていなかった、という所だろう。
「生徒会長に話しを通してから校長をオド…ゴホン。校長先生に話しに行ったところ、ライさんに護衛としてラックもつれていくけ、と笑いながら言われたからですの」
「明らかに楽しんでる…」
ライラの対応を思って笑ったのだろうと察しがついたフィリアは、不憫だなと思う。
「ちょくちょくリンゴさん、脅すって言いかけてるよね」
ユメがあえて誰も触れていなかった部分を指摘した。
「えっ…ですの」
「うん、ごめん。なんか私が間違ってたよ。…じゃ、私はクライトについてくから。どんなんだったか教えてね」
ワザとらしく驚いたリンゴにユメは謝って、席を立ったクライトについて行く。
「2泊3日…か。場所は?」
どうするか悩んだレオはリンゴへ聞く。
「一応国内の予定ですの。ま、皆さんワープを使えるので場所は変更になる可能性大ですの」
「わかった。フィリアはどうする」
「行くよ?レオも予定ないでしょ?暇だしさ」
「そうだな」
「うん、いこ…」
「私に聞いてはくれないんだね、フィリア!」
聞かれないままなんか決定しそうな雰囲気にライラは隣に座るフィリアを揺さぶる。
「あ、ああゴメン。ライラは?」
「行くよ!!お泊りとか、何そのおいしい展開!!」
「…という訳で、打ち上げ行こうと思う」
ライラの鼻から流れる赤い液体を見なかったことにしてフィリアはリンゴへ決定したことを伝える。
「はいですの」
という訳で打ち上げ。
深い森の中を打ち上げメンバーは歩いていた。
澄み透った空気がおいしい。
「山の中って気持ちい…」
野性的なライラは野生が一番。
そんな彼らは。
「それにしても…結構な量のカガラルトが出るね」
…絶賛迷子中だった。
「戻らない?怖いよぉ」
「大丈夫ですよ、レオ様がいますし」
肌寒くなったソフィーが体に腕を回して震えたのを見て、一応最年長であるラックが落ち着かせるように言葉をかける。
「ここらへんは知っているんだ」
「へぇ」
「…小さいことに父さんに放り込まれたからな」
セノーテに感心されたレオは、ぼそりと聞こえないようにつぶやいた。
「レオ…」
聞えてしまったフィリアは何とも言えない表情を浮かべてレオを見る。
「言うな。ライラ宿は?視えるか?」
レオは、透視を使っていたライラに聞く。
「ん――――…とね…おっ!発見!この先直線17km先に宿見えた!」
「店員はどんな感じだ」
放り込まれた時の記憶を掘り返したレオは、嫌な予感が当たらないといいがと思いながらライラへ詳しく尋ねる。
「えっとねー、1人おばさんがいて包丁持って舌なめずりしてこっち向いてる。けっこー離れてんのによく見えるよね」
笑ながらライラが言った言葉にどう突っ込もうか正常な思考を持つ人たちは悩む。
「ライラ…あのね?包丁持って舌なめずりしてるって…人食い鬼なんじゃないの」
「そうかなぁ?おいしい晩御飯があるー!みたいな表情で…」
呆れたようなフィリアにライラは反論する。
「それ、多分僕たちのことなんじゃないかな、ライラ?」
重ねてラックもライラへ指摘する。
「やっぱりか。あのくそじじい…こんなとこに俺を放り込んだのか」
なんか一致したらしいレオは、虚空を睨みつける。
「レオ、何処を睨んでるの」
「…。そもそもなんでこんなところに来ているんだ」
誰もが避けていたことをレオは子犬のようにうなだれるリンゴへ聞く。
「ごめんなさいですの。失敗しちゃいましたですの」
「そうか。誰にでも失敗はあるからな、反省しているなら構わないんだ」
あっさりと流すとレオはライラの首をつかむ。
「え、ちょなんですか!?」
「ここから立ち去るが、その前に被害が他に出ないようちゃちゃっと退治して来い」
「えええ!?」
ぶんっと宿の方へ投げられたライラは悲鳴の尾を引きながら消えて行った。




