サバイバル大会、おっわりーだよー
「っ…う」
「兄様、何処か痛い所は?」
うめき声をあげたライにフィリアは声をかける。
「フィリア、か…」
ゆっくりと起きあがったライは、何回か瞬きをする。
「なっ!私じゃ悪かったですか!そーですよねっ!兄様はツララさんに恋してますもんね!私で悪かったですねっ!!すみませんっ!!」
拗ねたフィリアにライはかける言葉をさがし、しばらく黙りこくる。
「なんかさ…兄妹なんだよね?恋人にしか見えないよ」
「ユメ、だから失言」
ボソリと言ったユメの言葉にクライトは顔色を悪くする。
「別に、お前で良かったんだが?いや…むしろフィリアが良かった」
言葉を探り当てたライはニコリと微笑んで、フィリアをなだめる。
「に、兄様…本気で言ってるんですか?」
照れたのか頬に朱を浮かべると、フィリアは俯く。
「もう、大丈夫だ」
立ち上がると、ライはフィリアを見下ろす。
「おまえは、小さいな」
「…は?」
いきなりかけられた言葉にフィリアは唖然とする。
「な…な、な…!!」
真意を問おうとしてライを見上げたフィリアは自分でも気にしていたことだったから、こぶしを握り締めて体を震わせる。
「いや。特に深い意味はないから…気にしなくていい。言うつもりがあったわけじゃないし」
これを聞いたユメはピンときた顔をしてクライトに勝ち誇る。
「これが、失言って奴だよクライト」
「…そうなんじゃないか?」
面倒なことが嫌いなクライトは、特に否定もせず頷いておく。
「あ、あ、ああ…兄様のば、バカ―――!!な、何もっ!年頃のかわいい妹に!チビなんて言わなくてもいいじゃないですかっ!!」
「そこまでは言っていないが…いつも見下ろされているから新鮮だな、と。いつまでも俺より小さいフィリアでいろ」
「め、命令形…」
「というか自分でかわいいとか言ってしまうのか」
「あとね、フィリア。気にするほど小さくないから」
ぼそぼそフィリアとライに聞こえないよう細心の注意を払ってユメとクライトは会話する。
「嫌ですよっ!私の夢は兄様よりも大きくなることなんですから!」
「そうか。残念だ…」
グリグリとライは上からフィリアの頭を押さえつけて小さくなるように下へ向かって押す。
「キャ―――――!!い―――や――――ぁ―――!!」
フィリアの悲鳴が林に響く。
所でレオは。
「よし、ライラ。覚悟はできてるんだよな」
フィリアたちから十分な距離をとった位置にある気にライラを括り付けて、しつけなおそうとしていた。
「ムームームー――!!」
猿轡を噛まされているライラは、必死に身をよじってレオから逃げようとする。
「あのな?お前ごとにが逃げられるような縛り方じゃないんだよ。…父さん、ああ、父さん…あいつがすべての元凶だ。あのくそじじい!!のたれ死んじまえっ!」
レオは、ライラを調教する前にオルノに際しての怒りがこみあげてきて言葉の限りに罵倒しつくす。
「ムムム――!!」
「うるせぇ黙れバカ龍」
叫んだライラをレオは睨み付けて黙らせる。
『キャ―――――!!い―――や――――ぁ―――!!』
気を取り直してライラに止めでも差しちまうか、とレオが早まった思考回路に達して剣を構えなおしたとき、実にタイミングよくフィリアの悲鳴が聞こえてきた。
「…フィリア!?」
ライがいるから大丈夫だろうと思って油断していたレオは何があったのかと気配を探る。
『あっ、レ、レオ!!助けて!!兄様がっ!!何でもするからぁ!!』
「…ちっ。今日は止めといてやる。次あったら…わかるな?」
ライラを脅すと、レオは走ってフィリアの元へ行く。
「ム?ムムム―――!?」
おいてかれたライラは力の限りムームー叫ぶ。
「フィリア、どうした?」
「レオっ!兄様がっ!私の背を縮めようとするの!!」
ライの押さえつけが痛かったので涙目のフィリアは、上から降ってきたレオに抱き着く。
「…小さい方がかわいいが」
「レオも!!」
味方がいないよぉとフィリアはユメの方にフラフラと移動する。
「ああ、なんでもするんだろう?」
ユメに頭を撫でてなぐさめてもらっていたフィリアは、レオに尋ねられてギョッとする。
「えっ」
「言ってたじゃないか」
「う…」
そういえばそんなことも言った、かもと言う表情のフィリアに呆れつつもレオは追及の手を止めない。
「なら、俺の部屋にこれが終わったら来い」
「レオ、お前何する気…!?」
「レオ、俺のかわいい妹に手を出したら…わかってるな?」
レオの言葉にクライトとライがそれぞれ釘をさす。
『ええと…時間がまだまだたっぷり余っているように見えるんですが、2-3以外全滅してしまいましたし、面白そうな兄弟のからみ合いも終わってしまったようなので、サバイバル大会は終了しようと思います』
「うっ」
さっきのあれやこれってみんな聞かれてたのっ!?とフィリアは独り焦る。
『後、新発見でも何でもないのが、生徒会長のシスコンっプリですかね。聞いてて面白かったですよ』
「余計なことを」
『ちなみに優勝は2-3クラスです。放送聞いた時点で分かったと思いますが。2年生強いね』
というわけで、フィリアはそのままレオにテイクアウトされました。
レオの寮部屋につくなりベッドへ放り投げられ、うまく着地したフィリアは顔を赤くして焦る。
「え、わ、あ!?」
「…何もしないから」
独り焦るフィリアを見ているのもそれはそれで面白いのだが、まぁ話が一向に進まないのでレオは手を出さないことを先に言う。
「え、じゃあ何?」
「別に…。最近あまりどうでもいい下らない話ができていないなと思ったから」
盗聴されないように、諸々を防止する結界を張って、レオはフィリアの隣に腰掛ける。
「えと、クライト君のベッドもあるよね?」
なんでわざわざ隣に腰掛けるのっ!とフィリアはレオに言ってみる。
「嫌だ。俺はフィリアの隣がいい。後俺の前でほかの男の話をするな」
と、まぁ別に何かをするわけでもなく日常のあれこれを2人は仲良く談笑するのでした。
で、ライラさんはというと。
「ムムムムムム――――!!!」
「あ、見つけた。まったく…」
フィリアからこっそり連絡を受けたラックにより無事回収されたのでした。




