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蒼国物語  作者: 松谷 真良
第26章 最終的に
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満更でもないんですよ

午後1の授業。


「さて、授業の前に留学生のお知らせです」


授業を始める前にルーピンはクラスに生徒たちが戻ってきているのを確かめ知らせる。


「…人がどんどん増えてく」

「上限とかないのかな」


ありません。


「男子ですか!」

「女子ですの?」


興奮したようなポラルと対照的にリンゴが静かに聞く。


「…男子です」

「まさか」


フィリアの脳裏にアレクサの顔が浮かんで、消えた。


「この展開は…」

「お約束っ!?」


ワクワクとライラとユメの手が動く。


「こんにちは。昏国第3皇子のアレクサ・ナレンシスです」


ルーピンによばれては言ってきたのは察しの通りアレクサでした。


「キャー!!かっこいいー!!」


ポラルが黄色い悲鳴を上げる。



が、ほかの女子はレオの方を向いてフィリアとの絡みがもっと欲しいわ―!!なんて不埒な思考に浸っていたり、クライトとの腐ったあれこれを考えていたりして総スルー。

この程度はイケメンに入らなくなってきているのかもしれない。


「うっざ」


ライラがボソリと言った発言にユメが同意する。


「うるさいねー。黙ればいいのに。その口を永遠に閉じて、ね」

「黒いよユメ!!黒い!!」


腹黒発現が飛び出て、ライラは目をむく。


「レオほどじゃないし…」

「俺は黒くない」


チラ、と自分を見て言ったユメへレオは否定する。


「どの口がそれを言うの!?」

「どの口だと思う」

「レオ、キモチワルイ…」


口を手で覆ってフィリアはレオに寄りかかる。


「何が」


アレクサを意識的に見ないようにしていたレオは、それを続行させつつもたれかかってきたフィリアの頭をゆっくりと撫でる。


「気持ち悪い…」


ウプと小さく声をあげてフィリアは悪寒を耐える。


「…そんなに?」


それでも見たくないレオは、フィリアの顎をつかんで上を見上げさせると吐き気を止める魔法を使う。


「だって…あれ、ナルシって言う部類の人間だよ。私、永遠に分かち合えないと思うんだ、ナルシの人とは。だってだって、気持ち悪いよ!自分が大好きとか…」

「フィリア、フィリア。主義はよくわかったから、黙ってあげないとナルシス君が可哀そう」

「そうだよ、フィリア。いくら王女さまでも言っていいことと言っちゃいけないことがあるんだからね。ナルシス君が可哀そうでしょ」


クスクスと笑いながらライラとユメはフィリアの言葉を遮る。


「僕はナレンシスだ!!」

「ああ、ゴメンネ。ナルシス君」

「うん、ごめんよ。ナルシス君」


爆笑しながら2人は声を張り上げたアレクサに謝る。


「…コイツラの方が性質が悪いと思うんだが、どうかな?」

「そうだね」


レオは、アレクサが激高していくのを見てフィリアにささやく。


「銀の君!!そんな古い魔法の使い手とではなく、僕と一緒になりましょう!」

「え、嫌だ」


今度は言われることを想定していたフィリア、きちんと断る。


「あんたが隣にいれば、僕が治める国は安定します。もっと大きくして、国民全員に祝福してもらうのです!闇の国かあr光の国へと飛び出して、光を手に入れて!あんなくらい地底に住むのはこりごりです!」


フィリアの断りが耳に入っていないのかアレクサは両腕を広げて自分の理想をとうとうと語りだす。


「人の話が聞けないやつだな」

「そういう人種の人ってみんなお馬鹿さんで嫌いだな」


ぼそりとフィリアは窓の方を見てつぶやいた。


「ナルシス君に入ってもしかたないよ」

「ナルシス君だしね」


ゲラゲラ笑いながらライラとユメは言い放つ。


「とにかく、銀の君。僕の国に来てください!っ僕ならば、闇の継承者としての力を見事に発揮させて!!」

「廚2病だ!!」


ライラが目をキラキラとさせてアレクサを見る。

途端、吐き気をこらえるように俯く。


「…なんなんだ?」


気になるが、やはり見たくないレオはまだアレクサを見ていないユメと2人顔を見合わせる。


「見ちゃいけないんじゃないの?」

「だろうな」

「そうだよ、視ちゃいけない!あれは、レオが見たら…」


ブルリと体を震わせ、ライラはフィリアの方を見る。


「うん、レオは見ちゃいけないよ。私の安全のためにも」


それを聞いてアレクサをみようとしたレオの目をフィリアは素早く両手でふさぐ。


「…見えない」

「塞いでるからね」

「…フィリア」

「やだよ!レオ怒るもん!」


これは放さないな、と思ったレオはフィリアの脇をくすぐる。


「ひゃあ!?や、んぁ!!ちょ、た、たん…!!」


身をよじってレオの手から逃れたフィリアは、目から両手を外してしまった。


「…成程」


アレクサが真っ赤なバラが咲き乱れる花束を抱えて気色悪くなるほど満面の笑顔を見せて立っているのを見たレオは、静かに頷く。


「あ、あははっ!も、もう、やめっ…!お、鬼ぃ!!」


くすぐるのを止めないレオにフィリアは息絶え絶えになって悶える。


「まぁいいか」

「よくないよっ!!」


息を荒くしたフィリアはなぜか満足そうなレオを怒る。


「かわいいな」

「あのねっ!!もうごまかされないもん!」

「愛してる」


さらっと口に出してレオはフィリアの腰をつかんで引き寄せ、膝の上に座らせる。


「むぅ…」


やっぱり満更じゃないフィリアは黙ってレオの好きにされる。


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